精一杯のエゴイスト

宮内

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 「知り合いにそんな言い訳しなくていいですよ。」
誤解されたくないならしなければいい。
誤解されたくないならあの時追いかけてくればいい。
つまりはその程度の相手のくせに、人の都合や気持ちもお構いなしで待ち伏せして強引にこんなところまで連れ出して一体何がしたいのだろう。

どうしようもなく腹が立ってきて、自分でも驚くぐらい冷静な声で言っていた。
「え。」
思わず、手を握っていた力がゆるまった。
「ただの知り合いにそんな言い訳しなくていいです。」
「なにそれ?」
明らかに不機嫌に変わった彼の口調とリンクするように再び私の手首をつかむ力は強くなった。

「ただの知り合いにそんな言い訳しなくていいです。」
あの時彼が言ったセリフを強調するように言った。
「なにそれ。かわいくないよ。」
きつくにらみつける私の視線を感じて少し表情をゆるめて
「思っていることがあるならちゃんと言って。」
「言いました。手を離してください。」
私は努めて冷淡に言った。

「飯行こう。」
会話の転機をどこでみているのか。
これがモテる男なのか。それとも天然か。
彼は手を放す代わりに握っている位置を手首から手のひらにかえた。
この会話のどこでその流れになるのか全然わからない。
「行きません。手を放してください。」
「わかってくれたんじゃないの?」
「何をですか?」
「あの子とはなんでもないって。」
「そうですか。」
「なにそれ。なんでわかんないかな。あの子とは何もない。会社の後輩で。ただ、同僚の結婚祝いを一緒に買いに行っただけ。」
苛立つ彼。
私は何を怒っているのか。
彼が女の人と歩いていたこと。
距離も開けずにぴったりと腕を組まんばかりに仲睦まじく歩いいたこと。
それとも彼が私よりも彼女を優先したこと。
ただの知り合いと言われたこと。
ショックだったのは何なのだろう。

このモヤモヤのもとは一体どこにあるのだろう。むすっとした顔から慌てるような態度を見せる彼の前で私は自分の感情をコントロールできず
「平日のあんな時間から同僚と残業終わりの一杯とかじゃない限り二人きりで食事になんて私は行かない。まして、下の名前で呼ばれるほど好意を持たれていそうな異性の同僚となんて行かない。誤解されたくない相手がいるなら行ったりしない。それに、三島さん私のこと彼女にただの知り合いってあの時言ったじゃない。私は三島さんの言葉を理解しただけ。だから、ただの知り合いに言い訳なんてしなくていいです。」
気が付いたら涙が頬を伝っていた。

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