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大奥暗殺帳編
大奥暗殺帳 八
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幕府の財政が底をついていた事が六代家宣の時に判明し、間部詮房や新井白石の案で大奥にも倹約を願い出て、お喜世がこれに許可を出し江島が御年寄として天英院派にも厳しく倹約を言い渡した。
これに反発した一部の者たちは新井白石と間部詮房を嫌う大名たちと手を組み、江島を罠に嵌めた。
その影には後の大奥御年寄となる宮守志信がいた。
「妾が大奥で実権を握るために江島は邪魔じゃ。お喜世〔後の月光院〕と江島が組んでいる限りはこの大奥は彼奴らの思いのまま。何としてもあの二人の仲を裂かねばならぬ」
宮守の言葉に養源斎はうなずく。
「大奥はいま時期将軍の後継者争いで混乱している。この機に乗じて江島を罠に嵌めるのじゃ」
「しかし江島は切れ者。お喜世の人望も御年寄たちを完全に掌握しており、そう簡単にこちらの思惑にはまるとも思えませぬが」
「確かにお喜世の人脈は頑丈ではある。しかし江島という扉が取り払われれば、その頑丈な壁は崩れ落ちていく。その罪は近衛照子(このえてるこ)〔天英院〕に被ってもらおうぞ」
宮守志信の含み笑いを養源斎は黙って聞いていた。
「お静」
宮守に名を呼ばれ、お静という女中が部屋に入り平伏する。
「お方様、お静参りました」
「お静、お前にこれを渡しておく」
宮守志信がお静に渡したのは近衛家の紋章である杏葉牡丹の印籠であった。
「これは?」
それは天英院の父である近衛基熈(このえ もとひろ)が持っていた印籠を養源斎が盗み出してきたものであった。
「これは近衛家の紋章じゃ。これを江島の女中たちにそれとなく見せるといい。やつらと天英院の家臣たちはそれでなくても敵対しておるからのう。これを見れば江島の陥れたのは天英院とその側近たちだと思うであろう」
「かしこまりました」
「あとは山村座の連中を動かすのみ。お静、うまくやるのじゃぞ」
「お任せ下さい」
このお静は宮守志信の実家でもある小田原秋津家に仕えていた女中である。
志信付きの女中であったため、大奥にもそのまま連れてきたのである。
そして月光院付きの女中として忍び込ませたのだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
江島はその日の午後松平伊豆守より呼び出しがあり、御広敷に出向いたところ、その座敷にはすでに宮路をはじめとして梅山、吉川などが呼び出されていた。
月光院の御参内として芝の増上寺、上野の寛永寺にお参りに行った者たちであった。
「お待たせ致しました」
江島が座敷に入ると「そこに直られよ」と松平伊豆守が頭ごなしに厳しい顔で言う。
江島は立ったまま伊豆守に訪ねる。
「いきなり呼びつけてそこに直れとはいったい何事でございます。無礼でございましょう」
「わからぬのならいま申すから直りなされ」
伊豆守の目配せで配下の武士たちが江島の手を取りその場に座らせようとした。
「ええい、下がれ!」
江島が一喝すると武士たちは怯んだ。
大奥の御年寄と言えば表の老中に匹敵する地位にある。
伊豆守でさえ昨日までは江島に頭を下げていたのに、そこに直れとは無礼千万であるという気持ちが江島にはあった。
江島は武士たちと伊豆守を見据えてそこに座った。
伊豆守は江島から視線を逸らして懐に挟んでいた封書を取り出した。
「申し渡す。さる正月十二日、芝増上寺に御参内仰せつけ候のところ、遊山所にまかりこし不届に思い召し候。。」
「お待ち下さい。不届きに思い召しとは?この江島まったく身に覚えがございません。突然この御広敷に呼び出した上に江島ほかここにいる女中たちにひと言の話しも聞かず一方的に不届きと決定した理由はいかに?納得がいきませぬ」
