1 / 1
読む映画
しおりを挟む東京・練馬。で働いていた友康(三十七歳)。失業する。田舎では年老いた父親が神主をやっていて早く帰って来いと言っている。友康の女房と娘の彩香(中学二年)も父親と暮らしている。
友康は父親が嫌いだっ た。・・・ガキの頃から彼が好きなものを片っ端から奪い取る人間だった。・・・高校を卒業すると神主の道へ進むよう強要された。その頃の友康はまだ、父親 が恐くて逆らえなかった。彼は若くして結婚し、子どももできた。が、父親が嫌いで飛び出して東京で就職する。妻子に仕送りを続けた。
どうしても新しい仕事が見つからない友康。どんどん追い込まれていく。・・・バイトしかない。一日十時間働いても一万円に満たなかった。
そんな折、郷里(岐阜) から父親が死んだと連絡が来る。葬儀に出て久しぶりに、妻子や知り合いの神主たちに会った。父親は持病の喘息で死んだと言う。皆、友康に親の後を継ぐよう 勧める。・・・友康は、わだかまりやプライドがあって悩む。とりあえず、暫く実家で妻子と共に過す。
ある日、彩香が部活(テ ニス)の帰りに犬を拾ってきて、飼っていいかと尋ねる。友康は金の心配で頭がいっぱいなのでダメだと言う。娘は犬に既にトチと名前までつけてあったのだ が、泣く泣く捨てに行く。自転車で、遠くまで行く。が、トチは遊んでもらっているつもりらしい。置き去りにしてきても帰ってくる。友康は激怒する。
練馬からアパートを立ち退いてくれと連絡が来る。引越しをする金もない。岐阜で職探しをするが見つかるはずもなかった。バイトの面接に行くと時給が練馬よりも更に安かった。
地鎮祭の依頼の電話が入る。友康、受ける。妻と共に現場へ出かける。建築業者や施主に挨拶しつつ、準備を進める。間違いを指摘されてアプセットする。仕事を失ってはと必死にやる。無事、終えホッとする。・・・帰りがけ気になって初穂料の袋を開けてみる。一万円入っている。
家に帰り、父親のスケジュールをチェックする友康。土日以外にはほとんど仕事がない。年末のところに二百二十四万円と書いてある。
しばしば喘息で苦しんでいた父親を思い出す。
本屋でバイトをしている友康。持病で手が震え、必死に隠す。夜十時で終わったと思ったら後片づけをやらされる。持病で苦しいのを悟られまいとする。後片付けは三十分かかったが、その分の時給は出ないといわれる。ブチきれて辞めてしまう。
一方、彩香はどうやってトチを捨ててこようかと悩んでいた。彼女は既に強くトチに感情移入しており、悲しくて突き放せないでいた。綾香は友康がどうして犬を飼ってはいけないと怒るのか分からなかったが友康にずっと家にいて欲しいので言うこうとを聞こうと思った。
友康としては実のところ、面倒を背負い込みたくなかっただけだった。犬は猫と違って面倒が掛かる。ペットであるが家族に近い。責任のようなものを増やしたくない。ただ、それだけだった。
友康のところへ練馬の会 社にいた同僚(鹿室)から知らせが入る・・・一緒に仕事を始めないか?・・・個人契約で商品を扱っていると言う。鹿室は友康のかつての先輩だった。友康が 上司と喧嘩したとき巻き添えを食って一緒に解雇されてしまった。友康は鹿室の誘いは断りにくかった。友康は東京へ行き、一日、一緒に営業をしてみる。客の 反応は良い。鹿室は、
「奥さんと別れて、こっちで一人でやったほうが良くないか?」
と勧める。心が揺れる友康。体が元気だったころに付き合っていた彼女(紘子)に連絡を取る。
奥さんのほうは悪い業者に騙されかけていた。
「神社の土地を売ってマンションを・・・そうすればリベートが・・・」
その実、後でそれを暴露して神社から追放してしまおうと言う魂胆だ。
東京から帰ってくる友康。奥さんに、どうやって切り出そうかと思っている。が、ふとしたきっかけから彼女が騙されかけているのに気がつく。血相を変える友康。相手のところへ怒鳴り込んで止めさせる。
「そんなに金が欲しいのか?」「だって、生活が・・・」
友康のところに、地元(岐阜)の、ある有力神社から助勤の依頼が来る。父親が年に何度も使ってもらっていた、言わばお得意さんだ。
宮司も他の神主も総代も厳しい。友康は数日前から家で練習をする。一挙手一投足、父親の本を見、また昔を思い出しつつ。
友康は昔のことを思い出す。ガキの頃、親父に連れられて良く、近所の川へ釣りへ言ったもんだった。が、景気がよくなって金ができると、親父は車を買って若い女のところへ不倫しに。オレはゲームを買ってもらって部屋へ閉じこもりきり。金ができると元へ戻れなくなっちまう。
鹿室が突然、訪ねてくる。いい業者とタイアップして仕事が軌道に乗ったと。鹿室は東京じゃ女の神主も多いとかほのめかす。つまり、女房に神主やらせて友康 は東京に戻ってこいよと。いい業者と言うのはかつての友康のお得意さんだった。鹿室はどうしても友康を引き入れたかった。
鹿室が返った後、奥さんと綾香に、翌日どうしても東京へ行かないといけないと告げる。二人は悲しそうな顔をする。
部活へ出かける彩香。トチがついてくる。
「ついてきちゃダメ。」
ラケットを振り回すとトチの鼻面に当たる。
「ギャワン!」
