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リーベ台頭 編
第160話 ソフィアの意地
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ロイ達は第三勢力として奇襲を成功させるために、ユキノの祝福盾・大盾の上に乗っていた。
「ユキノ、大丈夫か?」
「は、はい……6人乗せて移動するだけでこんなに魔力が減っていくなんて思いもしませんでした」
「あと少しだ、王宮の真上に来たら俺とソフィアが先行して突撃する。それまで頑張ってくれ」
ユキノの頭に手を乗せて軽く撫でてやると、嬉しそうに微笑んでくれた。俺にはこうすることしかできない。ユキノから提案してきた作戦とはいえ、それを承認したのは俺だから何かあったら俺の責任だ。
ユキノの操る祝福盾・大盾が王宮の真上に来ると、状況を視認できる距離まで高度を下げた。
眼下に見える戦況は非常に芳しくない。まず、私兵と思われる死体、そして騎士団の死体、それらを挟んで市街地側に騎士団の主力が陣取っていて、王宮側には銀髪で褐色の肌をした女達が陣取っていた。
「あの女達は……闇の子供たちか」
ロイの呟きにソフィアが口を開いた。
「ロイ、あのラルフって総長、今にも突撃しそうなんだけど……まともにやり合えば戦力が大きく損耗するわね」
「ああ、ラルフは勝てるかもしれない。だけどその配下のほとんどはかなりの痛手を負うことになるはずだ。この国のその後を考えたら、ここは俺達が奇襲で攻撃を仕掛ける他ないな」
「そう、じゃあやるのね?」
「人目が気になるんだったら下に降りてからでもいいんだぞ?」
「何を言ってるの、ロイ。ハーレムなのだから気にしてないわ。私はあなたのもの、いつでも構わないわ」
そう言ってロイの胸に身体を預け、顔を上げて目を瞑った。ロイもそれに応じて行動に移す。左手はソフィアの腰に手を回し、右手は大きな膨らみへ。
揉むと同時に「あっ」と艶のある声を出して口を開く、その唇に自らの唇を押し付けて「ん、んっ」と水音を立てながら貪ること数秒──。
ロイの白銀の神剣は青へと変化して仄かに冷気が漂い始めた。
ぷはぁっと唇を放してソフィアに【氷剣グレイシア】を見せつける。ソフィアはその剣を我が子のように見つめた後、顔を正して言った。
「さあ行きましょう、ロイ」
「そうだな、じゃあ俺達は先に下に行く。みんなは後から来てくれ!」
ロイが飛び下りると同時にラルフ達は敵の側へ突撃を始めた。まずは騎士団側の動きを止めないとな。そう考えて大きく息を吸って言った。
「ラルフ、そこで止まれ──【絶対零度】!」
剣に魔力を流して一閃。不可視の刃が地面に到達すると同時に、巨大な氷の壁が地面から姿を現した。
双方が唖然とする中、ラルフがロイへ声をかけた。
「ロイ殿か!?」
「ああ、どうやら間に合ったみたいだな。てか、アンタらがチンタラしてるせいで追い付いたじゃねえか。これが相手なら勝ち目ないだろ、あとは任せろ」
いかにも「仕方ないな」という風にして敵側に降り立つ。巨大な氷壁を作り出した男に対して闇の子供たちは警戒している。
「ソフィア、再使用までの時間を稼いでくれ」
「ええ、任せておいて」
ロイが氷剣グレイシアを地面に突き立てると、魔術の気配を察した闇の子供たちが一気に攻撃を仕掛けてきた。
「あなた達の相手は私よ。ロイの、私の夫の邪魔はさせないわ!」
黒い爪、黒い矢、それぞれを巧みな身のこなしで防いでいく。時に弾き、時に殴打し、体術と槍術の全てを駆使して相手を打ち払う。
防戦槍術、それはスキルではなくソフィアが考案した戦術の1つ。
一度の動作で2つ以上の攻撃を防ぐことを重視しており、かつてグレンツァート攻防戦においてアンジュと対峙したソフィアは、剣姫という強ジョブ相手に一度も被弾することなく猛攻を防ぎ切ったことがある。
ソフィアの行動が時間稼ぎだと気付いた闇の子供たちは、数人でソフィアの相手をして、余った人数で横を抜けようとした。
「光槍!!」
光の帯が横を抜けようとした闇の子供を何度も通過し、その身体をバラバラにした。