凛とした声で立ち向かう江島。
「いったいその書状はどなたの下知にてか申されよ」
江島の問いに伊豆守は答えずに「吟味中はそれぞれの宿にお預けとなる。これより罪人として取り扱われるゆえ、小袖一枚にて連行致す」
「旦那様」「江島様」と女中たちからすがる声が飛ぶ。
しかし江島はここで抵抗してもと思ったのか「吟味が終われば誤解も解けましょう」と女中たちに言ったのである。
江島は影からこの様子を見ていた女中の友里(ゆうり)の方を見るとうなずくように首を振った。
友里はそれを見て「後を任せた」という目配せである事を察知した。
「すぐに月光院様にお知らせしなくては」
「月光院様」
江島の女中の一人である友里が血相を抱えて駆け寄ってくる。
「何事じゃ?」
「大変でございます。江島様が御広敷よりお縄をかけられましていずこかへ連れ出されたました」
「どういう事じゃ?友里、落ち着いて話しなさい」
⭐︎⭐︎⭐︎
月光院の代参で寛永寺に赴いた江島は帰りに当時の江戸歌舞伎四座の一つである山村座に立ち寄り、桟敷と呼ばれる中二階のいわゆるVIPルームに接待を受けた。
この時、江島を始めとする女中たちに配られた弁当は一つ一両もするものだったという。
値段を聞いて驚いた江島。
そこに栂屋善六(つがやぜんろく)が現れて自分が手配させてもらったという。
江島は以前に間部詮房から要注意人物がいると忠告を受けていた。
「特にご注意申し上げたい商人がござります」
「誰です?」
「浅草の栂屋善六(つがやぜんろく)という人物でございます」
「栂屋。。覚えがあります。たしか薪炭が商いであったと」
「栂屋は薪炭御用達を狙っていると聞いております。この江戸城内の薪炭は年間四、五万両にもなる莫大な商いですから、それを独占しようと天英院様付きの女中にまで取り合っている節がございますゆえ、油断は禁物でございます」
「わかりました。私がその根を断ち切ってみせます」
栂屋善六と聞いて江島は怪訝に思い、お静に確認する。
「何故あの者がここにいるのだ?」
「それが、私にもわかりません。手代たちに紛れて勝手について来てしまった様なのですが」
お静の言葉に江島はあの男ならさもやりかねぬとため息をつく。
まもなく芝居が開演されると、栂屋善六の持ち込みであろう桐箱にぎっしりと詰め込まれた贅を凝らした料理や菓子が次々と運び込まれてくる。
女中たちに出されている料理は驚くほど豪華であった。
江島はお静を介してあらかじめ金子は手代に渡してある。
しかし料理の皿数や豪華さを見たら足を出ているに違いなかった。
座敷も二階正面を全て借り切ってしまっているし、当日出演する俳優たちには「江島様からですよ」と言い添えて花までばら撒いてある。
江島だけでなく宮路も江島にならって金子を出している。
これもお静に渡してあった。
それでも豪華すぎる。それなりの金を使っているのは明白であったが、江島も宮路もそれくらいはしてもよかろうと思っていた。
「お静に預けた金子は間違いなく手代たちに渡っているものと信じて疑わなかった事に私の油断がありました。実際にはこの金子はビタ一文字手代たちは受け取っていなかったのです。そして明らかに予算を超えているであろう料理を見ておかしいと気がつく洞察力が私には欠けていました。全てはお静を信用しきってしまったからなのです」
演じられた項目は一般客には不評で、喜んでいるのは日頃めったに芝居小屋に足を踏み入れる機会ない大奥の女中たちだけであった。
芝居が終わると生島新五郎が妻のお良と江島の元に挨拶に訪れた。
お良の姉はお孝といい、その昔江島と仲の良かった幼馴染であった。
「お姉様にそっくりですね。ひと目でわかりましたよ」
江島も嬉しそうに話しかけた。
「お近づきのしるしに何か差し上げたいのですが」