トチ、立ち止まる。自転車をこぎつつ後ろを振り向く彩香。トチの目に涙がたまっているように見える。出掛けにその様子を見ている友康。
東京へ行くと鹿室と紘子が待っていた。友康は鹿室に紘子を取られたかと思って不機嫌になる。そして、どうしても取り返したくなる。もちろんそれは鹿室の作戦だった。こうして友康のジェラシーを掻き立て紘子とよりを戻させて田舎へ帰らなくさせようという・・・。
かつてのお得意さんは友康をみると喜んで工場を案内した。友康は自分が納入した機械の不具合をたちどころに直した。お得意さんは非常に喜んだ。
友康は勢いずいていい気になった。それでまんまと鹿室の作戦に嵌ってしまい、紘子を口説きにかかる。
しかし、紘子を抱く寸前になって急に親父のことを思い出す。「これでは親父と同じじゃないか!」
友康は自分が父親が嫌いなだけで家族も自分の人生もぶち壊していた愚かさに気がつく。
うなだれ・・・紘子に謝って一人ホテルを去る。
田舎へ帰る新幹線の中で鹿室に電話し、「神主の仕事は土日がほとんどですから・・・平日は鹿室さんの仕事を手伝えます。」と伝える。
神社は祭礼の日となった。・・・。百人を超える礼服のお偉いさんたちが集まってきている。地元小学校の代表で綾香も来ている。食事のお手伝い係りで奥さんも来ている。
祭りの準備をしている神主たち。友康、準備に関しては予習ができなかったので、分からないことも多い。
ふと見ると綾香がトチと遊んでいる。(実際はトチの鼻に薬を塗っていた。)友康は「犬を神社に入れちゃ駄目じゃないか!」と強くしかる。綾香はそれを”犬 を飼っちゃ駄目じゃないか”と言う意味に受け取り、「お前を飼っちゃ駄目なんだって。ごめんね。もう、来ないでほかの人に飼ってもらって。」と言う。トチ はそれが分かったみたいで悲しげに見えた。
友康は犬の件も含め、総代にしかられ、目をつけられる。
張り詰めた緊張感の中で 祭事が始まる。ちょっとでも間違えたら二度と使ってもらえない。友康の想定と違う動きをする隣の神主。(な、なんだ?ここで、この動き?俺が何か忘れてい るのか?)焦って目が白黒する。友康、ギリギリのところで綾香が目配せしているのに気がつく。それで自分のすべき所作を思い出す。昨日、東京へ行ったりし てハードスケジュールだったので病気が出て苦しくなる。綾香も奥さんも見ていてそれが分かる。必死でがんばる。
祭礼が終わる。何とか、間違いをせずやりぬいたと思う友康。
宴会の席に出ようとすると総代に呼び出される。
「あんたは二箇所も間違えた。」
帰ってくれと言われる。ガックリうなだれ帰る友康。
車に乗ろうとするところで巫女が駆けて来る。
再び宴会の席へ案内される友康。宮司がご機嫌で皆に紹介してくれる。今後ともこの人を皆さんよろしくと。奥さんと目が合い、微笑みあう友康。
その後、宮司室に呼び出される。
「二箇所ばかり間違えたようだが・・・(急に笑う)少し、脅かしすぎたかな。いつも完璧な人なんかいないよ。よく勉強してきたな。」
初穂料をもらう。見ると 二万円 と書いてある。
「こ、こんなに頂いて良いのですか・・?」
「もっと少ないほうがいいか?」宮司は笑って答える。
大喜びをする友康。神社を出ると、すぐ彩香に携帯で連絡する。
「犬小屋を買いにいこう。」
彩香は家に帰る途中だった。家に着くとトチを呼ぶ。が、どこにもいない。母親に聞くと、そう言えばさっきから見てないと言う。
トチを捜す綾香。いない。トチは捨てられたと感じてどこかへ行ってしまった・・・
彩香、トチを最初に見つけた木曽川の堤防へ急ぐ。
堤防へ着く。
「トチーッ!」
一生懸命叫ぶ。でも、トチの姿は見当たらない。そこへ友康が車でやってくる。
「もっと、上かもしれない。」
車でどんどん上流へ向かう。彩香は窓からトチの名を叫び続ける。随分、遠くまで来る。
「ダメだ。・・・いない・・・。」
半ば諦めつつも更に先へ進む。友康は内心、済まなかったと思う。彩香はトチを呼んでいる。と、遠くに見つける。堤防の道をトチがとことこ走っているではないか!
「トチーッ!」
車を飛び降りて駆ける彩香。トチ、立ち止まり、振り返る。彩香に気がつき喜んで駆けて来る。彩香、トチを抱きしめる。
「ゴメン・・・よかったね。飼ってもいいって。」
それを見つめる友康。なぜか泣けてくる。家族を失わなくて良かったと感じている。
終わり
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
雪嶺後宮と、狼王の花嫁
由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。
巫女として献上された少女セツナは、
封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。
人と妖、政と信仰の狭間で、
彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。
雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる