精一杯のエゴイスト

宮内

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「私も後悔しています。」
そう告げると、掴む手の力は緩んだ。そのすきに彼の腕から逃れ距離をとった。
「あなたと一時でも付き合ったこと。今はとっても後悔しています。何があろうと仕事以外では二度と話しかけないでください。あなたにもあなたの家族にも絶対に関わり合いになりたくないから。」
そう言って、走ってその場から去った。
席に戻り掴まれた腕をさすりながら怒りがこみ上げてきた。何のつもりなのか腹立たしくてすぐに帰りたかったが仕事が残っているので帰れず悶々としながら仕事を片付け家路を急いだ。
あんな人のために私は何年もなぜ立ち止まっていたのだろう。腕を掴まれたときの空気と四年前の別れの言葉すら言ってもらえず一人声を殺してお風呂で泣いた空気とその時の気持ちと温度といろんなことを思い出して腹が立って仕方がなかった。
苦しくて焦がれてすがりたい。そんな愛情は彼に対して持っていたかどうかもはやわからない。だったらいったい私は何に引っかかっていのだろう。
どうして四年も立ち止まったままなのだろう。部屋に帰り一つずつ自分の気持ちを読み解いていく。これまで逃げ出したくてわざと見ないふりをしていたその気持ちを。

「私は何が辛かったのか。」「なんでこんなに引っかかっているのか。」次々と自問自答をする。彼のことを狂おしいほどに愛していたかと自分に問えばわからない。好ましいところはいくつもあってその多くが自分の望んだタイミングで訪れて、「いいんじゃない。」が「いいな。」に変わっていったそんな想いだった。だから映画でみたようなただ一つの想いかと考えたら違うんだと容易に自分の気持ちを理解できた。
だったら私は何に傷ついたのか。それは彼を失ったことじゃない。私は選ばれなかったことに傷ついた。情熱で後先考えずに選んだ相手ではなく、言い寄れて将来やその時の状況に打算して選んだ相手に選ばれず、いとも簡単に残酷に捨てられてしまったこと。職場にまで関係を公にしながらも、同じ職場の後輩に乗り換えられ、別れの言葉さえももらえないどころか、濡れ衣を着せられて好奇の目で見られながらそれでもなお私を思いやることなど皆無のそんな扱いしかされなかったあの関係に傷ついたのだ。
若くかわいらしい女の子に男をとられたみじめな女。四年間も私はそのポジションに座り続けてきた。自分に女としての価値などない。そう思い知らされた気がした。恋愛至上主義では決してなかったがそれなりに楽しむ程度の自信はあったはずなのに。
あの時自分に足りないものばかりを探して、自分で自分を戒めるように手放して、ないものねだりをしながらそれをひた隠しにして傷ついて。自分で自分を貶めたのかもしれないなと深いため息をついた。
そこまで自分の気持ちをさらせば帰ってくる答えは「自業自得」そんな響きだった。自分ばかりが可愛くて選択したのは自分なのに。そんな自分だからの答えのような気がした。
今なら、そこから離れられるかも。私自身の根本が変わったわけではないけれど、変われる気がした。それは紛れもなく、今、三島さんを思う気持ちと恋に浮かれているからだけど。できる気がした。今の自分に。どうしようもなく膨らんでいく三島さんへの恋心に私は期待した。

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