江島はそう言ってあたりを見渡すが、町娘と違い財布や金子を持ち合わせていなかった。
大奥の御年寄ともなれば何事をするにも自身でする必要がないため、財布など持ち歩く事もなかったのである。
「あら、困った。どうしましょう」
江島がそうもらした横からお静が話しかける。
「それならば帯をおつかわしあそばせたらどうでございましょう」
「この帯を?」
「はい。江島様のお召しのものは今流行りの柄でございまして、町方の女性であれば誰もが羨む品物でございます。お良殿に贈られるにはうってつけと存じますよ」
江島は今江戸でどのようなものが流行しているのかよく知らなかったが、お良が喜ぶなら帯をやる事くらい何でもなかった。
「お静にそう言われて私は持ち合わせが何も無かったものあったが、江戸の流行りとはこういう物かと疑いもせず帯を手渡してしまった。その代わりにと生島新五郎から帯を手渡されたのだが、これが後々の問題になる事などまったく考えもしなかった。。今思えば愚かだと笑うしかない話ですが」
江島は自身の帯を無造作に解いて綺麗に折りたたみお良の膝元に置いた。
「もったいない。家宝と思い大切に致します」
お良がそれを受け取ると生島新五郎も自身の帯を解いて江島に渡した。
「お城に戻られるまでの紐代わりでございます。ご用がお済みになられたらお捨て下さいまし」
女中たちにどよめきが起こった。
「生島新五郎の帯なら宝物ですよ、江島様。いい記念になりましたね」
宮路がそういうと梅山が
「江島様、その新五郎の帯、私が黄金三枚で買いましょう」
などとふざけて言い始めたので、江島も「いいえ、黄金千金積まれても売りませんよ」と笑いながら返した。
江島たち一行は辛うじて門限に間に合った。
「七つまでに帰城するのは無理であろう」と判断した月光院があらかじめ門番に申し入れてくれていたのである。
「病人が出たため」と見え透いた嘘が難なく通り百人を超える大人数が門限外にそれぞれの部屋に帰り着けたのだ。
これまでも門限に遅れる事は天英院やその付き人たちにも見られていたが、その都度暗黙の了解ぎなされて表立ってのお咎めにならずに済んだのである。
これに反発した一部の者たちは新井白石と間部詮房を嫌う大名たちと手を組み、江島を罠に嵌めた。
その影には後の大奥御年寄となる宮守志信がいた。
「妾が大奥で実権を握るために江島は邪魔じゃ。お喜世〔後の月光院〕と江島が組んでいる限りはこの大奥は彼奴らの思いのまま。何としてもあの二人の仲を裂かねばならぬ」
宮守の言葉に養源斎はうなずく。
「大奥はいま時期将軍の後継者争いで混乱している。この機に乗じて江島を罠に嵌めるのじゃ」
「しかし江島は切れ者。お喜世の人望も御年寄たちを完全に掌握しており、そう簡単にこちらの思惑にはまるとも思えませぬが」
「確かにお喜世の人脈は頑丈ではある。しかし江島という扉が取り払われれば、その頑丈な壁は崩れ落ちていく。その罪は近衛照子(このえてるこ)〔天英院〕に被ってもらおうぞ」
宮守志信の含み笑いを養源斎は黙って聞いていた。
「お静」
宮守に名を呼ばれ、お静という女中が部屋に入り平伏する。
「お方様、お静参りました」
「お静、お前にこれを渡しておく」
宮守志信がお静に渡したのは近衛家の紋章である杏葉牡丹の印籠であった。
「これは?」
それは天英院の父である近衛基熈(このえ もとひろ)が持っていた印籠を養源斎が盗み出してきたものであった。
「これは近衛家の紋章じゃ。これを江島の女中たちにそれとなく見せるといい。やつらと天英院の家臣たちはそれでなくても敵対しておるからのう。これを見れば江島の陥れたのは天英院とその側近たちだと思うであろう」
「かしこまりました」
「あとは山村座の連中を動かすのみ。お静、うまくやるのじゃぞ」
「お任せ下さい」
このお静は宮守志信の実家でもある小田原秋津家に仕えていた女中である。
