ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

ギルドへ報告

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ダンジョンを出てミラ、ルドルフのパーティと別れたノアは冒険者ギルドへ報告に向かう。


ダンジョンを出ると何故か毎度待機しているアルキラーとバラスを今回はスルーする。2人共どこか寂しげだ。

(後で行きますからそんな目で僕を見ないで下さい…)


冒険者ギルド内に入ると朝見掛けた女性3人パーティと大剣を背負ったガタイの良い男女パーティの2組がクエストボードを眺めていた。

近くにいた職員がノアに気付く。

「おや、ノア君じゃないですか。解体依頼の報告ですか?」

「いや、報告と相談なんですけど誰に報告したら良いかと…」

「私で良ければ伺いますよ?」

「えーとさっき中層1階に行ったんですが…」

『中層』と言う部分で職員の顔付きが変わり、周りにいた冒険者もこちらの話を聞いている様だ。

「1階から2階への穴を確認したので進もうと思ったのですが穴の頭上に巨大な苦万蜂の巣がありました。」

「少々お待ち下さい。」

そう言って2階のギルド長室に向かう職員。
ノアがその場で待っていると

「なぁそこの少年。中層に行ったってのは本当か?」

クエストボードの所にいた大剣持ちの男がノアに質問して来た。


「ああ、行ったよ。」


「おいおい、冗談キツいぜ!中層まで行けるヤツがクマンバチごときでギルドに相談来るかよ。」

(この感じからするとさっきと同じで思い違いをしているな…)

口で説明するよりか現物を出した方が早いと思いノアは腰の鞄から鉄串が刺さった苦万蜂を取り出す。

「自分が言ってたのはこの蜂の事だけど合ってるかな?」

取り出した直後周囲の冒険者がざわつく。大剣持ちの男が問い掛ける。

「な、何だよそれ!?」

「それは苦万蜂です。」

上から声がしたのでそちらの方を向くとギルド長のエメラルダが2階の部屋から出て階段の欄干に手を掛けていた。


「中層1階から現れる拳大~人の頭部程の大きさの蜂です。
人の小指程の大きさの毒針には遅延性ですが強力な毒素が含まれており、対処出来なければ短時間に数多の苦痛が襲って来ます。
持続性は無いですがあまりの苦痛で廃人の様になってしまう者もいます。
その後複数の仲間を呼び、生きたまま…この先を言うのは止めときましょう。」


エメラルダの説明に周囲にいた冒険者は全員黙ってしまった。

「それでノア様。その苦万蜂の巣を見付けたとの事ですが改めて状況と規模をお聞かせ頂いても良いですか?」


エメラルダから促されたノアは説明を始める。


「場所は中層1階から2階への穴の直上。
巣の大きさは大体冒険者ギルドの建物と同程度ですかね。遠目から見て巣の入口が見られなかったので2階への穴と入口が同じ位置にあるかと、そうなると2階からも増援が来ることも予想できます。
ちなみに巣の中はざっくりと100匹程います。」


ノアの説明に冒険者、職員含め完全に静まり返る中、エメラルダが切り出す。

「…報告ありがとうございました。
現在その問題に対処出来る上級冒険者がこの街にはおりません…王都に駆除の要請を出しましょう。
暫くの間中層への道は閉鎖「あ、それでなんですけど。」」


エメラルダの重々しい発言に割って入るノア。

「…?はい、何でしょうか?」

「邪魔なので殲滅して来て良いでしょうか?」


「「「「「は?」」」」」


その場にいた全員がノアの発言に呆気に取られる。

「元々ここに戻って来たのも武器の補充と毒の程度の確認。少人数の応援を要請しに来たので、揃えば直ぐに向かいます。」

「…殲滅自体は本人の自由ではありますが、何か戦略はおありですか?」

「まぁとりあえず遠くから矢で数を減らしつつ接近されたらダガー、鉄串で迎撃。
動きが結構直線的なので剣でも割と対応出来ると思います。」

「少人数の応援というのは?」

「上層への討ち漏らし対策で弓の腕が立つ人を1人、荷物持ちの方は索敵も出来るライルさんでお願いしたい。回収目的と言うか武器を多めに持って行きたいのと失敗した場合の応援の離脱要員です。」


「…分かりました、弓の方は知り合いの職員に心当たりがあります、ライルさんの要請と併せて私が行いましょう。
それと毒の程度ですが<毒耐性(中)>があれば毒は効きません。<毒耐性(小)>だと解毒が必要になります。」

「情報ありがとうございます。自分は預けてるお金引き出したら武器の調達に向かいます。」

そう言ってカウンターの職員に言い、5万ガルを引き出す。
ギルドを出て一先ず武器屋に向かう。
武器屋に着くと朝見た職員とガーラがカウンターにいた。

「ガーラさんお疲れさまです。」 

「おう坊主、まだ武器は全部出来てないぞ!」

「あぁいえ、催促に来た訳ではなくて普通に武器を買いに来ました。」

「おう!良いぜ何を買う?」

「えーと、矢を100本、ダガー7本、剣を2「ちょっと待て坊主!?何と戦いに行くつもりだ!?」」

腰の鞄から鉄串が刺さった苦万蜂を取り出す。

「おま、これ、苦万蜂…中層に行ったのか!」

「これが苦万蜂…初めて見た…」

苦万蜂を見て驚くガーラと職員、それと天井にいるレリが何かそわそわしている。

「恐らくこれから報告が来ると思いますが中層2階への穴の上にコイツの巨大な巣があったので殲滅しに行くんです。それで武器を多めに欲しくて。」 

「そう言う事か、おう!準備しな!」

近くにいた職員は既に準備を開始していた。量が量なので矢束を次々とベルトに括り着けていく。ダガーも折れた物は店に渡し、剣も腰に装着し、残りは同じくベルトに括る。


「他に何かあるかい?」

「後この鉄串みたいなのありますか?」

「串は売ってないが同じ細さの鉄の棒ならある。今の所用途は無いからタダで良い。」

「ありがとうございます。」

そう言い、腰のダガーを逆手に取り、<渾身>を連続発動して串の長さに切っていく。

カ!カ!カ!カ! 


職員が不思議そうな顔をして見てくるがスルーする。

「よし揃ったな。全部で4万ガルになる。頑張れよ!」

金を支払い武器の束を持ち、店を出る際にあることを思い出す。
ノアは天井にいるレリに手招きし、カウンターに下りて来てもらう。

「これ、あげます。御近づきの印です。」

そう言い、レリに苦万蜂を渡す。御近づきの印としてはどうかと思うがレリは「あらまぁ~」とでも言いそうな動きをして苦万蜂を受け取り、ススーッと天井にお戻りになった。

気に入ってくれたかな?と少し気にしつつ店を出る。
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