Nobody is Perfect 犬は家族

KIDOLOHKEN

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東京・練馬。で働いていた友康(三十七歳)。失業する。田舎では年老いた父親が神主をやっていて早く帰って来いと言っている。友康の女房と娘の彩香(中学二年)も父親と暮らしている。
友康は父親が嫌いだっ た。・・・ガキの頃から彼が好きなものを片っ端から奪い取る人間だった。・・・高校を卒業すると神主の道へ進むよう強要された。その頃の友康はまだ、父親 が恐くて逆らえなかった。彼は若くして結婚し、子どももできた。が、父親が嫌いで飛び出して東京で就職する。妻子に仕送りを続けた。
 
どうしても新しい仕事が見つからない友康。どんどん追い込まれていく。・・・バイトしかない。一日十時間働いても一万円に満たなかった。
 
そんな折、郷里(岐阜) から父親が死んだと連絡が来る。葬儀に出て久しぶりに、妻子や知り合いの神主たちに会った。父親は持病の喘息で死んだと言う。皆、友康に親の後を継ぐよう 勧める。・・・友康は、わだかまりやプライドがあって悩む。とりあえず、暫く実家で妻子と共に過す。
ある日、彩香が部活(テ ニス)の帰りに犬を拾ってきて、飼っていいかと尋ねる。友康は金の心配で頭がいっぱいなのでダメだと言う。娘は犬に既にトチと名前までつけてあったのだ が、泣く泣く捨てに行く。自転車で、遠くまで行く。が、トチは遊んでもらっているつもりらしい。置き去りにしてきても帰ってくる。友康は激怒する。
 
練馬からアパートを立ち退いてくれと連絡が来る。引越しをする金もない。岐阜で職探しをするが見つかるはずもなかった。バイトの面接に行くと時給が練馬よりも更に安かった。
 
地鎮祭の依頼の電話が入る。友康、受ける。妻と共に現場へ出かける。建築業者や施主に挨拶しつつ、準備を進める。間違いを指摘されてアプセットする。仕事を失ってはと必死にやる。無事、終えホッとする。・・・帰りがけ気になって初穂料の袋を開けてみる。一万円入っている。
家に帰り、父親のスケジュールをチェックする友康。土日以外にはほとんど仕事がない。年末のところに二百二十四万円と書いてある。
しばしば喘息で苦しんでいた父親を思い出す。
 
本屋でバイトをしている友康。持病で手が震え、必死に隠す。夜十時で終わったと思ったら後片づけをやらされる。持病で苦しいのを悟られまいとする。後片付けは三十分かかったが、その分の時給は出ないといわれる。ブチきれて辞めてしまう。
 
一方、彩香はどうやってトチを捨ててこようかと悩んでいた。彼女は既に強くトチに感情移入しており、悲しくて突き放せないでいた。綾香は友康がどうして犬を飼ってはいけないと怒るのか分からなかったが友康にずっと家にいて欲しいので言うこうとを聞こうと思った。
友康としては実のところ、面倒を背負い込みたくなかっただけだった。犬は猫と違って面倒が掛かる。ペットであるが家族に近い。責任のようなものを増やしたくない。ただ、それだけだった。
 
友康のところへ練馬の会 社にいた同僚(鹿室)から知らせが入る・・・一緒に仕事を始めないか?・・・個人契約で商品を扱っていると言う。鹿室は友康のかつての先輩だった。友康が 上司と喧嘩したとき巻き添えを食って一緒に解雇されてしまった。友康は鹿室の誘いは断りにくかった。友康は東京へ行き、一日、一緒に営業をしてみる。客の 反応は良い。鹿室は、
「奥さんと別れて、こっちで一人でやったほうが良くないか?」
と勧める。心が揺れる友康。体が元気だったころに付き合っていた彼女(紘子)に連絡を取る。
 
奥さんのほうは悪い業者に騙されかけていた。
「神社の土地を売ってマンションを・・・そうすればリベートが・・・」
その実、後でそれを暴露して神社から追放してしまおうと言う魂胆だ。
東京から帰ってくる友康。奥さんに、どうやって切り出そうかと思っている。が、ふとしたきっかけから彼女が騙されかけているのに気がつく。血相を変える友康。相手のところへ怒鳴り込んで止めさせる。
「そんなに金が欲しいのか?」「だって、生活が・・・」
 
友康のところに、地元(岐阜)の、ある有力神社から助勤の依頼が来る。父親が年に何度も使ってもらっていた、言わばお得意さんだ。
宮司も他の神主も総代も厳しい。友康は数日前から家で練習をする。一挙手一投足、父親の本を見、また昔を思い出しつつ。
 
友康は昔のことを思い出す。ガキの頃、親父に連れられて良く、近所の川へ釣りへ言ったもんだった。が、景気がよくなって金ができると、親父は車を買って若い女のところへ不倫しに。オレはゲームを買ってもらって部屋へ閉じこもりきり。金ができると元へ戻れなくなっちまう。


鹿室が突然、訪ねてくる。いい業者とタイアップして仕事が軌道に乗ったと。鹿室は東京じゃ女の神主も多いとかほのめかす。つまり、女房に神主やらせて友康 は東京に戻ってこいよと。いい業者と言うのはかつての友康のお得意さんだった。鹿室はどうしても友康を引き入れたかった。
鹿室が返った後、奥さんと綾香に、翌日どうしても東京へ行かないといけないと告げる。二人は悲しそうな顔をする。

