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帝国への亡命
第36話 新たな糸
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ロイ一行は朝食を取らずにラカン村を発った。人数が多いということはその分食費がかかるからだ。リーダーとして、極力パーティで自炊するように仲間に言ったが、ユキノは今朝のパンケーキが食べたかったらしく、少しむくれていた。
本当はカイロの一撃を防げるほどの戦闘力を有するソフィアにリーダーを頼みたかったが、彼女は断固として拒否している。ソフィア曰く、私は尽くすタイプだから引っ張るのは苦手、そんな意味のわからない事を言っていた。
そのため、やむなくロイがリーダーを引き受けている。
馬車で進むこと3時間、簡易キャンプを設置して遅めの朝食を取ることになった。ちなみに簡易キャンプは備え付けのお香を焚くことで魔物を寄せ付けない匂いを発するので割と安全にキャンプすることができる。最も、高レベルな魔物には効果がないので油断はできない。
キャンプ設置後、サリナとパルコは調理を、マナブは名前の如く本を読んでいる。そしてユキノとソフィアは荷物の整理をしていた。
手持ち無沙汰なロイは折り畳み式の椅子に腰掛け、聖剣を時空から取り出してステータスを確認してみた。
『ステータス』
ロイ&ユキノ (影魔術師、治癒術師)
グラム+72↑12
総合力7180
『聖剣特性強化』
テュルソス+72↑12
総合力6940
『スキル向上』
サリナ ”槍術師”
隕石の槍(雷)
マナブ ”土魔術師”
隕石の魔道書(土)
ソフィア ”聖騎士”
聖槍ロンギヌス+105
総合力9610
『魔力増幅』
なんとか聖武器の先輩であるソフィアに追い付きつつあるが、数値以上に差があるのは明白だった。パーティとして初戦闘にも関わらず、サリナに合わせて同時攻撃を行う程技量が高い。あの日、帝国に帰った彼女は今日に至るまでどれ程の修羅場を潜り抜けたのだろうか。
少しだけ悔しい思いをしながらも、ロイはステータスの特性の部分へと視線を向ける。
もしかしたらハイゴブリンを討伐すればまた何か新しい特性でもゲットできるかと思っていたが、数字が大幅に上がっただけだ。サリナを浄化したときも大幅に数字が増えただけで特性は増えなかった。そして今回も……きっと他になにか法則性があるに違いない。
聖剣を次元の裏側に格納し、自身の最大の敵と仮想戦闘を脳内で始める。何度行っても最初の一手で倒される……仮に”シャドー・メイデン”か”シャドー・プリズン”が決まったとしても、すぐに引きちぎられる未来しか思い浮かばない。
ロイにとって完膚なきまでに敗北した相手、カイロにはまだまだほど遠い。黒騎士カイロ、本当に不可思議な男。噂くらいは聞いたことがある、勤務態度は最悪、好き放題してる部下を放置している。単騎で戦局を覆すほどの戦闘力、飄々として王以外には従わない豪胆さ。
そんなやつが追手を差し向けてこない……。
「……はぁ。俺達、泳がされてるのかねえ」
ロイのそんな独り言を聞いたのか、サリナがエプロンで手を拭きながらロイの隣に腰かけた。
「泳がされてる?」
「そう、やつが本気ならもっと辛い逃亡生活だからな。こんなにのんびりしてられんさ。獲物の俺らを補食するとき、最悪のタイミングでハルトと共に現れるだろうさ」
「なるほどね、アンタの言ってたハルトにまた会えるってやつ、あながち正しいのかも」
「だろ?ってかサリナはなんで着いてきたんだ?俺の提案、そんなに確証なかっただろ?」
「他に行くところないって言ったでしょ?それに、あんな良い女が婚約者なら勝ち目……ない、じゃない……」
らしくない弱気な台詞にロイは困惑し、隣のサリナへ視線を向けてさらに困惑した。エプロンをギュっと握りしめて俯き、必死になにかを堪えている。
「ああ……その、なんていうか。ええっと、お前、パレードの時のハルトの顔ちゃんと見たか?」
「……顔?」
「婚約パレードの時、やつは今のお前と同じ顔をしてたぞ?きっと、やつも望んでないんじゃないか?」
その言葉にサリナは驚いた表情を浮かべている。
「そんな顔すんなよ。お前らしくないぞ?まっすぐに一途なのがサリナじゃないか。そんな泣きそうな顔よりいつもみたいなムスっとした顔してろよ」
「う、うるさい!」
そう叫んだサリナは立ち上がり、そしてパルコの元へ走っていく……が、途中で立ち止まった。
「あとで、手伝ってほしいことがある。夜にきて……それと、ありがと」
ポカンとしたロイを残してサリナは去っていった。
本当はカイロの一撃を防げるほどの戦闘力を有するソフィアにリーダーを頼みたかったが、彼女は断固として拒否している。ソフィア曰く、私は尽くすタイプだから引っ張るのは苦手、そんな意味のわからない事を言っていた。
そのため、やむなくロイがリーダーを引き受けている。
馬車で進むこと3時間、簡易キャンプを設置して遅めの朝食を取ることになった。ちなみに簡易キャンプは備え付けのお香を焚くことで魔物を寄せ付けない匂いを発するので割と安全にキャンプすることができる。最も、高レベルな魔物には効果がないので油断はできない。
キャンプ設置後、サリナとパルコは調理を、マナブは名前の如く本を読んでいる。そしてユキノとソフィアは荷物の整理をしていた。
手持ち無沙汰なロイは折り畳み式の椅子に腰掛け、聖剣を時空から取り出してステータスを確認してみた。
『ステータス』
ロイ&ユキノ (影魔術師、治癒術師)
グラム+72↑12
総合力7180
『聖剣特性強化』
テュルソス+72↑12
総合力6940
『スキル向上』
サリナ ”槍術師”
隕石の槍(雷)
マナブ ”土魔術師”
隕石の魔道書(土)
ソフィア ”聖騎士”
聖槍ロンギヌス+105
総合力9610
『魔力増幅』
なんとか聖武器の先輩であるソフィアに追い付きつつあるが、数値以上に差があるのは明白だった。パーティとして初戦闘にも関わらず、サリナに合わせて同時攻撃を行う程技量が高い。あの日、帝国に帰った彼女は今日に至るまでどれ程の修羅場を潜り抜けたのだろうか。
少しだけ悔しい思いをしながらも、ロイはステータスの特性の部分へと視線を向ける。
もしかしたらハイゴブリンを討伐すればまた何か新しい特性でもゲットできるかと思っていたが、数字が大幅に上がっただけだ。サリナを浄化したときも大幅に数字が増えただけで特性は増えなかった。そして今回も……きっと他になにか法則性があるに違いない。
聖剣を次元の裏側に格納し、自身の最大の敵と仮想戦闘を脳内で始める。何度行っても最初の一手で倒される……仮に”シャドー・メイデン”か”シャドー・プリズン”が決まったとしても、すぐに引きちぎられる未来しか思い浮かばない。
ロイにとって完膚なきまでに敗北した相手、カイロにはまだまだほど遠い。黒騎士カイロ、本当に不可思議な男。噂くらいは聞いたことがある、勤務態度は最悪、好き放題してる部下を放置している。単騎で戦局を覆すほどの戦闘力、飄々として王以外には従わない豪胆さ。
そんなやつが追手を差し向けてこない……。
「……はぁ。俺達、泳がされてるのかねえ」
ロイのそんな独り言を聞いたのか、サリナがエプロンで手を拭きながらロイの隣に腰かけた。
「泳がされてる?」
「そう、やつが本気ならもっと辛い逃亡生活だからな。こんなにのんびりしてられんさ。獲物の俺らを補食するとき、最悪のタイミングでハルトと共に現れるだろうさ」
「なるほどね、アンタの言ってたハルトにまた会えるってやつ、あながち正しいのかも」
「だろ?ってかサリナはなんで着いてきたんだ?俺の提案、そんなに確証なかっただろ?」
「他に行くところないって言ったでしょ?それに、あんな良い女が婚約者なら勝ち目……ない、じゃない……」
らしくない弱気な台詞にロイは困惑し、隣のサリナへ視線を向けてさらに困惑した。エプロンをギュっと握りしめて俯き、必死になにかを堪えている。
「ああ……その、なんていうか。ええっと、お前、パレードの時のハルトの顔ちゃんと見たか?」
「……顔?」
「婚約パレードの時、やつは今のお前と同じ顔をしてたぞ?きっと、やつも望んでないんじゃないか?」
その言葉にサリナは驚いた表情を浮かべている。
「そんな顔すんなよ。お前らしくないぞ?まっすぐに一途なのがサリナじゃないか。そんな泣きそうな顔よりいつもみたいなムスっとした顔してろよ」
「う、うるさい!」
そう叫んだサリナは立ち上がり、そしてパルコの元へ走っていく……が、途中で立ち止まった。
「あとで、手伝ってほしいことがある。夜にきて……それと、ありがと」
ポカンとしたロイを残してサリナは去っていった。
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