ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

ノアの体調

ノアの体調は思いの外芳しくなかった。

周囲の者達は割と勘違いしている事だが、別にノアは常人離れした体力やスタミナを有していたり、並外れた瞬発力を持っていたり、鍛え抜かれた肉体を持っている訳ではない。

素のステータスだけ見れば年相応とも言える。
そこに両親からの凶悪なまでの特訓で身に付けた経験と技術、各種<スキル>で肉付けされ、その上で【ソロ】の補正を受けているだけだ。
その為、人並みに疲れる時は疲れる。

ちなみに現在のノアにとって最も負担が蓄積されるのは【鎧袖一贖】の発動と『俺』に体を貸す事らしい。

【鎧袖一贖】は攻撃力以外のステータスはそのままである為反動が大きく、『俺』に体を貸すと全能力を強制的に引き出して動いている為更に影響度が高い。

それを『俺』も知ってるので例外を除き余程の緊急時でも無い限り出て来ない様にしている。

女鏖蜂討伐後から連日【鎧袖一贖】を発動したり『俺』に体を貸したりした上で探索等をこなしているのでノアは現在『過労状態』に陥っていた。

しかもその主だった原因というのが、『ノアの為に』とモンスターの駆除に精を出すベルドラッドとアリッサだという事を本人達は知らない。
王都に戻った後で2人共、国王直々にこっぴどく叱られるのは先の話になる。




「くっ…。」           ドサッ!

「ノ、ノア君大丈夫!?」

ベルドラッド達が熊5頭を瞬殺し毒大蛇3匹と盾鹿4頭と戦闘を始めた頃、少し離れた所でノアは戦闘開始直後位から発動していた<やせ我慢>を解除した。

一気に体が軋む感覚や吐き気等がやって来て膝から崩れ落ちたが、何とか体を手で支えると、慌ててクロラがノアに駆け寄る。

「大丈夫です…ちょーっと体のあちこちと内臓の幾つかが痛むだけなので…」

「それは大丈夫とは言わない!」

ガキン!

阿羅亀噛を地面に突き立て、それを背もたれにして座る。
その隣にクロラも並んで座る。

「なーんか一昨日から戦い尽くしで全然休んでなかった気がするよ。」

「ちゃんと休まないとダメだよ、特にノア君はいつも凄い戦い方してるから体が幾つあってもたないよ?」

「そうだぞーノア君。過労ってのは君位の歳でなる様じゃ先が思いやられるぞ!」


毎度の事ながら気配も無くジョーが現れた。


「ジョーさんどうやってここに…通りからここには通れ無い様にしてたハズですよ?」

「ふふん、商人にはねそういう所にも潜り込める特殊なスキルがあるのだよ。」

「んなアホな…」

「まぁ冗談は抜きにして、はいコレ、王都で近々発売する予定の栄養剤。
これ飲んで英気を養いなさい。」

ジョーがノアに液体が入った小瓶を渡す。
蓋を開けて匂いを嗅ぐ。

「うーん、数種類の薬草の香り…そしてすごく苦そう…」

ノアが意を決して飲もうとした時だった。
毒大蛇があと1匹という所でバトルベア3頭が出現した。

先程戦っていた熊の2倍以上の大きさがあるだろう。
初めて見るジェイル、ルドルフのパーティの面々がざわつく。


「ノア君!急いで飲むんだ!」

「は、はぁ…」

ジョーに急かされくぴっと一気に流し込むと変化は直ぐに現れた。

口に含むと光の塊を飲んだのかと思う程口内が光り、飲み込むと内臓、血管、筋繊維に沿って光りが巡る。
僅か数瞬の間に頭の先から爪先まで光りが巡り、光りが落ち着いた頃には先程までの体調が嘘の様に消え去っていた。

「うわー…何だコレ凄い効き目…」

「ははは、そうだろう、そうだろう。
ちなみにその栄養剤の効き目はもう暫く続くだろう。
君の持つ奥の手を使用しても体への負担は無いハズだ。」

実際体調が良くなった所か力が力が漲っている様にも感じている。

「前で戦っている者達なら時間を掛ければバトルベア3頭を倒す事は可能だろうが、ここはダンジョン前の入口だ。
こんな狭所で時間を掛けたら不利になるのは目に見えている。
今この場に必要なのは君みたいな高火力特化型の強者(つわもの)だ。」

ジョーの言いたい事を理解したノアはベルドラッドらの所に向かい始める。




「あーもう!やり辛いわね!」


現在アリッサが召喚した盾持ち竜牙兵2体がバトルベアの攻撃を何とか防ぎ、ベルドラッド、アルキラー、バラスが隙を伺ってはいるが周囲を這っている毒大蛇が目を光らせており迂闊に攻撃を仕掛けられないでいた。

膠着状態に痺れを切らしたベルドラッドが前に出ようとするが、大口を開けた毒大蛇が待ち構えていた。

「ちっ!くそったれが!」

毒大蛇がベルドラッドに襲い掛かろうとする瞬間に背後から凄まじい速さで剣が飛来、毒大蛇の顔面を捉えると勢いそのままに後方の壁に突き立てられる。

毒大蛇はのたうち回る事無くそのまま絶命した。

あまりに突然の事でその場にいる面々が呆然としていると

「皆さんありがとうございます。
とりあえず体調は戻りましたので交代しましょう。」

皆が後ろを振り返ると先程よりも血色が良くなったノアがこちらに向かって歩いて来ていた。

「戻った!?ついさっきの事だぞ?」

「本当ですって。」

「いや、だがなぁ…」

「悠長に話して無いでさっさとして!竜牙兵の盾そろそろ保たないわよ!」

アリッサの方を見ると黒い盾持ちの竜牙兵がバトルベア3頭の攻撃を耐え凌いでいたが盾の所々にヒビが入っている。

「だー!もう分かった!好きにしろ!だがこちらが危ないと判断したら直ぐに引き戻すからな!」

「分かりました。さ、アルキラーさんもバラスさんも下が

「下がってますよ。」
「まーす。」

いつの間にやらノアの後ろに下がっていたアルキラーとバラス。
気のせいかも知れないが2人共にワクワクしている様に感じる。

残るはアリッサなのだが

「ご、ごめんノア君、下がりたいのは山々なんだけどバトルベアの攻撃が激しくて…」

アリッサはバトルベアから矢継ぎ早に攻撃を仕掛けられ引くに引けなくなっていた。

「アリッサさん、僕が今からバトルベアの攻撃を中断させるのでその隙に後ろに下がって下さい。」

「ちょっと待って、何するつも

アリッサが嫌な予感を感じるよりも早く、<殺気放出>を発動し、ノアから殺気が放たれるとバトルベア3頭の動きが止まる。

「さ、今の内に下がって下さい。」

「………。」

アリッサからの返答が無い所かその場に座り込んでしまった。

「アリッサさん?」

「こ、腰が抜けて動けない…」

「………。」


<殺気放出>…対象を1度でも討伐すると対象を怯ませる程の殺気を放てる。
殺気の強さはその都度更新される。


(ほー、つまり今の自分はバトルベア以上の殺気を放ってる訳か…)

腰が抜けたアリッサを抱き抱えて後ろに下がらせる、俗に言うお姫様抱っこというヤツである。
やましい気持ちは無いのだが奥でむくれてるクロラには後で謝る事にしよう。


アリッサを下ろすと振り返ってバトルベアの所まで戻る。


「そんじゃ、始めますか。」

そう言うとノアは<殺気放出>を解除し、【鎧袖一贖】を発動した。
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