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1章 出会いと記憶
9.勇気あるものの夢
しおりを挟む「なんで、俺が…どうして…なんで、なんで俺なんだよ…!!」
どこかの、大きくて豪勢な広場で目を覚ます
誰かの悲痛な叫びが聞こえる
いや、これはこの声を、私は知っている
「なんで?なんで俺が勇者なんだ
俺はただの高校生だったのにどうして別世界の命運を背負わなきゃいけないんだ…!!!」
そうだ、この声は一番責任感があった後輩の男の子
敵といえど命を奪うことずっと躊躇い、悩んでいた優しい子
一番辛いことを背負わせてしまった
場面が変わる
「そういえば、先輩って図書委員でした?」
「え、そうだけど…?」
「あ!やっぱり!おれどっかで先輩のこと見たことある気がしてたんですよねぇ」
勝手に喋り始めた口に驚きながら…いや、これは過去の再現か
名前も思い出せない大切な後輩との会話を思い出すことができた
でもやはり勝手に動く口は違和感しかないが
また、場面は変わる
「俺ねぇ、アップルパイがすき!
母さんと妹がよく作ってくれるんだぁ~」
「アップルパイ!いいですね、今度作ってみましょうか」
「ホントに?!やったぁ!!」
「ーちゃんもどうですか?」
「そうだなぁ、絶対美味しいだろうし私もいただこうかな」
子供っぽいあの子と優しい瞳で見ていた少女がそう約束をしていた
少女に声をかけられた私はその約束をとても楽しみにしていたような気がする
更に、場面は変わる
「どうして、そんなに悲しそうな顔をしているの?」
「あ…先輩、へへ、見つかっちゃった」
「みんな探してたよ?」
「うん、ごめん。妹のこと、考えててさ」
「なるほど、寂しい?」
「いやー、なんていうか、喧嘩してこっちの世界に来ちゃったから、さ…
やっぱちゃんとあの時誤っておけば良かったって…ほら、俺らいつ死んじゃうかわからねぇし」
「こら、そんな暗いこと言わない。
まったく、手のかかる後輩だ。先輩がちゃんと寂しがりやな後輩をおうちに届けてあげよう」
「ふは、先輩そんなキャラじゃねぇじゃん
んでも、あんがと。ちょっとネガティブになってたわ」
まだ暗い顔をしている後輩の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるとやめろよぉっといつも通りの笑い声が返ってきて安心する
この後、私はどうしたんだっけ?
場面が動く
あぁ、視界が燃え盛るように赤い、体中が痛くて、指一本も動かせなさそうだ
これは何の記憶だろうか、誰かが私を呼んでいる
「せ…ぱ…!!先輩!!真夜先輩!!なんで、なんで俺をかばったんだよ!!それにあんな魔法を!!どうして…!!!!!!!」
これは、この記憶は、なるほど最後の戦いであり、私が命を落とした場所か
記憶の私は無理矢理手を動かして、泣きじゃくる勇者頭をなでている
「泣くな、裕也。約束しただろう。
私が寂しがりやな後輩を家に届けるって」
とっても大事な約束。可愛い後輩のため、大丈夫な仲間たちのため、この身が犠牲になろうともかまわなかった
「笑え、たとえ帰れなくとも、私はこの旅がとても楽しくて幸せだった」
帰れなくても、別に良かった。どうしてだかまだ思い出せないけれど、あの世界が私は好きだった
あの仲間達が大好きだった。
夢が、覚める。
体がひんやりと冷えるような月が浮かぶ真夜中に私はいつもの屋敷で目を覚ました
「じいや」
「はい、お嬢様」
一言声をかければどこからともなく現れる執事にあぁ、あれは夢だったと安心と少しの寂しさが浮き上がる
「ねぇ、私の名前って、真夜だったわよね」
何度も聞き返したこの問いを、いつものようにじいやに問いかける
「はい。真夜お嬢様です。
また、夢を?」
「えぇ、一番最初の夢を」
いつも通りの返事が返ってくるのにほっと息をつき、微笑んだ
1つ、名前を思い出せた
勇気あるものの名前は、裕也
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