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「なんだよそれ。ただの知り合いってなんて言ってないだろ俺。」
「言いました。」
自分が言ったことなのに彼は怒るように
「佐和ちゃんに誤解されたくないから、わざわざここまで来て。時間もらって。メッセージしても全然読まないし。なんなんだよ一体。」
やり場のない気持ちと苛立ちからか言葉が勢いを増す。
「あなたが彼女に私のことをそう紹介したでしょ。
『知り合いだよって。』
それまでずっとわからなかったけど、私、その時わかったんです。私たちただの知り合いだったんだって。だからただの知り合いにこんなに労力使う必要ないです。大丈夫です。次はもう声かけたりしませんから。」
早くこの場から逃げ出したい。
こんな惨めな自分は嫌だ。
逃げ出そうとする私を再び彼は捕まえた。
「待って聞いて。違うんだって。あの子は本当にただの会社の後輩。佐和ちゃんの事ただの知り合いなんて言った覚えないけど、言っていたならごめん。それは、彼女が佐和ちゃんのことを紹介する必要がない程度の関係だから。信じてよ。」
私は何も言えずにその場に立ちすくみ彼の顔を見据え
「彼女はそうは思ってないと思いますよ。」
「彼女がどう思ってるかは知らないけど俺はなんとも思ってないんだって。」
これでは、堂々巡りだ。
あの日、あの時のことを思い出すと彼がいくら言葉を紡ごうと今の私は信じることなんて到底できない。
「分りました。」
自分の気持ちに蓋をしてつぶやいた。
でもその事が顔に出ていたのか彼は私の手を掴んだまま顔を覗き込む。
「本当にわかってくれた?」
「分りました。」
「何をわかってくれたの?」
「彼女はただの後輩だってこと。」
「そうだよ。」
彼は安堵したように息を吐き出す。
「分りました。」
呟くような声になった。
「じゃあなんで怒ってるの。」
幾分穏やかな声になった彼はさらに私の顔を覗き込む。
「怒ってないです。」
私は顔を逸らす。
「怒ってるよ。」
「怒ってないです。」
そんな押し問答を続け
「本当にただの後輩だから。」
「分りました。」
彼は少し長めに大きく息を吐き、私を抱き寄せた。
私は彼の腕からすぐに離れ
「でも、あのモール三島さんの会社じゃなくて、マンションのそばですね。会社の同僚と結婚祝いの買い物あそこなんですね。全然信じられない。」
私はもう泣いてはおらず、かわいげのかけらもない嫌味な笑みで彼をにらみつけ、その言葉を「さよなら」の代わりに今度は歩いて、でもうんと速足で彼の元を去った。
「言いました。」
自分が言ったことなのに彼は怒るように
「佐和ちゃんに誤解されたくないから、わざわざここまで来て。時間もらって。メッセージしても全然読まないし。なんなんだよ一体。」
やり場のない気持ちと苛立ちからか言葉が勢いを増す。
「あなたが彼女に私のことをそう紹介したでしょ。
『知り合いだよって。』
それまでずっとわからなかったけど、私、その時わかったんです。私たちただの知り合いだったんだって。だからただの知り合いにこんなに労力使う必要ないです。大丈夫です。次はもう声かけたりしませんから。」
早くこの場から逃げ出したい。
こんな惨めな自分は嫌だ。
逃げ出そうとする私を再び彼は捕まえた。
「待って聞いて。違うんだって。あの子は本当にただの会社の後輩。佐和ちゃんの事ただの知り合いなんて言った覚えないけど、言っていたならごめん。それは、彼女が佐和ちゃんのことを紹介する必要がない程度の関係だから。信じてよ。」
私は何も言えずにその場に立ちすくみ彼の顔を見据え
「彼女はそうは思ってないと思いますよ。」
「彼女がどう思ってるかは知らないけど俺はなんとも思ってないんだって。」
これでは、堂々巡りだ。
あの日、あの時のことを思い出すと彼がいくら言葉を紡ごうと今の私は信じることなんて到底できない。
「分りました。」
自分の気持ちに蓋をしてつぶやいた。
でもその事が顔に出ていたのか彼は私の手を掴んだまま顔を覗き込む。
「本当にわかってくれた?」
「分りました。」
「何をわかってくれたの?」
「彼女はただの後輩だってこと。」
「そうだよ。」
彼は安堵したように息を吐き出す。
「分りました。」
呟くような声になった。
「じゃあなんで怒ってるの。」
幾分穏やかな声になった彼はさらに私の顔を覗き込む。
「怒ってないです。」
私は顔を逸らす。
「怒ってるよ。」
「怒ってないです。」
そんな押し問答を続け
「本当にただの後輩だから。」
「分りました。」
彼は少し長めに大きく息を吐き、私を抱き寄せた。
私は彼の腕からすぐに離れ
「でも、あのモール三島さんの会社じゃなくて、マンションのそばですね。会社の同僚と結婚祝いの買い物あそこなんですね。全然信じられない。」
私はもう泣いてはおらず、かわいげのかけらもない嫌味な笑みで彼をにらみつけ、その言葉を「さよなら」の代わりに今度は歩いて、でもうんと速足で彼の元を去った。
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