志信付きの女中であったため、大奥にもそのまま連れてきたのである。
そして月光院付きの女中として忍び込ませたのだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
江島はその日の午後松平伊豆守より呼び出しがあり、御広敷に出向いたところ、その座敷にはすでに宮路をはじめとして梅山、吉川などが呼び出されていた。
月光院の御参内として芝の増上寺、上野の寛永寺にお参りに行った者たちであった。
「お待たせ致しました」
江島が座敷に入ると「そこに直られよ」と松平伊豆守が頭ごなしに厳しい顔で言う。
江島は立ったまま伊豆守に訪ねる。
「いきなり呼びつけてそこに直れとはいったい何事でございます。無礼でございましょう」
「わからぬのならいま申すから直りなされ」
伊豆守の目配せで配下の武士たちが江島の手を取りその場に座らせようとした。
「ええい、下がれ!」
江島が一喝すると武士たちは怯んだ。
大奥の御年寄と言えば表の老中に匹敵する地位にある。
伊豆守でさえ昨日までは江島に頭を下げていたのに、そこに直れとは無礼千万であるという気持ちが江島にはあった。
江島は武士たちと伊豆守を見据えてそこに座った。
伊豆守は江島から視線を逸らして懐に挟んでいた封書を取り出した。
「申し渡す。さる正月十二日、芝増上寺に御参内仰せつけ候のところ、遊山所にまかりこし不届に思い召し候。。」
「お待ち下さい。不届きに思い召しとは?この江島まったく身に覚えがございません。突然この御広敷に呼び出した上に江島ほかここにいる女中たちにひと言の話しも聞かず一方的に不届きと決定した理由はいかに?納得がいきませぬ」
凛とした声で立ち向かう江島。
「いったいその書状はどなたの下知にてか申されよ」
江島の問いに伊豆守は答えずに「吟味中はそれぞれの宿にお預けとなる。これより罪人として取り扱われるゆえ、小袖一枚にて連行致す」
「旦那様」「江島様」と女中たちからすがる声が飛ぶ。
しかし江島はここで抵抗してもと思ったのか「吟味が終われば誤解も解けましょう」と女中たちに言ったのである。
江島は影からこの様子を見ていた女中の友里(ゆうり)の方を見るとうなずくように首を振った。
友里はそれを見て「後を任せた」という目配せである事を察知した。
「すぐに月光院様にお知らせしなくては」
「月光院様」
江島の女中の一人である友里が血相を抱えて駆け寄ってくる。
「何事じゃ?」
「大変でございます。江島様が御広敷よりお縄をかけられましていずこかへ連れ出されたました」
「どういう事じゃ?友里、落ち着いて話しなさい」
⭐︎⭐︎⭐︎
月光院の代参で寛永寺に赴いた江島は帰りに当時の江戸歌舞伎四座の一つである山村座に立ち寄り、桟敷と呼ばれる中二階のいわゆるVIPルームに接待を受けた。
この時、江島を始めとする女中たちに配られた弁当は一つ一両もするものだったという。
値段を聞いて驚いた江島。
そこに栂屋善六(つがやぜんろく)が現れて自分が手配させてもらったという。
江島は以前に間部詮房から要注意人物がいると忠告を受けていた。
「特にご注意申し上げたい商人がござります」
「誰です?」
「浅草の栂屋善六(つがやぜんろく)という人物でございます」
「栂屋。。覚えがあります。たしか薪炭が商いであったと」
「栂屋は薪炭御用達を狙っていると聞いております。この江戸城内の薪炭は年間四、五万両にもなる莫大な商いですから、それを独占しようと天英院様付きの女中にまで取り合っている節がございますゆえ、油断は禁物でございます」
「わかりました。私がその根を断ち切ってみせます」
栂屋善六と聞いて江島は怪訝に思い、お静に確認する。
「何故あの者がここにいるのだ?」
「それが、私にもわかりません。手代たちに紛れて勝手について来てしまった様なのですが」
お静の言葉に江島はあの男ならさもやりかねぬとため息をつく。
