30 / 63
30
「私も後悔しています。」
そう告げると、掴む手の力は緩んだ。そのすきに彼の腕から逃れ距離をとった。
「あなたと一時でも付き合ったこと。今はとっても後悔しています。何があろうと仕事以外では二度と話しかけないでください。あなたにもあなたの家族にも絶対に関わり合いになりたくないから。」
そう言って、走ってその場から去った。
席に戻り掴まれた腕をさすりながら怒りがこみ上げてきた。何のつもりなのか腹立たしくてすぐに帰りたかったが仕事が残っているので帰れず悶々としながら仕事を片付け家路を急いだ。
あんな人のために私は何年もなぜ立ち止まっていたのだろう。腕を掴まれたときの空気と四年前の別れの言葉すら言ってもらえず一人声を殺してお風呂で泣いた空気とその時の気持ちと温度といろんなことを思い出して腹が立って仕方がなかった。
苦しくて焦がれてすがりたい。そんな愛情は彼に対して持っていたかどうかもはやわからない。だったらいったい私は何に引っかかっていのだろう。
どうして四年も立ち止まったままなのだろう。部屋に帰り一つずつ自分の気持ちを読み解いていく。これまで逃げ出したくてわざと見ないふりをしていたその気持ちを。
「私は何が辛かったのか。」「なんでこんなに引っかかっているのか。」次々と自問自答をする。彼のことを狂おしいほどに愛していたかと自分に問えばわからない。好ましいところはいくつもあってその多くが自分の望んだタイミングで訪れて、「いいんじゃない。」が「いいな。」に変わっていったそんな想いだった。だから映画でみたようなただ一つの想いかと考えたら違うんだと容易に自分の気持ちを理解できた。
だったら私は何に傷ついたのか。それは彼を失ったことじゃない。私は選ばれなかったことに傷ついた。情熱で後先考えずに選んだ相手ではなく、言い寄れて将来やその時の状況に打算して選んだ相手に選ばれず、いとも簡単に残酷に捨てられてしまったこと。職場にまで関係を公にしながらも、同じ職場の後輩に乗り換えられ、別れの言葉さえももらえないどころか、濡れ衣を着せられて好奇の目で見られながらそれでもなお私を思いやることなど皆無のそんな扱いしかされなかったあの関係に傷ついたのだ。
若くかわいらしい女の子に男をとられたみじめな女。四年間も私はそのポジションに座り続けてきた。自分に女としての価値などない。そう思い知らされた気がした。恋愛至上主義では決してなかったがそれなりに楽しむ程度の自信はあったはずなのに。
あの時自分に足りないものばかりを探して、自分で自分を戒めるように手放して、ないものねだりをしながらそれをひた隠しにして傷ついて。自分で自分を貶めたのかもしれないなと深いため息をついた。
そこまで自分の気持ちをさらせば帰ってくる答えは「自業自得」そんな響きだった。自分ばかりが可愛くて選択したのは自分なのに。そんな自分だからの答えのような気がした。
今なら、そこから離れられるかも。私自身の根本が変わったわけではないけれど、変われる気がした。それは紛れもなく、今、三島さんを思う気持ちと恋に浮かれているからだけど。できる気がした。今の自分に。どうしようもなく膨らんでいく三島さんへの恋心に私は期待した。
そう告げると、掴む手の力は緩んだ。そのすきに彼の腕から逃れ距離をとった。
「あなたと一時でも付き合ったこと。今はとっても後悔しています。何があろうと仕事以外では二度と話しかけないでください。あなたにもあなたの家族にも絶対に関わり合いになりたくないから。」
そう言って、走ってその場から去った。
席に戻り掴まれた腕をさすりながら怒りがこみ上げてきた。何のつもりなのか腹立たしくてすぐに帰りたかったが仕事が残っているので帰れず悶々としながら仕事を片付け家路を急いだ。
あんな人のために私は何年もなぜ立ち止まっていたのだろう。腕を掴まれたときの空気と四年前の別れの言葉すら言ってもらえず一人声を殺してお風呂で泣いた空気とその時の気持ちと温度といろんなことを思い出して腹が立って仕方がなかった。
苦しくて焦がれてすがりたい。そんな愛情は彼に対して持っていたかどうかもはやわからない。だったらいったい私は何に引っかかっていのだろう。
どうして四年も立ち止まったままなのだろう。部屋に帰り一つずつ自分の気持ちを読み解いていく。これまで逃げ出したくてわざと見ないふりをしていたその気持ちを。
「私は何が辛かったのか。」「なんでこんなに引っかかっているのか。」次々と自問自答をする。彼のことを狂おしいほどに愛していたかと自分に問えばわからない。好ましいところはいくつもあってその多くが自分の望んだタイミングで訪れて、「いいんじゃない。」が「いいな。」に変わっていったそんな想いだった。だから映画でみたようなただ一つの想いかと考えたら違うんだと容易に自分の気持ちを理解できた。
だったら私は何に傷ついたのか。それは彼を失ったことじゃない。私は選ばれなかったことに傷ついた。情熱で後先考えずに選んだ相手ではなく、言い寄れて将来やその時の状況に打算して選んだ相手に選ばれず、いとも簡単に残酷に捨てられてしまったこと。職場にまで関係を公にしながらも、同じ職場の後輩に乗り換えられ、別れの言葉さえももらえないどころか、濡れ衣を着せられて好奇の目で見られながらそれでもなお私を思いやることなど皆無のそんな扱いしかされなかったあの関係に傷ついたのだ。
若くかわいらしい女の子に男をとられたみじめな女。四年間も私はそのポジションに座り続けてきた。自分に女としての価値などない。そう思い知らされた気がした。恋愛至上主義では決してなかったがそれなりに楽しむ程度の自信はあったはずなのに。
あの時自分に足りないものばかりを探して、自分で自分を戒めるように手放して、ないものねだりをしながらそれをひた隠しにして傷ついて。自分で自分を貶めたのかもしれないなと深いため息をついた。
そこまで自分の気持ちをさらせば帰ってくる答えは「自業自得」そんな響きだった。自分ばかりが可愛くて選択したのは自分なのに。そんな自分だからの答えのような気がした。
今なら、そこから離れられるかも。私自身の根本が変わったわけではないけれど、変われる気がした。それは紛れもなく、今、三島さんを思う気持ちと恋に浮かれているからだけど。できる気がした。今の自分に。どうしようもなく膨らんでいく三島さんへの恋心に私は期待した。
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。