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第二十七話
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オレたちはミクレンチ大陸にあるマヴィン大洞窟へと向かって航海していた。
「ふぁ、あきたからなんか面白いことやってよトラ」
マゼルダはオレの頭で仰向けになりながら勝手なことをいう。
「どんなムチャブリだ! だから付いてこなきゃよかっただろ」
「それならクエリアだって来る必要ないじゃん」
「クエリアは帝国の皇女で勇者の末裔なの。 魔王城を探すんだから関係してるかもしれないだろ」
「帝国の皇女!? 勇者の末裔! 本当なのクエリア!」
「ああ...... 今や隠れてる身だがな」
クエリアはそういって船の縁から遠い海を眺めている。
「お姫様じゃん、城で悠々自適な生活じゃない。 なんでこんな冴えない男と一緒にいんの?」
「ほっとけ! 帝国はなんかやベーやつに支配されてるんだよ。 帰ったら戦争に利用されんの」
「それは阻止せねばならんな」
ギュレルが船の甲板で水着のようなもので日焼けをしていった。
「じゃあ、もうやっつけちゃえばいいじゃん。 私たちなら帝国なんてぶっ潰せるでしょ」
「暴走の実験をしてたぐらいだ。 強力な魔法や兵器を持ってるかもしれんし、こっちが戦争しかけたら、仮に勝っても他の国に攻撃されるだろ」
「それに、国内にも大臣に反対するものも少なからずいる。 少しずつ粛清されたとはいえな」
クエリアがいうと、マゼルダがふーんといった。
「つまんなーい、やっぱトラなんか面白いことをしてよ」
そしてまたムチャブリしてきた。
それから一週間たつと大陸へと着いた。 沖に船をおいて小舟で港町へついた。
「ふう、やっとついたわね」
マゼルダがヒラヒラと飛んでいく。
「大丈夫かトラどの」
クエリアが声をかけてくれた。
「......大丈夫じゃない。 物真似や一発芸、この一週間やらさせられ続け、マゼルダのダメ出しと恥ずかしさで泣きそうになった...... いや泣いてた」
「かなり厳しめに採点されてたな。 笑いをなめるな、と百回はいわれてた...... 頑張ったよ」
クエリアが同情してくれる。
「まあ、我はそこそこ楽しめたぞ」
ギュレルが肩を叩きにやにやしている。
「クッ、オレがもっと面白ければ......」
「なにと戦ってるんだ......」
クエリアがあきれていった。
町の酒場で情報を仕入れる。 だが有力な情報はなかった。
「知らないか......」
「そもそも隠れ住んでんだから、人間に見つかるわけないしね」
マゼルダがあくびしながらいう。
「まあ、大洞窟の場所は砂漠を越えた先にある。 そこにいけばよかろう」
オレたちは、大洞窟がある砂漠を越えることにした。
「ふへぇ、暑いな」
360度周囲は砂しか見えない。 日差しがジリジリと肌をやく。
「もうやだ! 暑い! あきた! 帰りたい! 疲れた!」
「いや、お前オレの頭に乗ってひとつも歩いてないだろ!」
「気持ちだけあるいてた!」
「ここからまだまだある。 馬車ですらここは避ける。 巨大なサンドワームが出るらしいからな」
クエリアが汗をぬぐってそういう。
「だからこそ、この奥にトロールはいるのだろう」
ギュレルが涼しい顔でいった。
「それより、クエリア、スラリーニョは大丈夫か、あいつ水分多めだろ」
「あっ、忘れていた! スラリーニョどの!」
クエリアが懐からだすと、スラリーニョがかぴかぴになっていた。
「なんかぺったんこになってる!!」
「......ぴ、ぴ......」
すぐにクエリアがヒールで回復させる。
「危うく干物になるところだったな」
スラリーニョが小さくなっている。
「ぴ」
「さすがにこの暑さではスライムにはきついか、どうする? 私だけ帰ってまつか」
「ふむ、仕方ないな。 ここまで町から離れればよかろう」
そういうと、ギュレルがドラゴンへと変化した。
「おお! はやいはやい!」
ドラゴンとなったギュレルにのって空を移動する。
「こんなことが出きるならさっさとなりなさいよね」
マゼルダが文句をいった。
(こいつこんなちっこいのに物怖じしないな)
オレは感心した。
「仕方なかろう。 人に見つかったら確実にこの国の軍隊と一戦交えなくてはならんようになる」
ギュレルがめんどくさそうにいうと、クエリアがうなづいた。
「確かに...... ドラゴンがいるなんて大騒動になるな」
「そうだな。 おっ、マゼルダ、あそこにデカイ岩の壁が見える! あれか」
「そうよ。 あれがマヴィン大洞窟」
下に降りると、そこには大きな穴があいている。
「デカイな穴だな。 ドラゴンのまま入れるぐらいの大きさだな」
オレたちは洞窟内へとはいった。 中は外のように明るい。 地面にも森のように巨大な木々が生えている。 一瞬洞窟内だということを忘れてしまいそうになった。
