霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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予測のつかない出来事 中編

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翌日、愛菜は目覚めの悪い夢を見たなと憂鬱な気分で目を覚ました。
自分が西田を殺害する夢であった。

「縁起でもない。西田の嫌味がよほど心身にストレスとして残っているのかな。。一度診療受けた方がいいのかな」

そんな事を考えていた。

だが、愛菜が出社すると会社の雰囲気がいつもの違うのを感じとった。

「様子がおかしいわね。何かあったのかな」

そう思っていたところに営業課の映美が青ざめた顔をして話しかけて来た。

「愛菜、聞いた?西田が殺害されたんだって」

「え?」

愛菜は映美の言った事がよく理解出来なかった。

「どういう事?」

「詳しくはまだわからないんだけど、警察から連絡があってね。行きつけのキャバクラの近くで遺体で発見されたんだって。頭と顎を鋭利な刃物で斬られて即死だったらしいよ」

映美にそう言われて愛菜は昨夜の夢を思い出した。

〔嘘。。あれは夢じゃなかったの。本当に私がやってしまったの。。どうしよう。。〕

愛菜は顔から血の気が引いていくのが自分でわかるほど動揺した。
映美はそんな愛菜の表情に気がつく事なく、営業周りで事件の事を聞かれた時の対応協議があるからと会議室に走っていった。

「どうしよう。。無意識のうちにでとんでもない事をしてしまったのかも」



「鋭利な刃物のようなもので頭部と顎を真っ二つだ。ひでぇものだな」

事件現場にかけつけた龍二はそれを見るなりまた嫌な予感が頭をよぎった。
先に来ていた同僚刑事に恐る恐る確認してみる。

「一応聞くけど、監視カメラの映像に犯人は映っていたのか?」

「いや、それがまったく。まるでかまいたちにあったみたいに顎と頭がスパッと斬られて倒れている映像だったよ」

龍二はそれを聞いてまたかと頭を抱えた。

〔聖菜ちゃん案件だこれは。。ここ最近この街で奇怪な事件が多発しているが、何か悪い事が起きなければいいが。。〕

龍二は美里を死に追いやった十五年前の事を思い出していた。
悪魔と契約を交わしたという男との戦いで美里は命を落とした。
その男は美里の命がけの結界で封印したはずたが。
そこまで考えて龍二は首を横に振る。

「いや、余計な事は考えまい。とりあえずは警察で調べるだけ調べる。犯罪の可能性がないなら事故として処理する。これが通常だな」

「さすが龍さん。やっぱり刑事だね」

後ろから声をかけられて龍二は飛び上がるほどびっくりした。

「せ、聖菜ちゃん。またどうしてここに?」

「だって龍さんの管轄って私の通学路なんだもん。嫌でも事件や事故が起これば目につくわよ」

「そ、そうだな」

龍二は他の警察官には内緒でこっそり監視カメラの映像を聖菜に見せた。
聖菜は見るなり霊の仕業だと断言する。

「これ、霊体の仕業だね」

「わかるのかい?」

「この傷は刃物で切ったんじゃないよね。痕跡も残さずに切るなんて霊的な力でなければ無理というのが一点。もう一点は映像に何も映ってないという事ね。普通の人が見たらかまいたちにしか見えないでしょうけど、私には女性の形をした霊が見えるわ」

「女性の形?」

「被害者の男性はこの女性に相当な恨みを買っていたと推測出来るわね。その恨みを晴らすべく霊体が動いたという事。本人は別の場所にいて無意識のうちに幽体離脱して犯罪を起こすのよ」

