恋は朽ちて病は実る

無月

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最初のサヨナラと砂時計の繰り返し

病院内を足速に進み、震える体を抑え、目的のプレートが書かれたドアをガラリと力任せに開いた

扉の向こうには、目が痛くなるような真っ白な病室で沢山の管に繋がれた彼女が眠っていた
1歩部屋に入ると鼻を劈くようなアルコールと薬品の匂い、
そしてお見舞いの品として置いてある花にしては違和感を感じるほどに強い香りがふわりと、俺の体を包み込んだ

そっと近寄り、眠る彼女を覗き込む
呼吸器で覆われた顔は青白く
病衣の裾から見える腕は枯れ木のように細く
触れたら折れてしまいそうなほど記憶にある彼女よりも随分とやせ細っていた
そして植物だろうか…?病衣に隠れてはいるが身体中に根を張っているように見える
ピッピッピッと鳴る機械音が、まだ彼女が生きていると、証明しているようで何だか心地いい
閉じられていた目は、次第に薄らと開き、
驚いたような、しかし力ない様子でこちらを凝視していた

じわりと霞む目からずっと抑えていた、
流す資格も無いはずなのにこぼれ落ちそうなほどの涙をおさえようと、ごめん、ごめん!と声にならない言葉が喉元にせり上がってくる

「ごめん、本当はきみのことが好きなんだ」

「でも、俺なんかより、先輩と居る方がお似合いだとおもって、」

「こんな事になってるなんて知らなくてごめん、知ろうとしてなくて、ごめん」

「もう、遅いかもしれない
っでも!」

「こんなどうしようもないほどに、
バカな俺だけど、それ以上に
どうしようもなくきみが、好きなんだ」

結局、涙はぽたり、と零れ
彼女の青白く薄い肌におちた

「ぁ…」

小さく彼女が呻く、はくはくと口を開き何かを答えようとしてくれている

「あり、が…ぉ、ご、め ね」

かすれた声でぽつり、嬉しそうにそう答え
皮膚の薄い肌を伝い涙を零した彼女は、





とても、綺麗だった


















ピーーーーーーーーーーーーーーーー

長い、長い機械音が静かな病室で
うるさいほどに鳴り響く
あぁ、これはもう叶うことの無い失恋だ
それは何も知らなかった、知らず諦めた自分の自業自得で罰だった
張り裂けそうな程に胸が痛い
しかし彼女の方がずっとずっと、
もっと痛かっただろう
辛かっただろう

ごめん、ごめんとまた繰り返し、もう意味も届くことも無いのに謝る言葉が口から零れた

あぁ、いつの間にか流れていた涙が止まらない
息が上手く吸えない
体が上手く動かない
はくはくと意味の無い動きをする口元を抑え
俺はだらりと彼女の眠るベッドに体を預けるしかなかった


ぽろり、口から零れ落ちた花弁は





















美しい程の青だった














感想 1

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