30 / 217
2章 クレイジースキル
マスターと…
「う……ん?」
気が付くと、最近見慣れてしまった天井を見上げていた。ここは俺の為に用意して貰った部屋で間違い無いだろう。
天井だけで分かるほどの馬鹿でかい部屋だ。
……どうやら、いつのまにか寝てしまっていたらしい。
恐らく、アリアンさんが俺に投げられた短剣を素手で掴み取った後、直ぐに脳内に鳴り響いていた音声が消えた。それで安心した俺はそのまま寝てしまったんだと思う。
……な、なんか必死だったからあの時は何も思わなかったけど、とんでもない人に一生返せない様な借りを作ってしまった気がするんだが……まぁとりあえず、今度会ったら礼は言っておかないとな。
それよりも、だ……今の状況を整理しないとな──
「……何で膝枕してんの?」
俺は天井の次に映し出されたアルマスを見てそう言った。後頭部には柔らかい感触もある。
どういった心境でこうして居るのかは判らないんだけど?そして俺の問いに対してアルマスこう答えた。
「サービスです」
「おれそう言われて金取られた事あるぜ?」
「じゃあ5万で」
「たけぇ……」
「………」
「………」
やり取りが全く続かない。
なんでそんな深刻な顔してるんだこのおバカロボットは……
アルマスは膝枕をしながら一定のリズムで俺の頭を撫でている。
すごい恥ずかしいんだけど、体はまだキツイし、あまりに心地良くて何も言わずにされるがままだ。
俺がそんな風にボーッとしながら無抵抗で居るとアルマスが声を掛けてきた。
「ごめんなさい……マスター……」
「お前寝てる間に何しやがった?」
「私だって素直に謝りたい時があるのですよ?」
「普段の自分を見てみな」
それでもアルマスはそれ以上は突っ込んで来ずに、謝罪の訳を語り始めた。
「貴方は死んでいました……あの短剣による投擲は、私では対処のしようがありませんでした」
俺は黙ってアルマスの話を聞く。態度がどうみても真剣だったから、彼女に合わせるように俺も真剣になる。
悲しそうな表情で話す彼女に気もするな、と。そう言いたかったが、話を最後まで聞くとしよう。
「アリアンさんはあの後、直ぐに敵の元へと向かい、1分足らずで討伐し戻ってまいりました」
「助けてくれただけじゃなくて倒したのか……やっぱり強いわあの人」
……………てか1分って言ったか!?どんだけすごいんだよあの人……いや、敵が弱かったとか無いよね?もしそうだったら俺ってザコに追い詰められた事になっちゃうけど?
「はい。ですのでマスターが生きているのはアリアンさんと……自らの幸運のおかげです」
私は居なくても大丈夫でしたよと、そう言っている様にも聴こえた。
実際にアリアンさんに出会うまでの道を選んだのは勘に任せた自分だし、敵を退けたのはアリアンさんだが。
「私には結局、主を救うことなんて出来ないのですよ」
「別に大丈夫だったから良いじゃん?」
「………」
アルマスに返事は無い。
だが、こいつは何か勘違いをしているようなので、俺は畳み掛ける様に言葉を続ける。
「それにぶっちゃけた話、アルマスは最後までずっと俺の為に警戒してくれてたし、励ましたりもしてくれただろう?──戦いなんて強い人達に任せておけばいいんだし、アルマスは出来る範囲で最高の手助けをしてくれたと思うよ?」
俺が真剣にそう言うと、アルマスも悲しげだった表情を真剣なものへと変え聞いてくれる。
「ていうか、あれだけ凄いスキル見せられた後に、そんな悲観的な事言われても説得力無いぞ?これからマジでアルマス頼みで行くつもりだから、頼むぜ?」
これからアルマスは俺を養って行かなければならない……この事は是非忘れないで頂きたい。
「それに考えても見ろよ?なんだかんだ俺たちって今日出会ったばっかりなんだぜ?そこまで気にする様な間柄でも無いだろう?」
そうだ、戦いが始まってからアルマスの態度が尋常じゃない気がする。
いや、アルマスとしては俺が死んだら消滅してしまうのだろうか?……そうなら必死になるのもわかるな。
「そうですね………貴方にとってはそうなのでしょうね」
「どういう事だ?」
「何でもありませんマスター……今は夜のパーティーに備えてゆっくりとお休みなさい」
そう言ってアルマスは、俺の体を自身の胸元まで引っ張り、抱き枕を抱く様な感じになった。
流石に抵抗したが、結構な力だったので早々に諦めた……なにこいつオカンっぽい感じになってんの?
「……目が覚めたらいつもと同じ調子で頼むぜ?」
いつもと同じと言っても、今日出会ったばっかりなんだよなアルマスとは。
なのに何故か長いこと言い合いをしてきた様な感じがする……まぁそう思うくらいに浅くて濃い会話をして来たからな。
「今のおま……アルマスと話をしていても、真面目過ぎてあんまり面白くないぜ?」
「……はい」
俺の言葉を聞いて、アルマスは嬉しそうな表情で返事を返してくれた。
他にも色々言いたい事はあったが睡魔に負けてしまった俺は、そのままアルマスの胸の中で深い眠りに就くのだった。
「ふふ……本当に変わらないですね」
完全に眠りに落ちてしまった孝志に、アルマスの呟きの言葉など当然聴こえて居なかった……
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
見るだけの簡単なお仕事
浜柔
ファンタジー
「オレ」は気付くと勇者召喚の現場に居た。
だが召喚されたはずの勇者はそこに居らず、巻き込まれてここに居る「オレ」はどうやら「平民」に憑依したらしい。
そしてあろうことか「平民」が現れなかった勇者の身代わりにさせられた。
「勇者」にされた「平民」は身バレを防ぐためとして召喚の責任者のお姫様に旅に連れ出された。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。