やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第十九話 魔消の鏡

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 オレはリビングアーマーを倒した。

「まさか、シンジがあいつを倒したの!?」

「うむ、やりおったな」

 メルアとベルは驚いている。 

「ふ、フハハハハついに完成した!
 わが魔法は最強だ! オレは最強になった!
 かみ、そう神だ! オレはかみゅ......になった」

「最後かんだわねダサ。 
 一番かんじゃダメなとこでダサッ」

「うるさい!」

「しかし、あの重量のリビングアーマーを弾き、なおかつあの跳躍なんの魔法だ」

「聞きたいかねベルくん」

「もったいつけないでさっさと言いなさいよ。
 カミオ」

「カミオっていうな!
 あれはパリィさ」

「パーリィ? なにそれあたまパーになったの」

「パーはもともとだ! いや誰があたまパーが元々だ!
 パリィとかジャストガードとかゲームなんかであいての攻撃をタイミングを合わせて弾くかっこいいやつだ。
 それでオレは剣に反発する魔力を付与した」

「なるほど、それでリビングアーマーを吹き飛ばしたのか......
 たしかに剣の刃に付与するなら魔力範囲は狭く強くできる。
 だが空中に飛んで下降したのはなんだ」

「そうそう、急に空中を蹴ったみたいに方向変えて落ちてきたじゃない。
 あれも反発なの」

「ああ、オレは足から反発する魔力を使って飛んで空中で反発する魔力を一時固定、そして空中で反発して加速した。
 オレの腕力じゃ鎧を貫けないからな」

「驚いたな足で魔法を放ちかつ固定なんて、そんなことは我でもできぬ」

「単純に誰もしないでしょ......
 まあ、あんたにしてはよくやったんじゃない、褒めてあげるわ」

 プイっと顔を背けてメルアが言った。

「で、なんと言う魔法だ」

「名前か......よし決めた! 
 シンジスペシャルブーストデラックスシンジブーストだ!」

「ダサッ!」

「うそお!」

「長いからリブーストでよくはないか」

「ああ、うん......じゃあそれで」

 こうしてオレは新魔法リブーストを覚えた。

「では、その魔法を呪文《スペル》か刻印《サイン》で使えるようにした方がよい。
 魔法を使って記憶するのだ。
 その程度の魔力消費ならば複数の文言は必要なかろう。
 名前を呼んで使ってみるのだ」
 
「えーと、リブースト!」 

 そういって加速してみた。

「うむ、それでリブーストでその魔法が使えるぞ」 
 
「おお、ついに新魔法を覚えたぜ!」 

 帰り道もリブーストを使いモンスターを蹴散らす。

「オレのリブーストがかなり使えるな」

「たしかに遅い物理攻撃を持つモンスターならほぼ弾くようになったな。
 大したものだ」

「まあまあね。
 まあ引き込もったら使いようがないけど」

「そんなことはないだろ!
 えーと、ん? ほんとだない...... 嘘だろ......」

「まあ、早く逃げれるとか、高いところに移動できるとかあるではないか」

「ベル......フォローありがと......」

 オレが落ち込んで森を出た。


 貴族ユリアーノの屋敷に見つけた鉱石をわたしにいくと、断ったのに強引に中にとおされた。

「見つけたそうだな」

「じゃあこれで!」

「まて」

「なんすか! ちゃんととってきたでしょう!」

「もうひとつ頼みがある」

「いやよ! 貴族だからってなんても叶うなんて思わないでよね! 
 私たちが本気で戦えばあんたたちなんてコテンパンなんだから!
 どうすんの! 私たちを帰す? それとも戦う?」

 メルアがユリアーノにたんかをきった。
 すると、ユリアーノが頭を深々と下げた。

「非礼は詫びよう......
 しかしどうしてもやってもらわねばならぬ。
 頼む!」

「一体なにがおこっておる。
 真実を話さねば力は貸せんな」

「オレは知っても貸さんけど」

「わたしもー」

「実は......」

 ユリアーノは語りだした。
 
「ここ最近王のようすがおかしいのだ」

「王様? この国の? 確かボッチャ王だっけ?」

「うむ......
 ボッチャ王は慈悲と聡明さを持たれた賢君だ。
 しかし、最近になって軍備の増強や魔法の研究などに異常に執着されるようになった」

「なに、戦争でもしようっての?」

「それはわからんが......
 あまりの変容ぶりに大臣クエスプ様からその話を聞き探った。
 すると、王の側近に新しくついた宮廷魔法士アメンテラーが、魔王復活を目論む教団、(混沌教団)と繋がりがあることを知った」
 
「わたしたちを生け贄にしようとしたあいつらね」

「アメンテラーが王に何かしたのではと思ったクエスプ様は、魔法を消し去る鏡、(魔消の鏡)を作ろうと、その材料である魔消鉱石《アンチマジックストーン》をさがしに行かせたらしい......」

「それが、あの迷宮《ダンジョン》にあった。
 新しい死体か」

「あんたそんな危ないとこにあたしたちいかせたの!
 サイテー! 
 リビングアーマーがいて大変だったのよ!」

「まさか! 迷宮《ダンジョン》にそんな強力モンスターが!!
 なるほど帰ってこぬはずだ......」

「知らなかったのかよ!」

「クエスプ様が送った者がかえってこないときいて、全く関係ない君たちに頼んだのだが......」

「なるほど、そういうことか」

「なるほど、どうゆうこと?」

「わからないなら黙ってなさいよ!
 つまり、魔消の鏡を作ることを阻止するために、さきにモンスター置かれてたってこと!」

「そんなことできんの?」

「うむ、モンスターを操ることは可能だ。
 召還士や魔法でな。
 そしてつまり......」

「なるほど! つまり、どうゆうこと?」

「もうシンジは黙ってなさい!」

「つまり、魔消の鏡を作られてはまずい者がいるということだ」

 ベルの言葉に頷いたユリアーノは口を開いた。

「今一度頼む! 
 魔消の鏡を作りこの国を救ってくれ!」

「え? やだけど、めんどいし」

 オレの一言で全員がポカーンとしている。

「普通ここはうけるでしょ」

「うむ、空気的にな」

「なんだよ! オレが悪いのかよ!
 わかったよ! やればいいんだろ! やれば!」


 オレはしぶしぶうけることになった。
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