「かなり広い、洞窟内とは思えないな」
「そうね。 でも外の光りじゃない。 これ壁が光ってるわ」
マゼルダは壁までいって帰ってくるとそういった。
「お前ここにきたことあるんじゃないの。 トロールのこと知ってたんだろ」
「こっちからきた妖精に聞いたことがあるだけ」
「トロールがお前にびびって逃げたんだろ?」
「そんな話したっけ? 覚えてないけどぉ」
そうマゼルダは鼻唄まじりでとぼけた。
(こいつというやつは)
しばらく歩くと石造りの高い壁が見えてきた。 そこの上に灰色の肌をもつ巨大な人が見える。 こちらに気づいて慌てているようだ。
「ぶっさいくな門だな」
不機嫌そうにギュレルがいう。
「単に石を積んで作ったもののようだ。 砦か」
門の扉も木でできた簡易なものだった。
「それほど技術力はなさそうだ。 たのもー」
木の扉を叩く。 返答はない。
「もうめんどくさいから魔法でぶち抜けば」
マゼルダが恐ろしいことをいってる。
「バルバランディア、魔王の城のこと聞かないといけないんだぞ。 敵対してどうする」
木の扉が少しだけ開いて、向こうから巨大な体がみえる。
「あ、あの、なんのご用でしょうか。 我々にはそちらに与えてあげられるものはなにもありません。 できうるならこのまま帰っていただきたいのですが......」
大きな体を縮こまらせて、やんわりと拒絶してくる。
「なんなのよ! こんなとこまできてやったのに! この魔王島からやってきたマゼルダ一行と事を構えようというつもり! 滅ぼすわよ!」
マゼルダがどすをきかせそういうと、ひぃと言って扉がしまった。
「なにしてんだ!! しめられちゃっただろーが! アホルダ!」
「誰がアホルダよ! こういうのはなめられないように最初にガーンとかますのよ!!」
「なにがかますのよ、だ! 話しも聞いてもらえなくなってんじゃねーか」
その時、扉が開いて、白い服で作った白旗をふっているトロールたちがいた。
「ウソだろ......」
「ねっ!」
マゼルダが胸を張る。
「まあ、結果よかった...... とりあえず話しはできそうだな」
クエリアとギュレルが苦笑していた。
門をとおると、中は大きいが粗末な石積みの家が立ち並ぶ。 小さな畑、井戸など必要最低限の生活といったところだった。
「あ、あの私はこのトロールたちの長、バイエムともうします。 何卒《なにとぞ》滅ぼすことはお止めいただきたい......」
「そうね! 金目のものを全て差し出せば許さなくもないわ! ふぎゃ!」
オレは飛んでいるマゼルダを指で弾いた。
「い、いえ滅ぼすなんてとんでもない! 話を聞きにきただけです。 すみませんこいつバカルダなんで!」
「誰がバカルダよ!」
「は、はあ......」
トロールの長、バイエムは戸惑いながらも家へと案内してくれた。
オレたちは事情を話した。
「魔王島から...... そうですか魔王城へ行きたいのですね。 ですが我々も詳しくは知りません......」
バイエムはそう申し訳なさそうに話した。
(この反応からするとウソはなさそうだな。 無駄あしか)
「魔王ゼグリナクレスはトロールだったのであろう? 全く関係がないなんてことがあるのか」
ギュレルが腕を組み聞いた。
「はい、確かにゼグリナクレスはトロールでした。 しかし、トロールはその臆病さゆえ、他のモンスターに、また人に追われる立場だったのです。 それを子供ながらに嫌悪したゼグリナクレスは力をもとめ神の力を手に入れ強さを得たと言います」
「神の力か......」
「はい、その力を手に入れたゼグリナクレスは、魔王を名乗り人やモンスターを駆逐していきました」
「でも、あんたらはいい暮らしができたんじゃないの」
マゼルダが嫌みっほくいう。
「......いいえ、我ら同胞も彼によりかなりの数減らされました。 いえ、彼がもっとも嫌悪したのが我らだったのかもしれません」
(コンプレックスみたいなもんか)
「その後勇者に倒され、我らは解放されましたが、魔王に受けた恨みを同胞ゆえ向けられ、この地へと逃げて参ったのです。 ゆえに彼のことはくわしくわからないのですよ」
「報復か...... それでこんなところでひっそりと生きてんのか」
「......そうです。 ですのでそっとしておいていただきたいのです」
力なくバイエムは答える。
「だが、このような土地では未来すら見えないだろう」
クエリアがいうと、周囲のトロールたちは口を結ぶ。
「それは...... そうですね。 このまま滅びゆくのでしょうね。 われらトロールは命運に従います......」
バイエムは滅びさえ覚悟しているようだった。
「それが種族として選んだ道なら仕方ない......」
ギュレルはそういってが、納得いかないという風に見えた。
(そういや、ドワーフも似たような状況だったからな。 オレたちとこいというべきか、それともこのまま好きにさせるべきか...... ああ! ダメだ難しいことはわからん! イライラする!)