まもなく芝居が開演されると、栂屋善六の持ち込みであろう桐箱にぎっしりと詰め込まれた贅を凝らした料理や菓子が次々と運び込まれてくる。
女中たちに出されている料理は驚くほど豪華であった。
江島はお静を介してあらかじめ金子は手代に渡してある。
しかし料理の皿数や豪華さを見たら足を出ているに違いなかった。
座敷も二階正面を全て借り切ってしまっているし、当日出演する俳優たちには「江島様からですよ」と言い添えて花までばら撒いてある。
江島だけでなく宮路も江島にならって金子を出している。
これもお静に渡してあった。
それでも豪華すぎる。それなりの金を使っているのは明白であったが、江島も宮路もそれくらいはしてもよかろうと思っていた。
「お静に預けた金子は間違いなく手代たちに渡っているものと信じて疑わなかった事に私の油断がありました。実際にはこの金子はビタ一文字手代たちは受け取っていなかったのです。そして明らかに予算を超えているであろう料理を見ておかしいと気がつく洞察力が私には欠けていました。全てはお静を信用しきってしまったからなのです」
演じられた項目は一般客には不評で、喜んでいるのは日頃めったに芝居小屋に足を踏み入れる機会ない大奥の女中たちだけであった。
芝居が終わると生島新五郎が妻のお良と江島の元に挨拶に訪れた。
お良の姉はお孝といい、その昔江島と仲の良かった幼馴染であった。
「お姉様にそっくりですね。ひと目でわかりましたよ」
江島も嬉しそうに話しかけた。
「お近づきのしるしに何か差し上げたいのですが」
江島はそう言ってあたりを見渡すが、町娘と違い財布や金子を持ち合わせていなかった。
大奥の御年寄ともなれば何事をするにも自身でする必要がないため、財布など持ち歩く事もなかったのである。
「あら、困った。どうしましょう」
江島がそうもらした横からお静が話しかける。
「それならば帯をおつかわしあそばせたらどうでございましょう」
「この帯を?」
「はい。江島様のお召しのものは今流行りの柄でございまして、町方の女性であれば誰もが羨む品物でございます。お良殿に贈られるにはうってつけと存じますよ」
江島は今江戸でどのようなものが流行しているのかよく知らなかったが、お良が喜ぶなら帯をやる事くらい何でもなかった。
「お静にそう言われて私は持ち合わせが何も無かったものあったが、江戸の流行りとはこういう物かと疑いもせず帯を手渡してしまった。その代わりにと生島新五郎から帯を手渡されたのだが、これが後々の問題になる事などまったく考えもしなかった。。今思えば愚かだと笑うしかない話ですが」
江島は自身の帯を無造作に解いて綺麗に折りたたみお良の膝元に置いた。
「もったいない。家宝と思い大切に致します」
お良がそれを受け取ると生島新五郎も自身の帯を解いて江島に渡した。
「お城に戻られるまでの紐代わりでございます。ご用がお済みになられたらお捨て下さいまし」
女中たちにどよめきが起こった。
「生島新五郎の帯なら宝物ですよ、江島様。いい記念になりましたね」
宮路がそういうと梅山が
「江島様、その新五郎の帯、私が黄金三枚で買いましょう」
などとふざけて言い始めたので、江島も「いいえ、黄金千金積まれても売りませんよ」と笑いながら返した。
江島たち一行は辛うじて門限に間に合った。
「七つまでに帰城するのは無理であろう」と判断した月光院があらかじめ門番に申し入れてくれていたのである。
「病人が出たため」と見え透いた嘘が難なく通り百人を超える大人数が門限外にそれぞれの部屋に帰り着けたのだ。
これまでも門限に遅れる事は天英院やその付き人たちにも見られていたが、その都度暗黙の了解ぎなされて表立ってのお咎めにならずに済んだのである。
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