来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第四十九話

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 俺たちは森のなかに入りゴブリンを捜索する。

「ティティ魔力反応は」

「それが...... うまくつかまめないんです」

「なんでや?」

「......わかりません。 何かが邪魔をしている感じです」

「この間、モンスタースタンピードを止めたとき、我々が強襲したからではないでしょうか」

 リリオンはそういう。

「ああサクラスに何らかの対策をされたのかもな」

「くっ、厄介なこっちゃで、ゴブリンがどこにおるかわからん。 もうこの森ごとぶっとばしたらどうや。 ウチが木を切り裂いたるで」

「無茶言うな。 果実や動物もオークやコボルトの食料だぞ」

「せやけど、なんかちんけな森やで、あんま果実も実ってないしな」

 リヴァのいうとおり、森は広いが樹木は細く果実などもあまりなっていない。 

(それに地面がひび割れているな。 土地がよくないのか...... コボルトたちとも収穫を巡って対立していたらしいし)

「ゴブリンたちをみつけるのは容易ではないですね」

 ティティは森の周囲をつぶさにみながらそういうと、リリオンはうなづいた。

「ですね。 かといって我々が分散してしまうと、リグソルたちがいたときに遅れを取りかねないです」

「このまま見つからないなら帰って村の守りをかためますか?」
 
 リリオンがいう。

「せやけど、それがサクラスの作戦かもしれん。 向こうはこの森に隠れといたらいつでもオークの村を狙える」    

「そうだな。 その可能性もある。 やはりゴブリンをみつけるか」

「ええ、それに邪魔されるとはいえ、近づけばわかります」

 俺たちは周囲を警戒しながら先へと進む。

「まってください......」

 ティティの声でとまると、茂みの奥に緑の小型の人が無数にいた。 

「あれがゴブリンか......」

「ですか、やはりおかしいです。 彼らは警戒などせずむやみに歩き回り目にはいったものを襲うはず」

 ティティのいうとおり、ゴブリンたちは皆武器をもち警戒している。

「やっぱり、統率されとるいうわけやな。 せやけど周りにサクラスはおらんな」

「とりあえず早く減らしておこう」

 俺たちはゴブリンにむかって走った。


「ふぅ、弱いけど、数が多いのと逃げ回るから時間がかかったわ」

「ええ、ですがやはりおかしい。 ゴブリンが逃げ回るなんて向かっても来なかったです」

「そうですね。 かなり好戦的な性格のはず......」

 ティティとリリオンは首をかしげている。

「これは......」

「あちらにも魔力があります!」

 俺たちは近くのゴブリンたちを見つけては倒していった。

「かなりの数を倒した。 ジェスザからきいた数の二倍はいたな」

「さすがにこれ以上はいないのでは」

「そやな。 サクラスもおらんし、はよかえろ」

「......まってください!」

 リリオンが声をだし茂みにむかってかまえた。 俺も剣を抜く。

「ほう、さすがリリオンだな。 魔力ではなく感覚で気づいたか......」

 そこにはリグソルとギルガがいた。

「サクラスはどうした......」

「さあな。 それより俺たちと遊ぼうぜ」
 
 ギルガが不敵な笑みを浮かべる。

「......しまった! やはりオークの集落か!」

「ここは私とリリオンで! レージさんはもどってください!!」

 ティティとリリオンはその場に残る。

 それを背に俺は刀となったリヴァを手に森かけた。


「あれは!?」

 オークの集落にやってくると家は燃やされて、オークとコボルトの戦士たちが倒れ、傷ついたガランとジェスザがサクラスと対峙していた。

「遅かったですね」

 そう笑みを浮かべるサクラスの手にはオークの魔力の玉があった。

「やるで!! レージ!!」

「いや......」

「そうです。 私よりこのものたちを助けるのが先ですよね」

 そういうとサクラスは笑いながら姿を消した。

「くっ...... だがまずはオークとコボルトを」

 俺はオークとコボルトのそばにかけよった。


「すまない。 遅れた」

 焼き払われた家の跡地で俺はガランとジェスザのふたりに謝る。 俺はサクラスが去ったあとオークとコボルトたちを回復させた。

「いいや、レージどののお陰でなんとか命はまもれた」

「んだ。 みんな命だけはたすかっただ。 あのままだとみんな死んでただよ」

 そう包帯をまいたジェスザが微笑んだ。

「しかし、最初からゴブリンは囮だったのですね。 レージさんが走ったあと、すぐギルガもリグソルも逃げましたから」

「ええ...... ここに私たちが来るのも計算のうちだったかもしれません」

 ティティがいうとリリオンはうなづいた。

「戦って勝てる相手ではなかった。 一体あのサクラスとは何者だ......」

「あの数で戦っても足元にも及ばなかっただよ」

 ガランとジェスザは悔しそうにいう。

 俺はサクラスの顔を思い出した。

(弱くないガランとジェスザたちを相手に戦ってあの余裕...... あの時より強くなっているのか。 あの短期間で、武道大会では本気ではなかったということか......)

「せやけど魔力の玉は奪われたで、この土地どないするん」

「ゴブリンを倒してくれただから、畑も直して果実や動物を狩ったり、魚をとったりするだ。 大丈夫だで」

 そう笑顔でジェスザはいうが、かなり無理をしていることが表情からみてとれた。

「......すこし、試してみますか」

 おもむろにティティがたちあがる。

「なんだ?」

「信仰心がかなりあがっています。 この枯れた土地をすこし回復させられるかもしれません」

「ありえへん!」

「嘘でしょう!」

「ガラン、ジェスザ、あまり期待はしないでくれ」

「三人とも失礼ですね!! みててください!!」

 ティティはその場で躍りはじめた。

 その珍妙な躍りは周囲に絶望感をあたえた。

「ほい! そい! そいや! さあみなさんも!」

 それをみてガランとジェスザの表情もかたまる。

「もうやめてくれ! みてられへん! 共感的羞恥心のメーターがふりきれてまう!!」

「ティティさん! 正気にもどってください! まさか! また落ちているものを食べたんですか! あれほどひろい食いはやめてくださいといったのに!」

 リヴァとリリオンは止めようと懇願する。

「なにをいってあるのです! これはちゃんとした儀式なんですよ!」

「あの姿どこかで...... ん? 地面が......」

 ティティを中心に地面が輝きだし、その光りはゆっくりと広がり森を包んだ。 

「なんだ...... これは!?」

 その枯れたひび割れた大地が豊かな土壌へと変化し、光りに触れた森の木々も青々と繁りはじめた。

「おお!! これは大地がよみがえる!」

「すごいだ!! これは奇跡だで!」

 ガランたちも驚く。

「まさか、本当に女神だったのか!」

「今さらですか!! 私は豊穣の力ももっているのです! 至高の女神ティティファですからね!」

 そう変な躍りを躍りながら、胸を張った。

「なんかしまらへんな」

「そうですね。 ですけどこの力は本物です」

(確かにな、この姿...... そうか! あの邪神像の姿だ! やはりあれはティティだったのか)

「まあ、何はともあれ、ひとつの問題は解決した」

(それよりサクラスが気にはなる...... やつは魔力のアイテムを集めてなにをしようとしているんだ?)
 
 喜ぶオークたちをみながら俺はおもった。
 
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