その時、そとで大きな音がした。
「なんだ!?」
その時トロールがはいってきた。
「長よ! サンドワームがここに来ます!」
「バカな! そんなここには、今までは、はいってこなかったのに!」
「おそらく我らの魔力にひかれてはいってきたのやもしれん」
ギュレルがそういった。
「長! どうします!」
「まずは、子供たちと女を先に逃がそう! お客人すみませんお逃げください!」
長はそこにあった大きな石のこん棒をもって家を出る。
「戦えるものは武器を!」
「わたしたちもいくぞトラどの!!」
クエリアが剣を抜いた。
「いや...... 待てよクエリア」
「あんた見捨てるっていうの! みそこなったわ!」
マゼルダが頭を叩く。
「違う。 オレがやる」
「ほう......」
そういうギュレルの横をとおり、オレは家を出ていく。
「あっ! お客人、危険です!」
バイエムがとめるのも聞かず、オレは前に出ていった。
(なんかムシャクシャする。 トロールにじゃないオレ自身にだ。 バカのくせに色々考えすぎた!)
目の前の地面から、天井まで届くような巨体で目のないイモムシのようなモンスターが現れ、オレの方に口を開いている。
「うらああああああああああ!」
オレは魔力を暴走させ、飛び上がるとサンドワームの頭上まで飛び上がりおもいっきり殴りつけた。
「ギャオオオオオオオ!!」
地面に叩きつけたサンドワームはそのまま動かなくなり、トロールたちはそれを唖然とした顔でみていた。
「もう考えんのやめた!! トロールにオレのいうことを聞いてもらう!」
オレはみんなの前でそう宣言した。
「ふぁ、あきたからなんか面白いことやってよトラ」
マゼルダはオレの頭で仰向けになりながら勝手なことをいう。
「どんなムチャブリだ! だから付いてこなきゃよかっただろ」
「それならクエリアだって来る必要ないじゃん」
「クエリアは帝国の皇女で勇者の末裔なの。 魔王城を探すんだから関係してるかもしれないだろ」
「帝国の皇女!? 勇者の末裔! 本当なのクエリア!」
「ああ...... 今や隠れてる身だがな」
クエリアはそういって船の縁から遠い海を眺めている。
「お姫様じゃん、城で悠々自適な生活じゃない。 なんでこんな冴えない男と一緒にいんの?」
「ほっとけ! 帝国はなんかやベーやつに支配されてるんだよ。 帰ったら戦争に利用されんの」
「それは阻止せねばならんな」
ギュレルが船の甲板で水着のようなもので日焼けをしていった。
「じゃあ、もうやっつけちゃえばいいじゃん。 私たちなら帝国なんてぶっ潰せるでしょ」
「暴走の実験をしてたぐらいだ。 強力な魔法や兵器を持ってるかもしれんし、こっちが戦争しかけたら、仮に勝っても他の国に攻撃されるだろ」
「それに、国内にも大臣に反対するものも少なからずいる。 少しずつ粛清されたとはいえな」
クエリアがいうと、マゼルダがふーんといった。
「つまんなーい、やっぱトラなんか面白いことをしてよ」
そしてまたムチャブリしてきた。
それから一週間たつと大陸へと着いた。 沖に船をおいて小舟で港町へついた。
「ふう、やっとついたわね」
マゼルダがヒラヒラと飛んでいく。
「大丈夫かトラどの」
クエリアが声をかけてくれた。
「......大丈夫じゃない。 物真似や一発芸、この一週間やらさせられ続け、マゼルダのダメ出しと恥ずかしさで泣きそうになった...... いや泣いてた」
「かなり厳しめに採点されてたな。 笑いをなめるな、と百回はいわれてた...... 頑張ったよ」
クエリアが同情してくれる。
「まあ、我はそこそこ楽しめたぞ」
ギュレルが肩を叩きにやにやしている。
「クッ、オレがもっと面白ければ......」
「なにと戦ってるんだ......」
クエリアがあきれていった。
町の酒場で情報を仕入れる。 だが有力な情報はなかった。
「知らないか......」
「そもそも隠れ住んでんだから、人間に見つかるわけないしね」
マゼルダがあくびしながらいう。
「まあ、大洞窟の場所は砂漠を越えた先にある。 そこにいけばよかろう」
オレたちは、大洞窟がある砂漠を越えることにした。
「ふへぇ、暑いな」
360度周囲は砂しか見えない。 日差しがジリジリと肌をやく。
「もうやだ! 暑い! あきた! 帰りたい! 疲れた!」
