野原に咲く花

１

　野原に一輪、名もない花が咲いていました。女の子がその花の側を通りかかりました。女の子は微笑みました。
「きれいな花だな」
女の子はしばらくその花を見ていました。
「疲れていることも忘れてしまう」
彼女は今日あったでき事を思い出していました。

　女の子は、学校の後お友達と遊んでいました。お友達が２人でヒソヒソ話しています。女の子は聞いてしまいました。
「あの子って、持っている服の数が少ないよね」
　彼女の家は裕福ではありませんでした。でも野原に咲いている花を見ていると、元気が出てきました。
「お金持ちじゃなくていいよね」
女の子はそう言って、立ち去りました。

　次に、フリーターのお兄さんがその花の側を通りかかりました。お兄さんも、また疲れていました。彼はファミリーレストランでウェイターとして働いていました。しかし彼は不器用なので注文取りの仕方が下手でした。今日もクレームが来たため、店長に怒られたのです。
「向いてないのかも」
お兄さんは、その花をじっと見つめました。
「嫌なことも忘れてしまうなぁ」
お兄さんはそう言って、立ち去りました。