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好機の目にさらされること半月。
残業で遅くなったしまった帰路で私は二人に出くわした。彼は目をそらし、彼女は私を見据えた。
結果がわかっている上に、誠意のかけらもない男に時間を割くのは憂鬱で仕方なかった。
でも、その瞬間『今だ』と誰か言われた気がした。
私は、彼女に目もくれず、彼から目を逸らさず
「隼人。最低限の礼を尽くす気もないの?」
彼に尋ねた。二人の前に立ちはだかった私に彼は目を逸らしたままだった。
彼女は彼にぴったりと寄り添い、彼のスラックスのポケットのあたりをつかんでいた。
少しの沈黙が三人の間に流れた。破ったのは彼女。
「元カノさんですよね。もう、終わっているのにこういうことされるのは、ちょっと。社会人としてどうなんですか?」
社会人一年目の彼女に社会人としての態度を窘められた。
この子は上手い。私と彼の関係は職場のたいていの人は知っている周知の事実だったが、知っていて彼と関係をもったとすれば、彼がたとえ彼女を選んだとしても完全無欠のヒロインにはなれない。でも、知らなくて彼と今に至るなら彼女はマイナスからのスタートは随分少なくなる。
さらに彼から既に別れたと聞かされていれば私にもこの強気で出られるのだ。
私ができることは何だろう。
考えながら彼を見据えた。
彼は相変わらず目を合わせない。二人の沈黙にいら立った彼女が
「こんな風に帰り道の待ち伏せや職場での、嫌がらせやめてください。これ以上されるようなら、会社にも伝えます。」
待ち伏せなどしたことない。
今日だって偶然二人と出くわしたのだ。
まちぶせはおろか電話すらできなかったのに。
彼がそんなふうに話しているのか、彼女の認識は理解できない。
いつの間にか彼より一歩前に出ていた彼女は興奮気味に話した。私はそれでも彼女を見ることはなく、彼だけをみて
「何も言わないってことは、隼人の認識も同じと思っていいのね。」
と抑揚のない声を彼だけに向ける。
それでも、彼は私をみない。なんて情けない恋愛をしたのだろう。
こんなことなら、本気じゃなかった。遊びだったとでも笑われるほうがましだった。
「わかりました。二度と仕事以外で私に話かけないでください。」
そう言い残し、情けなさでいっぱいになりながら二人の横を通り過ぎ家路についた。
彼女の私への声とそれを止める彼の声が聞こえたが振り返らなかった。
別れの言葉ももらえなかったが私の恋は終わった。
家まではなんとか耐えたがお風呂場で一人泣いた。
親にもばれないように一人流れるシャワーの下で泣いた。
残業で遅くなったしまった帰路で私は二人に出くわした。彼は目をそらし、彼女は私を見据えた。
結果がわかっている上に、誠意のかけらもない男に時間を割くのは憂鬱で仕方なかった。
でも、その瞬間『今だ』と誰か言われた気がした。
私は、彼女に目もくれず、彼から目を逸らさず
「隼人。最低限の礼を尽くす気もないの?」
彼に尋ねた。二人の前に立ちはだかった私に彼は目を逸らしたままだった。
彼女は彼にぴったりと寄り添い、彼のスラックスのポケットのあたりをつかんでいた。
少しの沈黙が三人の間に流れた。破ったのは彼女。
「元カノさんですよね。もう、終わっているのにこういうことされるのは、ちょっと。社会人としてどうなんですか?」
社会人一年目の彼女に社会人としての態度を窘められた。
この子は上手い。私と彼の関係は職場のたいていの人は知っている周知の事実だったが、知っていて彼と関係をもったとすれば、彼がたとえ彼女を選んだとしても完全無欠のヒロインにはなれない。でも、知らなくて彼と今に至るなら彼女はマイナスからのスタートは随分少なくなる。
さらに彼から既に別れたと聞かされていれば私にもこの強気で出られるのだ。
私ができることは何だろう。
考えながら彼を見据えた。
彼は相変わらず目を合わせない。二人の沈黙にいら立った彼女が
「こんな風に帰り道の待ち伏せや職場での、嫌がらせやめてください。これ以上されるようなら、会社にも伝えます。」
待ち伏せなどしたことない。
今日だって偶然二人と出くわしたのだ。
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彼がそんなふうに話しているのか、彼女の認識は理解できない。
いつの間にか彼より一歩前に出ていた彼女は興奮気味に話した。私はそれでも彼女を見ることはなく、彼だけをみて
「何も言わないってことは、隼人の認識も同じと思っていいのね。」
と抑揚のない声を彼だけに向ける。
それでも、彼は私をみない。なんて情けない恋愛をしたのだろう。
こんなことなら、本気じゃなかった。遊びだったとでも笑われるほうがましだった。
「わかりました。二度と仕事以外で私に話かけないでください。」
そう言い残し、情けなさでいっぱいになりながら二人の横を通り過ぎ家路についた。
彼女の私への声とそれを止める彼の声が聞こえたが振り返らなかった。
別れの言葉ももらえなかったが私の恋は終わった。
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親にもばれないように一人流れるシャワーの下で泣いた。
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