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仕事帰り、観たかった映画の最終日に間に合い夕食には少し遅い時間に映画館を出た。
家に帰って夕食を作るのも面倒でどこかで済ませて帰ることにした。
明るい光を放つカフェには平日にもかかわらず多くのカップルや友達同士賑わいを見せている。
夏は終っているはずなのに熱さは衰えを知らず、季節の堺目がわからない。
一人でも入れそうな店を捜しながらふらふらと歩いていると、賑わいの中に見たことのある姿を見つけた。
長身のすらりと伸びた手足と細身の体に似合わないたくましい腕。
暑さが揺るぐことがないのに半袖でなく長袖のワイシャツを少しだけたくし上げ大き目の腕時計とつややかな黒髪。
三島さんだ。
思わぬ偶然に嬉しくて心が弾んで駆け寄ろうとしたその時、彼が一人ではないことに気が付く。
彼の横には、惜しむことなく披露された白く細い二の腕とまっすぐに伸びた足におれそうな細いヒール。
腕こそ組んでいないものの二人の間に隔たりなどないほどの近距離で寄り添い歩いていた。
女性はポニーテールを揺らしながら何度も三島さんを見上げ楽しそうに微笑んでいた。
彼の方も彼女の歩みに合わせ彼女をみながら微笑んでいた。
先日別れたあの日、三島さんはしばらく忙しくて会えないと言っていた。
それなのに目の前で若くかわいらしいポニーテールの女の子と笑いあっているのは紛れもなく彼だった。
予想できなかったことではないのにひどく落胆している自分がいた。
それが滑稽で情けなく臍をかんだ。
舞い上がって変われるかもしれないなんて期待して懲りない自分に気が付き泣き出しそうで慌てて踵を返して化粧室へ走った。
駆け込んだ化粧室で鏡を見ると、目の下にはくまができ、映画館で少し泣いたせいもあり化粧もはげ、よれよれな自分がいた。
大きく息をつき、できる限り化粧を直し鏡に向かって自分の中での最大級の作り笑いを浮かべた。
もう、二度と期待しないために自分に現実を突きつけるべきなんだ。
もう間に合わないかもしれないけれど化粧室を飛び出し、もと来た道を足早に戻った。
二人の姿は見えなかったが、私はそれでも二人が進んだであろう方向に背筋を伸ばして進む。
家に帰って夕食を作るのも面倒でどこかで済ませて帰ることにした。
明るい光を放つカフェには平日にもかかわらず多くのカップルや友達同士賑わいを見せている。
夏は終っているはずなのに熱さは衰えを知らず、季節の堺目がわからない。
一人でも入れそうな店を捜しながらふらふらと歩いていると、賑わいの中に見たことのある姿を見つけた。
長身のすらりと伸びた手足と細身の体に似合わないたくましい腕。
暑さが揺るぐことがないのに半袖でなく長袖のワイシャツを少しだけたくし上げ大き目の腕時計とつややかな黒髪。
三島さんだ。
思わぬ偶然に嬉しくて心が弾んで駆け寄ろうとしたその時、彼が一人ではないことに気が付く。
彼の横には、惜しむことなく披露された白く細い二の腕とまっすぐに伸びた足におれそうな細いヒール。
腕こそ組んでいないものの二人の間に隔たりなどないほどの近距離で寄り添い歩いていた。
女性はポニーテールを揺らしながら何度も三島さんを見上げ楽しそうに微笑んでいた。
彼の方も彼女の歩みに合わせ彼女をみながら微笑んでいた。
先日別れたあの日、三島さんはしばらく忙しくて会えないと言っていた。
それなのに目の前で若くかわいらしいポニーテールの女の子と笑いあっているのは紛れもなく彼だった。
予想できなかったことではないのにひどく落胆している自分がいた。
それが滑稽で情けなく臍をかんだ。
舞い上がって変われるかもしれないなんて期待して懲りない自分に気が付き泣き出しそうで慌てて踵を返して化粧室へ走った。
駆け込んだ化粧室で鏡を見ると、目の下にはくまができ、映画館で少し泣いたせいもあり化粧もはげ、よれよれな自分がいた。
大きく息をつき、できる限り化粧を直し鏡に向かって自分の中での最大級の作り笑いを浮かべた。
もう、二度と期待しないために自分に現実を突きつけるべきなんだ。
もう間に合わないかもしれないけれど化粧室を飛び出し、もと来た道を足早に戻った。
二人の姿は見えなかったが、私はそれでも二人が進んだであろう方向に背筋を伸ばして進む。
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