あの約束のモンスターテイマー ~異世界転生モンスターテイム活躍譚~

曇天

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第九話

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 森から帰って、オレはわーちゃんと共にギルドへと向かった。

「こ、これは!? プリンセスマッシュですか!! 始めてみた!」

 マクロさんは驚いてみている。

「これであってる?」

「ちょっと待ってください! えっと......」

 マクロさんはカウンターの下から分厚い本をだしてペラペラとめくりはじめた。 そしてキノコと見比べ本を閉じた。

「ええ、確かにプリンセスマッシュでまちがいありませんね...... 驚きましたよ。 まああなたですからねあり得ないことではないですが......」

 そういってマクロさんはカードに入金してくれた。

「おおおお! 100万ゴールドを手にいれた! これで計画が進められる」

「ならば! すぐ注文をして参りましょう!」

「そうだね。 それでわーちゃん例のものは順調?」

「はい! すでにゴブリンたちと共に作り上げておりますよ」

「そうか、これで用意も終わりか」

「ええ、ですがマスター...... ゴブリンたちが何やら訴えてきておるのです」

「ん? どういうこと」

「帰りにお話させていただきます」

 
 オレたちは町で用事を終えると、話をしながら帰り道を歩いた。

「えっ? ほかにもゴブリンがいる?」

「ええ、他にも集落があり、ゴブリンたちか気にしておるのです。 どうやら最近こっそり見に行ったらしいのですが、他のゴブリンの集落は荒れ果ているようす。 どうされますか?」

「......ふむ、それって暴走か」

「おそらくは......」

「まだ余裕はあるよね」

「ええ十分に」

「なら契約しようか、あの暴走は苦痛をともなう。 何とかしてあげたい」

「さすがマスター! その高潔さ、空よりも澄んでいる!!」

「よせやい! あっはっはっ」

 オレはミリエル、スラリーニョ、ポイズントードのポイル、そして道案内のゴブリン、ごーぶとでゴブリンの集落へと向かう。

「トラさま、わーちゃんさまが色々と指示なさっていますが、家の再建はいいんですか?」

 ミリエルに聞かれる。

「うん、とりあえず住めればいいよ。 先にやることがあるからね」

「そうですか」

「ああ、ごーぶ、ゴブリンの集落はどのくらいの数何人ぐらいいるの?」

「しゅうらく、四つ、だいたい、百人」

 片言でごーぶはいった。

「百人か、うん、大丈夫だな。 早く仲間にして助けてやろう」

「おねがい、ますたー」

 そうごーぶからも頼まれる。

 森を進むといさかい合う声が聞こえる。 荒れた集落でゴブリンたちが殴りあっている。 

「よし、ミリエル頼む」

「はい、セイクリッドフィールド!!」

 魔法耐性の魔法をミリエルが唱える。 周囲に光が拡がった。

「よし! ポイル、スラリーニョ、弱めの魔法でゴブリンたちを攻撃してくれ」

 スラリーニョは水の魔法、ポイルは毒の魔法でゴブリンたちを攻撃した。 するとゴブリンたちはその場に倒れる。 

「よし、ポーションで回復しよう! あとで契約する」

 オレたちは次々とゴブリンを回復させ契約していく。

「ふぅ、20人ぐらいか......」

「魔力の方大丈夫ですか? 必要ならマジックチャージしますが」

 ミリエルが心配して聞いてきた。

「いや、まだ大丈夫だ。 前はこの数契約すると倒れたんだけど......」

「魔力の最大値は使っていくうちに増えるらしいです」
 
 ミリエルが説明してくれる。

「そうなんだ、確かに最近かなり魔力を使ったからな、それでかも。 よし残りの集落もまわろう」

 そうやって次々とゴブリンの集落を訪ね。 暴走したゴブリンたちと契約していき、日が暮れる頃には四つの集落をめぐり、百人のゴブリンたちと契約していた。   

「ますたー、すごい! みんな、もとに、もどった!」

 ごーぶとゴブリンたちが喜んでいる。 

「なあごーぶ、みんなに最近何か変なことはなかったか聞いてみてくれないか」

 言葉が不自由なものたちもいるため、ごーぶに通訳を頼む。

「ん? 人間が、近くで魔法を使っていたって、いってる」

(やはり、何者かが関わっているのか? でも暴走させても危険になるだけだろうに? とりあえず今はおいておこう)

 オレたちは帰路に着いた。

「ふぅ、さすがにつかれたな」

「ええ、私も魔力が限界です。 いまモンスターに襲われると危険ですね」

「や、やめてミリエル、そんなフラグたてんの!」

 ゴブリンたちが騒いでいる。

「ま、まさか!」

 後ろから巨大なムカデが迫ってきた。 その目は赤く光っている。 ゴブリンたちは逃げまどう。

「あれはラージセンティピード!! 肉食のモンスターです!!」

「草食系でいてほしかった!!」

(どうする!?  暴走状態になるのは怖い! だが、残りの魔力じゃダークスフィア二発ってとこか、やるのはムリか!)

