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ただ一つの宝物
「は?入院?」
あの日から彼女は学校に来なくなり
モヤモヤと抱いた気持ちから数日、
教壇に立つ担任から耳を疑う様な言葉を聞く
急な入院と言う言葉にクラスメイト達のざわざわと驚きの声が響く教室で俺は
拭え切れない嫌な予感に汗がぽたり、と頬から落ちた
一つ下で少し病弱な幼馴染はオレのかわいい妹分。
そんな目に入れてもかわいいかわいい子が、初恋をした
最悪と言っても過言でもない病気を身に宿して
ある日、あの子は少し顔を赤くして、
「好きな人が出来たの」
って、恥ずかしそうに、幸せそうに、
恋をした乙女の顔をしていた
少し、いやとても、寂しく思いながらも、
かわいい妹分を誑かした…心を奪ったいとしの君の話を根掘り葉掘り聞き出したのは仕方の無い事だろう
でも、優しいあの子の事だ。選んだ男の子も素敵な人なのだろう
いつか2人で挨拶に来てくれたりするのだろうか
そんな未来の事を想像しながらあの子の恋が叶う事を祈っていた
しかしその日から、あの子はどんどんと体調を崩し、やつれていった
「花吐き病…?」
うん、と頷く彼女は、随分と痩せたように見える
いや、見えるんじゃなく、実際にそうなのだろう
病名を聞いて直ぐに調べた
花吐き病は古くから存在し、相手を強く想うほどに、花を吐き出し、根を張っていく
身体中に根を張ったそれは宿主に壮絶な痛みをもたらしそして…
それはいつしか宿主と共に自らを枯らしていく
…どんなに医療が進歩しても、
どんなに設備や薬があったとしても、
治療法は一つだけだという
しかしそれは、最悪な結末を迎えた
「あは、振られちゃった」
そう、顔を真っ青にして笑い、
倒れるように座り込んだ彼女の部屋はぐちゃぐちゃな花弁が散らばって噎せ返るほど濃い甘い花の香りが篭っていた
あぁ、オレが変わってあげられたら…
かみさま、どうかもうおれの宝を
連れていかないでくれ
「ッはぁ、はぁッ!!」
鋭い風が頬をぬける、
もっと、もっと速く!
体が邪魔だと思うほどに風を受け足の回転を回し
坂道を駆け登り、目的の場所へと走り抜けた
「ねぇ、キミがあの子のいとしの君…かな?」
あの衝撃的なホームルームのあと、
そう声を掛けてきたのは1年上の先輩
彼女とよくいる異性で
クラスの女子もきゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げるほど綺麗で、とても強くて男子にも憧れのような人
勝てない、と心の中で自分勝手に諦めた理由を押付けた先輩だった
「キミに頼むのも、とても、凄く!嫌なのだが、」
眉を顰め、先輩の言葉に俺はどうやら勘違いをしていたようだった
それも、拭っても拭いきれないような過ちも犯して
「あの子の、妹分の命を、救って欲しい」
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