部活へ出かける彩香。トチがついてくる。
「ついてきちゃダメ。」
ラケットを振り回すとトチの鼻面に当たる。
「ギャワン!」
トチ、立ち止まる。自転車をこぎつつ後ろを振り向く彩香。トチの目に涙がたまっているように見える。出掛けにその様子を見ている友康。

東京へ行くと鹿室と紘子が待っていた。友康は鹿室に紘子を取られたかと思って不機嫌になる。そして、どうしても取り返したくなる。もちろんそれは鹿室の作戦だった。こうして友康のジェラシーを掻き立て紘子とよりを戻させて田舎へ帰らなくさせようという・・・。
かつてのお得意さんは友康をみると喜んで工場を案内した。友康は自分が納入した機械の不具合をたちどころに直した。お得意さんは非常に喜んだ。
友康は勢いずいていい気になった。それでまんまと鹿室の作戦に嵌ってしまい、紘子を口説きにかかる。
しかし、紘子を抱く寸前になって急に親父のことを思い出す。「これでは親父と同じじゃないか!」
友康は自分が父親が嫌いなだけで家族も自分の人生もぶち壊していた愚かさに気がつく。
うなだれ・・・紘子に謝って一人ホテルを去る。

田舎へ帰る新幹線の中で鹿室に電話し、「神主の仕事は土日がほとんどですから・・・平日は鹿室さんの仕事を手伝えます。」と伝える。

 
神社は祭礼の日となった。・・・。百人を超える礼服のお偉いさんたちが集まってきている。地元小学校の代表で綾香も来ている。食事のお手伝い係りで奥さんも来ている。
祭りの準備をしている神主たち。友康、準備に関しては予習ができなかったので、分からないことも多い。
ふと見ると綾香がトチと遊んでいる。(実際はトチの鼻に薬を塗っていた。)友康は「犬を神社に入れちゃ駄目じゃないか!」と強くしかる。綾香はそれを”犬 を飼っちゃ駄目じゃないか”と言う意味に受け取り、「お前を飼っちゃ駄目なんだって。ごめんね。もう、来ないでほかの人に飼ってもらって。」と言う。トチ はそれが分かったみたいで悲しげに見えた。

友康は犬の件も含め、総代にしかられ、目をつけられる。
張り詰めた緊張感の中で 祭事が始まる。ちょっとでも間違えたら二度と使ってもらえない。友康の想定と違う動きをする隣の神主。(な、なんだ?ここで、この動き?俺が何か忘れてい るのか?)焦って目が白黒する。友康、ギリギリのところで綾香が目配せしているのに気がつく。それで自分のすべき所作を思い出す。昨日、東京へ行ったりし てハードスケジュールだったので病気が出て苦しくなる。綾香も奥さんも見ていてそれが分かる。必死でがんばる。
祭礼が終わる。何とか、間違いをせずやりぬいたと思う友康。
宴会の席に出ようとすると総代に呼び出される。
「あんたは二箇所も間違えた。」
帰ってくれと言われる。ガックリうなだれ帰る友康。
車に乗ろうとするところで巫女が駆けて来る。
再び宴会の席へ案内される友康。宮司がご機嫌で皆に紹介してくれる。今後ともこの人を皆さんよろしくと。奥さんと目が合い、微笑みあう友康。
その後、宮司室に呼び出される。
「二箇所ばかり間違えたようだが・・・(急に笑う)少し、脅かしすぎたかな。いつも完璧な人なんかいないよ。よく勉強してきたな。」
初穂料をもらう。見ると 二万円 と書いてある。
「こ、こんなに頂いて良いのですか・・?」
「もっと少ないほうがいいか?」宮司は笑って答える。
大喜びをする友康。神社を出ると、すぐ彩香に携帯で連絡する。
「犬小屋を買いにいこう。」
 
彩香は家に帰る途中だった。家に着くとトチを呼ぶ。が、どこにもいない。母親に聞くと、そう言えばさっきから見てないと言う。
トチを捜す綾香。いない。トチは捨てられたと感じてどこかへ行ってしまった・・・
彩香、トチを最初に見つけた木曽川の堤防へ急ぐ。
堤防へ着く。
「トチーッ!」
一生懸命叫ぶ。でも、トチの姿は見当たらない。そこへ友康が車でやってくる。
「もっと、上かもしれない。」
車でどんどん上流へ向かう。彩香は窓からトチの名を叫び続ける。随分、遠くまで来る。
「ダメだ。・・・いない・・・。」
半ば諦めつつも更に先へ進む。友康は内心、済まなかったと思う。彩香はトチを呼んでいる。と、遠くに見つける。堤防の道をトチがとことこ走っているではないか!
「トチーッ!」
車を飛び降りて駆ける彩香。トチ、立ち止まり、振り返る。彩香に気がつき喜んで駆けて来る。彩香、トチを抱きしめる。
「ゴメン・・・よかったね。飼ってもいいって。」
それを見つめる友康。なぜか泣けてくる。家族を失わなくて良かったと感じている。 


                                       終わり

  
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