 その時スラリーニョが前にとびだした。

「おい! 危ない!」

「ぴーーー!!」

 スラリーニョが叫ぶと、巨大な水の球体が現れおおムカデをのみこみ、ムカデは玉の中で回転している。

「おお!! スラリーニョなんだそれは!?」

「あれはアクアステラ! 中位魔法です!」

 そして大量の水が地面にながれるとラージセンティピードはぐったりしている。

「すごいぞスラリーニョ!」

「ぴーー!!」

 スラリーニョは胸を張っているようにもみえる。

「目が赤くないから契約できるかな...... かなり疲れてんだけど」

 すると契約ができた。

「ふげぇ、なんとか契約できた。 でも魔力がない、もうだめだ......」

「私のマジックチャージで......」

 すると、ラージセンティピードは動いて横に止まる。

「どうやら乗れといっているようですね」

「わかった。 みんな乗って」

 みんなをのせてラージセンティピードは走る。

「おお速い! よし、お前の名前はスピードだ!!」

「ギチギチ!!」

 そう答えたスピードに乗り、拠点までかえった。

 
「さすがマスター! これほどのゴブリンとラージセンティピードを契約するとは!」

 拠点に戻るとわーちゃんが驚いている。

「いや、みんなの力と特にスラリーニョの力だよ」

「ほう! さすがスラリーニョどの! 私の教えた魔法を使いこなすとは! ハイスライムへと進化しただけはありますね」

「ぴーー!!」

 スラリーニョは誇らしげだ。

「それで準備はできた。 ラージセンティピードのスピードが仲間になったんだけど......」

「そうですな。 でもラージセンティピードは自らで動けますゆえ大丈夫ですよ」

「そうか。 ならいつでも可能か......」

 その時マクロさんが走ってきた。

「ひえ!!! なんですか! それラージセンティピード!!? またそんな強いモンスターまで!!」

「ああ、仲間にしたんだ。 でもそんなに慌ててどうしたんですか?」

「ああ、そうだった! とてもまずいことになったんです! 国が動いて軍がここに攻め入ろうとしているのです!」

「ええ!!? なんで!」

「最近のモンスターの凶暴化、その原因にあなたが関わっていると決めつけて! それで軍をさしむけようとしているのですよ」

「そんな! ちゃんと魔力の暴走が原因だとギルドに伝えたのに!」

「ええ、ですからギルドはそう国にやめるよう説得していますが、どうやら国民の不満を抑えるため、あなたたちを討伐するつもりのようなのです」

「くそ! 不満のはけ口か!」

「ですからモンスターたちを森の方に逃がして、あなたたちはこの国から逃げた方がいい! ギルドは国を越えて存在する独自組織なので他の国なら仕事ができますから!」

 マクロさんはそういうと帰っていった。 少し時間を稼いでくれるという。

「ど、どうしましょうトラさま! みんな森に逃がしますか!」

 ミリエルは慌てている。

「策があるんだ。 わーちゃん!」

「はい、夜までにみなを動かします」

 そして夜になった。 

「よかった月は雲にかくれている。 さあ行くぞ」

「どこへ、みなさんの姿が見えませんが」

 鞄にはいっているイータを撫でながら、不安そうにミリエルはそう聞く。

(イータ、完全にミリエルになついたな)

「みんな川さ」

「川?」

 川上まで行くと小さな小舟がたくさんあり、ゴブリンたちが乗っている。

「これは?」

「ミリエルは精神的にまいってたから伝えてなかったけど、ここが襲われる可能性を考えて、移動できるように船を用意してたんだ」

「わーちゃんさんに用事とはこのことでしたか...... ですが外洋にこの船では海に沈みますよ」

「大丈夫、さあミリエルのって!」

 オレたちは小舟に乗り、川を下る。 わーちゃんが操舵している。

「スピードはついてきてる?」

「はい、泳ぎは得意ゆえ近海までなら行けましょう」

 見るとスピードが船の横で水の中を泳いでいた。

「てすが、このままでは......」

 ミリエルは心配そうにしている。

「大丈夫、ほらあそこ」

「あれは!? 船!!」

 海にでて港に停泊している巨大な帆船が見えてきた。

「よし! 乗り込もう」

 みんなでその船に乗りこんだ。 

「操舵は私、他の操作はゴブリンたちに教え込んでいます。 お二人はのんびりしていてください」

「こんな船いつの間に」

「ほらミリエル、プリンセスマッシュの報酬さ」

「あっ! あの100万ですか!」

「ああ、いつかモンスターが増えたら、こんなことになるかもとわーちゃんと相談して、外海にでる計画をたててたんだ」

「はい、私の記憶が正しければ、いくつかの無人島などがありました。 そこに移れば安全ゆえ、マスターにお金を稼いでもらっていたというわけです」

「それで大金が必要だったのですね」

 納得したようにミリエルはうなづいている。

「よし! 新天地を目指して出向する!」

「はっ、マスター!」

「はい!!」

 そうして、オレたちは安住の地を求めて、大海原へと旅立った。
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