「あら、御免あそばせ」
ソフィアは上流階級の女性っぽく謝罪を口にするが、聖女と似た顔の女がバラバラになったのを見て騎士団の何人かは嘔吐していた。
攻撃を仕掛けても簡単に弾かれ、横を抜けようとすれば光の帯で剪断される。いかにマスターに忠実であろうとも、すでに個として生まれた闇の子供たちは生命の危機を感じて後退してしまった。
ラルフは思った。敵の攻撃を単身で防ぎ、超火力で薙ぎ払う、あれはまるで──動く要塞ではないか。同じ聖騎士なのに何故こうも違いが出るのだろうか……。
「ソフィア、時間稼ぎありがとな。あとは俺に任せてくれ」
「ええ、わかったわ」
ロイの言葉受けて、ソフィアはユキノ達の元へ向かった。
「よし、じゃあ一気にいくからな。覚悟しろよ? ──【絶対零度】!!」
地面に突き立てた剣から氷が広がっていき、闇の子供たちは一瞬にして氷漬けになってしまった。
「ふう、少し休憩するか」
一先ず王宮周辺を制圧したロイは騎士団の前に作っていた氷壁を任意で解除した。
「ソフィア、マナポーションをくれ。魔力がもうほとんどない」
「お疲れ様、はい、マナポーション」
ソフィアから受け取ったマナポーションを飲むと、ルフィーナが大声で叫び始めた。
「ロロロロロ、ロイ殿!!! そ、それは……間接、キスではないですかぁ!」
言われて瓶を見ると飲んだ以上に減っている。だからと言って何なんだ一体。今回ソフィアが使った魔力は最低限度に抑えられた光槍一発。
だからちょびっと飲むだけでいい、むしろ絶対零度を二度使った俺が多く飲むのは当たり前じゃないか。
ロイに代わり、ソフィアがそれを説明するもルフィーナはどこか納得いかない顔をしていた。
Tips
マナポーション・道具
ルフィーナの故郷である、エルフの里・ヘイムダルで作られた魔力の回復するポーション。神樹ユグドラシルの葉を材料とするため1瓶100万Gはくだらないほど高価なポーション。
幼少期にこれを飲むと貧乳になると噂されているが因果関係はなく、伝承保管機関からもそれはただの迷信だと報告されている。ただ、エスクート世界においてエルフに貧乳が多いのは、単に種族特性以外に理由はない。
「ユキノ、大丈夫か?」
「は、はい……6人乗せて移動するだけでこんなに魔力が減っていくなんて思いもしませんでした」
「あと少しだ、王宮の真上に来たら俺とソフィアが先行して突撃する。それまで頑張ってくれ」
ユキノの頭に手を乗せて軽く撫でてやると、嬉しそうに微笑んでくれた。俺にはこうすることしかできない。ユキノから提案してきた作戦とはいえ、それを承認したのは俺だから何かあったら俺の責任だ。
ユキノの操る祝福盾・大盾が王宮の真上に来ると、状況を視認できる距離まで高度を下げた。
眼下に見える戦況は非常に芳しくない。まず、私兵と思われる死体、そして騎士団の死体、それらを挟んで市街地側に騎士団の主力が陣取っていて、王宮側には銀髪で褐色の肌をした女達が陣取っていた。
「あの女達は……闇の子供たちか」
ロイの呟きにソフィアが口を開いた。
「ロイ、あのラルフって総長、今にも突撃しそうなんだけど……まともにやり合えば戦力が大きく損耗するわね」
「ああ、ラルフは勝てるかもしれない。だけどその配下のほとんどはかなりの痛手を負うことになるはずだ。この国のその後を考えたら、ここは俺達が奇襲で攻撃を仕掛ける他ないな」
「そう、じゃあやるのね?」
「人目が気になるんだったら下に降りてからでもいいんだぞ?」
「何を言ってるの、ロイ。ハーレムなのだから気にしてないわ。私はあなたのもの、いつでも構わないわ」
そう言ってロイの胸に身体を預け、顔を上げて目を瞑った。ロイもそれに応じて行動に移す。左手はソフィアの腰に手を回し、右手は大きな膨らみへ。
揉むと同時に「あっ」と艶のある声を出して口を開く、その唇に自らの唇を押し付けて「ん、んっ」と水音を立てながら貪ること数秒──。
ロイの白銀の神剣は青へと変化して仄かに冷気が漂い始めた。
ぷはぁっと唇を放してソフィアに【氷剣グレイシア】を見せつける。ソフィアはその剣を我が子のように見つめた後、顔を正して言った。