「いや、お前オレの頭に乗ってひとつも歩いてないだろ!」
「気持ちだけあるいてた!」
「ここからまだまだある。 馬車ですらここは避ける。 巨大なサンドワームが出るらしいからな」
クエリアが汗をぬぐってそういう。
「だからこそ、この奥にトロールはいるのだろう」
ギュレルが涼しい顔でいった。
「それより、クエリア、スラリーニョは大丈夫か、あいつ水分多めだろ」
「あっ、忘れていた! スラリーニョどの!」
クエリアが懐からだすと、スラリーニョがかぴかぴになっていた。
「なんかぺったんこになってる!!」
「......ぴ、ぴ......」
すぐにクエリアがヒールで回復させる。
「危うく干物になるところだったな」
スラリーニョが小さくなっている。
「ぴ」
「さすがにこの暑さではスライムにはきついか、どうする? 私だけ帰ってまつか」
「ふむ、仕方ないな。 ここまで町から離れればよかろう」
そういうと、ギュレルがドラゴンへと変化した。
「おお! はやいはやい!」
ドラゴンとなったギュレルにのって空を移動する。
「こんなことが出きるならさっさとなりなさいよね」
マゼルダが文句をいった。
(こいつこんなちっこいのに物怖じしないな)
オレは感心した。
「仕方なかろう。 人に見つかったら確実にこの国の軍隊と一戦交えなくてはならんようになる」
ギュレルがめんどくさそうにいうと、クエリアがうなづいた。
「確かに...... ドラゴンがいるなんて大騒動になるな」
「そうだな。 おっ、マゼルダ、あそこにデカイ岩の壁が見える! あれか」
「そうよ。 あれがマヴィン大洞窟」
下に降りると、そこには大きな穴があいている。
「デカイな穴だな。 ドラゴンのまま入れるぐらいの大きさだな」
オレたちは洞窟内へとはいった。 中は外のように明るい。 地面にも森のように巨大な木々が生えている。 一瞬洞窟内だということを忘れてしまいそうになった。
「かなり広い、洞窟内とは思えないな」
「そうね。 でも外の光りじゃない。 これ壁が光ってるわ」
マゼルダは壁までいって帰ってくるとそういった。
「お前ここにきたことあるんじゃないの。 トロールのこと知ってたんだろ」
「こっちからきた妖精に聞いたことがあるだけ」
「トロールがお前にびびって逃げたんだろ?」
「そんな話したっけ? 覚えてないけどぉ」
そうマゼルダは鼻唄まじりでとぼけた。
(こいつというやつは)
しばらく歩くと石造りの高い壁が見えてきた。 そこの上に灰色の肌をもつ巨大な人が見える。 こちらに気づいて慌てているようだ。
「ぶっさいくな門だな」
不機嫌そうにギュレルがいう。
「単に石を積んで作ったもののようだ。 砦か」
門の扉も木でできた簡易なものだった。
「それほど技術力はなさそうだ。 たのもー」
木の扉を叩く。 返答はない。
「もうめんどくさいから魔法でぶち抜けば」
マゼルダが恐ろしいことをいってる。
「バルバランディア、魔王の城のこと聞かないといけないんだぞ。 敵対してどうする」
木の扉が少しだけ開いて、向こうから巨大な体がみえる。
「あ、あの、なんのご用でしょうか。 我々にはそちらに与えてあげられるものはなにもありません。 できうるならこのまま帰っていただきたいのですが......」
大きな体を縮こまらせて、やんわりと拒絶してくる。
「なんなのよ! こんなとこまできてやったのに! この魔王島からやってきたマゼルダ一行と事を構えようというつもり! 滅ぼすわよ!」
マゼルダがどすをきかせそういうと、ひぃと言って扉がしまった。
「なにしてんだ!! しめられちゃっただろーが! アホルダ!」
「誰がアホルダよ! こういうのはなめられないように最初にガーンとかますのよ!!」
「なにがかますのよ、だ! 話しも聞いてもらえなくなってんじゃねーか」
その時、扉が開いて、白い服で作った白旗をふっているトロールたちがいた。
「ウソだろ......」
「ねっ!」
マゼルダが胸を張る。
「まあ、結果よかった...... とりあえず話しはできそうだな」
クエリアとギュレルが苦笑していた。
門をとおると、中は大きいが粗末な石積みの家が立ち並ぶ。 小さな畑、井戸など必要最低限の生活といったところだった。