「それじゃ逮捕は不可能だな」

「そうね。だからこの一件は私が請け負うわ」

「どうするつもりだ?」

「いつも通り。霊体を斬って本体から離す。あれは心の闇が形となって現れたものだから、それさえなくなれば本人は元に戻るし事件も起こらなくなる」

龍二は額に手を当てて悩んでいたが、最終的には聖菜に任せて警察としては事故で処理する事とした。


「那由、いる?」

「そろそろ呼ばれる頃だと思ってたよ」

「話が早くて助かるわ」

聖菜は事件現場に式神猫である那由多を呼び寄せた。

「ここに残っている霊気から本体の居場所を突き止める事は出来る?」

「ボクは犬じゃないんだけどな」

「匂いを嗅げとは言ってないでしょ。気を探るのよ」

「わかってて冗談のつもりで言ったんだけど、聖菜はギャグが通じな過ぎ」

「私も冗談を返したつもりだったんだけど、那由には通じなかったようね」

「お互いに冗談が下手ですから。わかった。とりあえず探ってみるよ」

那由多は神経を集中させて残っている気を探った。

「聖菜、こっちだよ」

聖菜は那由多の後をついて行った。


事件現場からおよそ三十分弱は歩いたであろうか。

「聖菜、ここの気配が一番強い。本体はこの中にいるよ」

「ここは。。」

聖菜は霊気を追ってたどり着いた場所が見覚えのある会社だったので驚いた。

「確か以前、霊体の暴走で事件を起こした西巻明日香の勤めていた会社。この数ヶ月の間に二人も出るなんて、よほどストレスの溜まる職場なのかな」

今回の霊体も日頃の溜まりに溜まった恨み辛みが心の闇となって霊体化したもの。
職場環境がよほど悪くない限り、こんな事はそうそう起きないであろう。ここはそういう会社なのだと聖菜はため息をつく。

その時である、会社の中から女性が一人かけ足で飛び出して来た。
聖菜が話しかけようとするのも振り切るように走り去ってしまう。

「この会社の人なら少し話を聞こうと思ってたのに、よほど急ぎの用事でもあったのかしら?」

「聖菜、今の人が霊体の本体だよ」

「なんですって?」

聖菜は思わず舌打ちしそうになった。

「今の人が本体だとすると、あの様子からして自分のやった事がわかっているのね。だとすると急がないとまずいな」

聖菜の言うことを那由多も即座に理解した。

「あの様子じゃ相当思い詰めている。下手すると自らの命を絶つかも知れないな」

「那由、急いで追うよ」


「はあ。はあ」

急いで走って来て息を切らした愛菜は川に掛かる橋の中央で立ち止まった。
ふと橋から下を見て考えを張り巡らせる。
この中央から飛び込んだら川の深さは二メートル弱。

頭から落ちれば底に激突して頭を割るか首が折れるだろうし、そこまでいかなくても川に流されて溺れ死ぬだろう。
ここなら確実に死ねる。
愛菜は橋の欄干(らんかん)に手を掛けて上に乗ろうとした。

「何をしているの?」

突然後ろから掛けられた声に驚いて振り向くと自分より若いと思われる女性が立っていた。

「あなた、誰?」

「刀祢聖菜。霊媒師よ」

「霊媒師?霊媒師が私に何の用なの?」

「西田浩二という人が殺害された一件。あなたは自分がやったと思い込んでいるようだけど違うわ。あれはあなたの怨念が霊体となってやったもの。だから監視カメラに姿も形も映ってないし、警察が調べても何も出て来やしない」

聖菜の言葉に愛菜は理解が追いつかずに思考が止まってしまう。

「どういう事?私がやったんじゃないの?」

「結論から言えばそうよ。私はあなたの怨念となっている霊体を浄化しに来たの。そうしないとまた第二、第三の事件を引き起こす可能性があるから」

「待って。言っている事が訳わからない。今どき霊なんて本当にいると思っているの?」

「いなければ私は霊媒師なんてやってないわ」

あまりにも冷静にストレートで返ってくる言葉に愛菜は次の言葉が出てこなかった。
うわ言のように出て来る言葉は自責の念にかられたものであった。

「そんなの信じられない。あれは私がやったのよ。私が。。」

そう言いながら愛菜が突然苦しみ出した。
胸を抱えてしゃがみ込むと背中から黒い霧のようなものが出て来て人の形となっていく。
愛菜にそっくりな姿となって現れた霊体は狂気の表情で聖菜を睨みつける。

「今回はすんなりいくと思っていたけど、そうは問屋が卸さなかったわね」

「精神的に追い詰められて彼女の心が暴走したんだ」

那由多がそう言い終えると同時に愛菜の霊体は聖菜に襲いかかる。

「浄化なんてされてたまるか」
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