やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第三十二話 人形師《ドールマスター》

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「おまえがスケルトンを操っていたのか!!」

「ええそうです。 美しいでしょう。
 この人形《ドール》たちは、私の死霊魔法《ネクロマンシー》でつくりあげたものなのですよ」

 その仮面の男はいった。

「なんでこんなことをする!!」

「......まあ探し物と対象を不死にする魔法の実験ですかね」

「不死にするなんてそんな魔法なんてあるわけないじゃない。
 バカなの?」

 メルアが冷めた目であきれていった。

「誰がバカですか! 失礼な妖精ですね!
 ないから創るのでしょう!
 この美学がわからないとは愚かなものたちです!」 

「飽くなき探究心ですね!
 その気持ちはわかります!」

 リーゼルが仮面の男に同意する。

「わかっちゃだめリーゼル!!」

「なるほどそちらのお嬢さんは私のロマンに理解があるようですね。
 では、わたしの美しい人形《ドール》にして大切に扱ってあげましょう」

「ほら、変なのに目を付けられた!
 お父さんいったよね!
 変な人と話しちゃダメって!」

 オレがリーゼルをしかる。

「はわ! すみません!」

「シンジ、いつからリーゼルの父になったのだ」

「でも、このスケルトンの数多すぎるわ。
 あいつどんだけ魔力あんの!」

「ひきたくても、ひけんな」

「さあ、この人形師《ドールマスター》の人形《ドール》となりなさい。
 そこのアホずらの少年と口汚い妖精以外の二人」

「誰がアホずらだ!」  

「誰が口汚いだ!」

 周りのスケルトンたちがジリジリ近づいてくる。

「じゃあわたし助けを求めてくるーーー!」

 飛んで行こうとするメルアを捕まえる。

「はなしなさいよシンジ!」

「おまえ逃げるつもりだろ! 逃がさんぞ死ぬなら道連れだ!」

「助けを呼ぶっていってんでしょ! 信じなさいよ!」
  
「信じない! オレはオレ自身の次にお前を信じない!」   

 オレたちが言い争っていると、人形師《ドールマスター》という男は首をふりながらため息をついた。

「全く美しくないですねぇ。
 やはりあなたたちは私の人形《ドール》には向きませんね」

「うるさいわ! 誰が人形になんかなるか!!」

「あんたの人形になんてこっちから願い下げよ!」

「ええ、もちろん人形《ドール》にはせず、生きたままわたしの人形《ドール》に食べさせてあげますよ」

 そういうと抑えていたであろう魔力を放出した。
 オレの眼鏡では何にも見えなくなった。

「なにあの魔力!! あいつ前に戦かった魔王ぐらいあるじゃないの!!」

「うむ、あやつより多いかもしれん......」

「えっ! そうなの全然見えないけど、そんなヤベーの!?」 

「シンジとメルアよ。 少し時間を稼げ」

 そうベルは小さな声でいう。

「サーセン! なまいってサーセンした!」 

「サーセン! 妖精なんて 虫けらなのにサーセンした!」

 オレとメルアはそういって額を土につけきれいな土下座した。

「おおっ! ずいぶん美しい謝りかたですね。
 一瞬目を奪われましたよ」

「自分等こういうのなれてるんで、へへへ」  

「ほんとほんと何度でもできますけど、へへへ」

 オレとメルアができる限りのこびを売る。
 
「リーゼル、シンジが使った銃をこっちへ」

 こそこそとベルはリーゼルにいう。

「は、はい!]

 リーゼルは銃をカバンから出すとベルへ渡した。
 ベルは銃を構える。

「おい! ベル! それは!!」
 
 オレが叫んだ瞬間スケルトンがベルの銃を叩き落とし人形師《ドールマスター》の元へと持っていった。

「驚きました魔法銃ですか、古代の遺物をどうやって?
 ......まあいいでしょう。
 これできれいなまま遺体を使えますね」

「いまだ。 シンジ」

 ベルが発したその瞬間オレは全員を連れてリブーストを使いスケルトンをはね飛ばしながら逃げた。

「逃がしませんよ!」
  
 そういうと人形師《ドールマスター》は引き金を引いた。

「ん? なにも起きない!
 ガラクタですか!! しまった逃げるためか!!
 何だ魔力が吸われる!? バカな手から離れない!!」
 
 そして砲撃のような魔力を打ち出しスケルトンたちを粉々にした。

「何だこれは!? ......ぐっ! 呪いのアイテムか!
 はかりましたね!!」

「そうだ。 
 自らは隠れてモンスターを操る狡猾なお主ならば、その呪いのアイテム必ず奪うと思っておったぞ」

「それのどこが呪いのアイテムですか!」

 リーゼルは怒っていった。
 
 人形師《ドールマスター》が膝を地面につけると、スケルトンたちが次々に倒れてくだけ散っていく。

「くっくっくっ、もはや貴様にはなにもできぬな」 

「ふっふっふっ、愚かね私たちの策略にまんまとひっかかるなんて」

 オレとメルアが膝をつく人形師《ドールマスター》に近づくとをここぞとばかりにあざける。
 
「......くっ! 許しませんよ!! 
 この私に膝をつけさせるなんて美しくないことを!
 あなたたちは絶体に許さない......」

 そういうと光に包まれ一瞬でその姿を消した。

「あっ! いなくなった!!」

「転移魔法《テレポート》ね!」

「うむ、あれだけ魔力を奪われて無詠唱で転移できる魔力を持っているとはな。
 この呪いのアイテムがなければあぶなかったな。
 お手柄だぞリーゼル」

「呪いのアイテムっていわないでくださーーい!」


 リーゼルの叫びが雲がはれた森の空に響いた。

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