御茶ノ水ランチ物語

平 昌綱

文字の大きさ
1 / 1

長年愛され続けるチャーシューメン

しおりを挟む
 新しい学年が始まり、僕は御茶ノ水キャンパスへ移ってきた。東京の中心で学ぶことができる興奮を感じながらも、僕の頭に浮かんでいたのは――ランチ。御茶ノ水には名店が軒を連ね、学生たちや社会人を満たす美味しいランチスポットが多い。この街で何を食べようかと考えるだけで心が踊る。

 そんな僕のランチ探訪の第一歩は、昔ながらの町中華『やまだ屋』だ。創業80年を誇る老舗で、多くの人に愛され続けている。古びた木製の看板、油で光る暖簾。店の雰囲気はまるで時代が止まっているかのようだ。扉を開けた瞬間、醤油ラーメンの香ばしい香りが鼻をくすぐり、僕たちを店内へと誘う。奥で鍋を振り続ける店主の姿が、店の歴史と誇りを物語っていた。

 「何にする?」友人がメニューを覗き込みながら、僕に聞いてくる。
 「俺はチャーシューメンと半チャーハンかな。定番で攻めたい。」
 「お前、ガッツリ行くな。俺もそれにするわ。」

 注文を済ませると、僕たちは空いているテーブルに座った。この店のルールはシンプルだ。さっと入って注文し、食べ終わったらすぐに席を立つ。そんな無駄のない回転が、この老舗を支えてきたのだろう。

 やがて、チャーシューメンと半チャーハンが運ばれてきた。丼の上にどっさりと乗った自家製チャーシュー。見るからに分厚く、箸で持ち上げると肉の重みがずしりと伝わる。「これ絶対うまいやつだな」と友人がニヤリと笑う。僕も早速スープを一口すすった。醤油の風味が優しく広がり、そこに肉の旨味が溶け込んでいる。チャーシューは口の中でほろりと崩れ、まるでスープと一体になって舌の上に広がる。

 「これ、やばいな……」
友人が呟くように言った。
 「だろ?」僕も頷く。

 続いてチャーハンを一口。しっとりとした米がほどよく炒められ、具材の風味が噛むたびに広がる。この水分多めのチャーハンがラーメンとの相性抜群だ。ラーメンをすすりながらチャーハンをかき込むと、まさに至福の瞬間が訪れた。

 「あー、午後の授業は絶対眠くなるな。」
 「でも、もう一回ここ来たいって思うだろ?」
 「間違いない。」

 食べ終わる頃には、店はさらに賑わいを見せ、空席を待つ人々が店先に並んでいた。僕たちはその雰囲気を背に、店を後にする。腹も心も満たされて、次の授業もなんだか頑張れそうな気がした。

 こうして、僕の御茶ノ水ランチ探訪は始まった。『やまだ屋』のチャーシューメンは、きっとこれからも僕を何度も迎え入れてくれるだろう。そして、この街での新しい生活に小さな楽しみがまた一つ加わったのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...