「さあ行きましょう、ロイ」
「そうだな、じゃあ俺達は先に下に行く。みんなは後から来てくれ!」
ロイが飛び下りると同時にラルフ達は敵の側へ突撃を始めた。まずは騎士団側の動きを止めないとな。そう考えて大きく息を吸って言った。
「ラルフ、そこで止まれ──【絶対零度】!」
剣に魔力を流して一閃。不可視の刃が地面に到達すると同時に、巨大な氷の壁が地面から姿を現した。
双方が唖然とする中、ラルフがロイへ声をかけた。
「ロイ殿か!?」
「ああ、どうやら間に合ったみたいだな。てか、アンタらがチンタラしてるせいで追い付いたじゃねえか。これが相手なら勝ち目ないだろ、あとは任せろ」
いかにも「仕方ないな」という風にして敵側に降り立つ。巨大な氷壁を作り出した男に対して闇の子供たちは警戒している。
「ソフィア、再使用までの時間を稼いでくれ」
「ええ、任せておいて」
ロイが氷剣グレイシアを地面に突き立てると、魔術の気配を察した闇の子供たちが一気に攻撃を仕掛けてきた。
「あなた達の相手は私よ。ロイの、私の夫の邪魔はさせないわ!」
黒い爪、黒い矢、それぞれを巧みな身のこなしで防いでいく。時に弾き、時に殴打し、体術と槍術の全てを駆使して相手を打ち払う。
防戦槍術、それはスキルではなくソフィアが考案した戦術の1つ。
一度の動作で2つ以上の攻撃を防ぐことを重視しており、かつてグレンツァート攻防戦においてアンジュと対峙したソフィアは、剣姫という強ジョブ相手に一度も被弾することなく猛攻を防ぎ切ったことがある。
ソフィアの行動が時間稼ぎだと気付いた闇の子供たちは、数人でソフィアの相手をして、余った人数で横を抜けようとした。
「光槍!!」
光の帯が横を抜けようとした闇の子供を何度も通過し、その身体をバラバラにした。
「あら、御免あそばせ」
ソフィアは上流階級の女性っぽく謝罪を口にするが、聖女と似た顔の女がバラバラになったのを見て騎士団の何人かは嘔吐していた。
攻撃を仕掛けても簡単に弾かれ、横を抜けようとすれば光の帯で剪断される。いかにマスターに忠実であろうとも、すでに個として生まれた闇の子供たちは生命の危機を感じて後退してしまった。
ラルフは思った。敵の攻撃を単身で防ぎ、超火力で薙ぎ払う、あれはまるで──動く要塞ではないか。同じ聖騎士なのに何故こうも違いが出るのだろうか……。
「ソフィア、時間稼ぎありがとな。あとは俺に任せてくれ」
「ええ、わかったわ」
ロイの言葉受けて、ソフィアはユキノ達の元へ向かった。
「よし、じゃあ一気にいくからな。覚悟しろよ? ──【絶対零度】!!」
地面に突き立てた剣から氷が広がっていき、闇の子供たちは一瞬にして氷漬けになってしまった。
「ふう、少し休憩するか」
一先ず王宮周辺を制圧したロイは騎士団の前に作っていた氷壁を任意で解除した。
「ソフィア、マナポーションをくれ。魔力がもうほとんどない」
「お疲れ様、はい、マナポーション」
ソフィアから受け取ったマナポーションを飲むと、ルフィーナが大声で叫び始めた。
「ロロロロロ、ロイ殿!!! そ、それは……間接、キスではないですかぁ!」
言われて瓶を見ると飲んだ以上に減っている。だからと言って何なんだ一体。今回ソフィアが使った魔力は最低限度に抑えられた光槍一発。
だからちょびっと飲むだけでいい、むしろ絶対零度を二度使った俺が多く飲むのは当たり前じゃないか。
ロイに代わり、ソフィアがそれを説明するもルフィーナはどこか納得いかない顔をしていた。
Tips
マナポーション・道具
ルフィーナの故郷である、エルフの里・ヘイムダルで作られた魔力の回復するポーション。神樹ユグドラシルの葉を材料とするため1瓶100万Gはくだらないほど高価なポーション。
幼少期にこれを飲むと貧乳になると噂されているが因果関係はなく、伝承保管機関からもそれはただの迷信だと報告されている。ただ、エスクート世界においてエルフに貧乳が多いのは、単に種族特性以外に理由はない。
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