やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第十五話 魔王からは逃げられない

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「なんだと!?
 最下位魔法でわたしのフレアバーンと同じだと!!
 いやありえん! なにか裏があるはずだ! 
 よかろう! 
 ならば小細工などできぬようわたしの最強の魔法で消し去ってくれる!」 

 魔王は両手を掲げ呪文を唱えた。

「深淵に住まう者、源泉たるその力の導きで、天地を穿つがごときその御力を、この前に示せ!」

 ヴァルザ......!

「遅い」

 ベルがそういうと魔王は天から落ちた巨大な雷の束に貫かれ地上に落ちた。

「ぐはっ! ......この魔法は...... しかも無詠唱で......
 なぜお前が......」
 
「当然であろう。
 それは我が作りし魔法だ」

「な、なんだと......
 お前!? い、いや、ま、まさかあなたは」

「......大魔王ヴァルザベールなのか!!」

 驚愕の表情で魔王は言った。

「そうだ」

「くっ!」

 魔王は瞬間羽ばたき上空に飛んだ。
 が、何かにぶつかって落ちてきた。

「な、なんだ!」

「お前がいったのであろう......」

 ベルは魔王にゆっくりと近づく。

「魔王からは逃げられない」

「ひぃぃぃぃぃ」

 魔王はふるえながら後ずさりをする。

「命をたやすく奪った貴様は、永き時間の中で命の意味を考え、次に生まれしときは正しく生きるがよい」

 そういうと、ベルは手をかざすと魔王は光のなかに消えていった。

「大丈夫だな。 二人とも」

 ベルが近づいてきた。

「はっ! 大魔王さま! 我ら虫けら大丈夫でございまするぅ!!」

「いままでの非礼なにとぞお許しくださいませぇ!!」

 オレとメルアは地面に頭をすり付ける。

「やめよ。
 いままでどおりでよい。
 ほれ元に戻っておる」

 ベルを見ると元の姿にもどっている。

「あっ、そう......
 じゃ! ベルちゃんやるじゃなーい」

「そうそう、まあまあね。 まあまあ」

 オレたちはぺちぺちとベルの頭を叩いた。

「清々しいほどのかわりっぷりだな。
 だが、お主たちはそれでよい」

 ベルは満足そうに笑っていった。

「それにしても本当の魔王だったとはな......」

「怖くなったか。 
 ならば我は去るが......」

「うんにゃ! 強いのがそばにいてラッキー!」

「そうね。
 これで勝ち組決定ね!」

「ほほほ、そうか、だが、もう当分あの力はだせぬよ」

「なぬ!」

「なんで?」

「我が復活してからためた力と、そしてグランドレインで吸いとったさっきの魔術士たちの魔力を使ったのだ。
 あの姿になるだけでも、また同じだけの時間と労力を要する」

「えーーー」

 オレとメルアはそう声を出した。


 オレたちはレスパーのところに向かった。

「そうでしたか、それは大変でしたね」

「何が大変だ! あんた知ってたんだろ!」

「そうよ! 謝んなさいよ! 私たちを騙して!!」

「騙した? 騙してはいませんよ」

「騙したでしょ! 
 あんた盗賊に荷物が奪われたなんていって!」

「いってません」

 お茶の入ったカップを皿にゆっくりと置きながらレスパーはメルアにいった。

「へ?」

 オレとメルアはキョトンとして顔を見合わせた。

「わたしは盗賊に襲われたとも荷物が奪われたともいってません。
 ただ何者かに襲われたといったのです。
 よく思い出してください」

 オレとメルアはあのときのことを思いだす。

「............ほ、ほんとだ言ってない......」

「............い、言ってないわ......」

「だが、奴らと取引したであろう。
 我らを生け贄にしてな」

「さあ、そう彼らがいいましたか?」 

「食えぬ男だ」

「ただ、私たちの調べでは、魔王復活を目論む集団が存在し、暗躍しているという話は聞いています。
 かれらがそうかはわかりませんがね」

「きぃぃぃぃ!」

 メルアが頭を抱える。

「ですが、依頼は成功されたので、約束のお金はお支払しますよ」

「このお金はもらわないとかいわない! 
 でももう二度と仕事はうけないからな!」

「うけないわよ! 絶対に!
 このお金はもらうけどね!」

「そうですか。
 その強さ互いにいい商売ができそうなのに残念です」

 そしてオレたちの去りぎわ。

「ではまた」


 レスパーはそういった。
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