来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第二十八話

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 俺たちはティティをおって洞窟奥へと進む。

「くそっ! モンスターもいやがる!」

「あいつ、そこらで食われてないよな!」

 かなり進むとなにかうごめく姿が見えた。

「なんやあれ!!」

「まさかティティか!!」

 ティティの体にはたくさんのキノコがはえている。

「うっ...... うあっ」

「まだ意識がある!」

「どうするんや!!」

「呼び掛けよう!! もしかしたらキノコから自我を取り戻すかもしれん!! ティティ!!」

「目え覚まさんかいティティ!」

「うっ...... うっ...... 私は......」

「よし! 意識が戻りつつある!!」

「ティティ!!」

「私は...... ティティファ......」

「そうだ!! キノコに負けるんじゃない!!」

「そうや!! 神様なんやろ!!」

「そ、そうだ。 私は神...... うおおぉぉぉお!!」

 ティティは猛烈に自分に生えたキノコをたべだした。

「まさかすべて食い尽くすつもりか!!」

「あかん! キノコもめっちゃはえてきてる!」

 キノコとティティの攻防は熾烈《しれつ》を極めた。 しかしさしものキノコもティティの食べるスピードには耐えられず、数を減らしていった。

「おお! 食い尽くした!!」

「やったで!! ティティが勝ちよった!!」

「私はティティ...... いや我はティティファ......」

「えっ?」

「どうした?」

「我はこの世界をくらいつくすもの......」

 その瞬間、ティティから赤い光の柱が放たれる。

「な、なんや!? どないなっとる!? 目に見えるほどの膨大な魔力やぞ!」

「わからん...... が、あのキノコは外敵と見なす、その影響でティティは外を敵だと認識しているのかも......」

「この世界の全ては我のもの...... 我をあがめぬ世界など全て滅ぶがいい!!」

「なんかラスボスみたいなこと言い出した!!」

「あかん目がバッキバキや!!」

「滅べ!」

 魔力の波動が周囲を包む。 すごい爆発がおき俺たちは吹き飛ばされた。

「ぐはっ! うっ...... リヴァ大丈夫か」

「う、ああ、なんとか...... せやけど、あんなもんどうすんねん」

「わからん...... なんだ」

「我をなぜあがめぬ! 我を見よ! 我を愛せ! もっとうまいものを! もっとたくさん! もっと食わせろ!!」

 ティティはそう叫んでいる。

「なにか魔力の放出とともに、欲望がもれでてんのか?」

「それやったら!」

「おい! どこに!」

 リヴァがとびだした。

「さすがティティさまやわぁ! すごいお力ですやん!」

「......すごい力......」

「そらもう、ごっついお力やわぁ! ウチらには到底及ばへんわぁ!」

「......ふっ」 

 ティティが笑みを浮かべた。

(あいつ、おだててティティの怒りを押さえようとしてるのか...... よし俺も)

「そうだな! 人間ごときではその力にひれ伏すしかないな!」

「ふふっ......」

「いやぁ! ほんまですわ! 近くにいるのもおこがましい!」

「かまわぬ...... 許す。 ちこうよるがよい」

 リヴァはそういわれてティティの近くへとむかう。

「それにしても美しい髪やわぁ。 羨ましいわぁ」

「ふひっ、そうか。 よくみるがよい」

「ほなっ、失礼して......」

 横から後ろに髪を見ながら動き、そしておもむろに鞘でティティの頭を殴る。

「いつまでボケとんねん!!」

「ぐはっ!」

 ティティは隙をつかれ倒れた。

「どうだ......」

「死んではないな」

 俺はそばによると回復魔法をかけた。

「うっ...... あれ、私は」

 ティティは状況をよく読めないようで、ボケッとしている。

「ふぅ、なんとかもとにもどったか」

「ほんま難儀な神さんやで......」

 リヴァはため息をついた。

 
「す、すみません。 ご迷惑をお掛けしまして」

 ティティは正座してあやまっている。

「あかん! 今日という今日はゆるさん! なんでお前はすぐ落ちてるもんを食うんや! 子犬か!!」

 もう小一時間、ティティは説教されていた。

「まあ、もういいだろ。 まさかあんな近くにあるとは俺も思わなかったしな」

「レージ、お前が甘やかすから、アホになるんや!」

「いや元々アホだけど」

「ひ、ひどい。 もぐっ」

「あーー ! またあのキノコ食うとる!!」

「大丈夫です。 このキノコを食べたことで【魔力耐性】のスキルをえたので、もう寄生はされません」

「へぇ、くさっても神様だな」

「そうやな、くされ神やな」

「誰がくされ神ですか!」

「ティティ、一応魔王が近くにいないか探ってみてくれ」

「そうですね。 私もある程度、力を取り戻してるとおもいますし...... やってみましょう」

 ティティは目をつぶり集中する。

「えっ......」

「どうした? まさかいるのか!」

「い、いえ、前より魔力があまりとおく感知できません。 せいぜい感じられるのはこの森ぐらいになってます」

 困惑するようにティティはいう。

「なんやそれ? 力が増したんとちゃうんか?」

「ええ、そのはず。 冒険者としての知名度もましましたし......」

「......まさか、商売に失敗したからじゃないのか」

「えっ!? ま、まさか」

「失敗したから力がなくなったいうんか!!」

「そ、そんな!!」
 
 どうやら、たこ焼き屋が失敗したことで、ティティの信仰心は激減していたようだった。
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