「あ、あの私はこのトロールたちの長、バイエムともうします。 何卒《なにとぞ》滅ぼすことはお止めいただきたい......」
「そうね! 金目のものを全て差し出せば許さなくもないわ! ふぎゃ!」
オレは飛んでいるマゼルダを指で弾いた。
「い、いえ滅ぼすなんてとんでもない! 話を聞きにきただけです。 すみませんこいつバカルダなんで!」
「誰がバカルダよ!」
「は、はあ......」
トロールの長、バイエムは戸惑いながらも家へと案内してくれた。
オレたちは事情を話した。
「魔王島から...... そうですか魔王城へ行きたいのですね。 ですが我々も詳しくは知りません......」
バイエムはそう申し訳なさそうに話した。
(この反応からするとウソはなさそうだな。 無駄あしか)
「魔王ゼグリナクレスはトロールだったのであろう? 全く関係がないなんてことがあるのか」
ギュレルが腕を組み聞いた。
「はい、確かにゼグリナクレスはトロールでした。 しかし、トロールはその臆病さゆえ、他のモンスターに、また人に追われる立場だったのです。 それを子供ながらに嫌悪したゼグリナクレスは力をもとめ神の力を手に入れ強さを得たと言います」
「神の力か......」
「はい、その力を手に入れたゼグリナクレスは、魔王を名乗り人やモンスターを駆逐していきました」
「でも、あんたらはいい暮らしができたんじゃないの」
マゼルダが嫌みっほくいう。
「......いいえ、我ら同胞も彼によりかなりの数減らされました。 いえ、彼がもっとも嫌悪したのが我らだったのかもしれません」
(コンプレックスみたいなもんか)
「その後勇者に倒され、我らは解放されましたが、魔王に受けた恨みを同胞ゆえ向けられ、この地へと逃げて参ったのです。 ゆえに彼のことはくわしくわからないのですよ」
「報復か...... それでこんなところでひっそりと生きてんのか」
「......そうです。 ですのでそっとしておいていただきたいのです」
力なくバイエムは答える。
「だが、このような土地では未来すら見えないだろう」
クエリアがいうと、周囲のトロールたちは口を結ぶ。
「それは...... そうですね。 このまま滅びゆくのでしょうね。 われらトロールは命運に従います......」
バイエムは滅びさえ覚悟しているようだった。
「それが種族として選んだ道なら仕方ない......」
ギュレルはそういってが、納得いかないという風に見えた。
(そういや、ドワーフも似たような状況だったからな。 オレたちとこいというべきか、それともこのまま好きにさせるべきか...... ああ! ダメだ難しいことはわからん! イライラする!)
その時、そとで大きな音がした。
「なんだ!?」
その時トロールがはいってきた。
「長よ! サンドワームがここに来ます!」
「バカな! そんなここには、今までは、はいってこなかったのに!」
「おそらく我らの魔力にひかれてはいってきたのやもしれん」
ギュレルがそういった。
「長! どうします!」
「まずは、子供たちと女を先に逃がそう! お客人すみませんお逃げください!」
長はそこにあった大きな石のこん棒をもって家を出る。
「戦えるものは武器を!」
「わたしたちもいくぞトラどの!!」
クエリアが剣を抜いた。
「いや...... 待てよクエリア」
「あんた見捨てるっていうの! みそこなったわ!」
マゼルダが頭を叩く。
「違う。 オレがやる」
「ほう......」
そういうギュレルの横をとおり、オレは家を出ていく。
「あっ! お客人、危険です!」
バイエムがとめるのも聞かず、オレは前に出ていった。
(なんかムシャクシャする。 トロールにじゃないオレ自身にだ。 バカのくせに色々考えすぎた!)
目の前の地面から、天井まで届くような巨体で目のないイモムシのようなモンスターが現れ、オレの方に口を開いている。
「うらああああああああああ!」
オレは魔力を暴走させ、飛び上がるとサンドワームの頭上まで飛び上がりおもいっきり殴りつけた。
「ギャオオオオオオオ!!」
地面に叩きつけたサンドワームはそのまま動かなくなり、トロールたちはそれを唖然とした顔でみていた。
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