ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

対鬼苦万蜂戦

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対鬼苦万蜂戦に向けて樹上に上がったノアは<気配感知>で巣の外周を飛ぶ鬼苦万蜂を探す。

ジェイルはパーティメンバーとの話し合いの結果、ポーラとクロラが遠距離攻撃して落ちてきた鬼苦万蜂を、近接攻撃のジェイルとロゼが止めを刺すという方針にした様だ。


(うーん…程よく巣から離れているヤツはいないかな…
お、いたいた、6匹か初戦としても丁度良いかな。)

ノアは巣から割と離れていた鬼苦万蜂に近付くと弱めの<殺気放出>を行う、強さとしては普通の熊程度だ。

すると1匹がノアに気付き猛然と追い掛け始め、続けとばかりに残りの5匹が続く。

(よし!食い付いた。)

そうしてノアは離れ過ぎない様に下まで引っ張って行くのだが、そんな事考えずとも執拗に追い掛けて来る上に中々速い。

枝から枝への移動を止め、先程同様に枝と枝の隙間を縫う様に落下し、地面に着地。

ズン!「直ぐに来ます、準備を!」 

ノアからの合図を受け、ジェイルとロゼの後ろで待機していたクロラが矢を番え、ポーラがアイシクルランスを発動し発射待機していた。

ノアも少し遅れて矢を番えると樹上より鬼苦万蜂が飛来、姿を確認したクロラとポーラが攻撃を開始。

クロラの矢は鬼苦万蜂の腹部に命中、地面に落ち、ポーラのアイシクルランスは胸部に命中。
その上翅の根元辺りまで凍り付き、同じく地面に落下。

(あれ?耐久力といい動きといい普通の苦万蜂と何ら変わり無いな…)

予想外にあっさり撃墜された事に違和感を覚えるが、気を抜かずノアも矢を射る。

結局1分もしない内に地面に落とす事が出来た為、止めを刺しにロゼとジェイルが向かう。
念の為気を付ける様に言ったが難なく終了した。


「「「「……。」」」」

「…何か、肩透かし食らった気分ですね…」


何とも言えない雰囲気ではあるが取り敢えず素材を回収、目的の素材が割と簡単に手に入りそうだと喜ぶ女性陣。

ノアは倒した後の死骸を確認してみる。

(所々が赤い甲殻…苦万蜂よりも大きい体…素材名にも"鬼苦万蜂の◯◯"って付いてるし、鬼苦万蜂で間違いないよな…)

別の個体かもと思ったが間違いは無い様だ。


その後も巣の外周を飛ぶ鬼苦万蜂を誘き出し、討伐する事3回、討伐数は20匹になった。


「こーんなあっさり倒せると思ってなかったなー。」

「まぁ楽に取れるならそれに越した事は無いけど…良いのかしらこれ…」

「この調子で行ったら全員の装備に鬼苦万蜂の魔眼石を付ける事も可能かもな。」



楽に素材が取れる事に困惑しつつも次の相手を探しに行こうかとした時にそれは起こった。

<…キ…キキッ!>
<バキッ…バギッ!>

遥か樹上から枝を断続的にへし折りながら何かが落下して来る。
ノアが上を見上げた事に周りの面々が注視して来るが、少しすると皆も気付いた様だ。

バキバキバキッ!   ズズン!

皆がいる場所から少し離れた地点に十数匹の鬼苦万蜂に集られた猛毒大蛇が落下して来た。
既に猛毒大蛇は数十ヶ所を刺され、碌に動けない様だ。


「まずい!今の落下で巣から鬼苦万蜂が30匹程出てきた!」

「おい少年、あっちのにも気付かれたぞ!」


猛毒大蛇に集っていた鬼苦万蜂がノア達の元へ接近を開始して来た為、ノアは咄嗟に指示を出す。


「クロラ、ポーラ!上の奴らが来たら数的にまずい、急いで射ち落とすぞ!」

「…う、うん!」

「あいあいさー!」


ノアとクロラは矢を番えて<洗練された手業>を発動、ポーラは魔力を込める。


バシュ!バシュ!シュバッ!シュバッ!
「アイシクルランス!」


割と直線的に向かって来ている為非常に狙いやすい。
殲滅まであと僅か、という時だった。

奥にいる鬼苦万蜂が顎をガチガチと鳴らし始めた。

ノアの脳裏に女鏖蜂戦の時の記憶が甦る。

バシュッ!       ガチガチガ…!?

直ぐ様矢を射ってその行動を阻止する。


「ノア君!今のは?」

「分からない…だが以前女鏖蜂戦の時にもあの行動を起こした後に面倒臭い事になった。
恐らく今の行動も似た様な…あ!?」


話を中断したノアは<気配感知>の反応から樹上にある巣から鬼苦万蜂50匹位がこちらに向かって来ているのを確認。


「鬼苦万蜂約50の群れがこちらを目指している、遠・近距離同士で組んで迎撃の体勢を取ってくれ!」


ノアからの指示、報告に加え、ジェイルも指示を飛ばす。


「どちらかは防御が出来た方が良い、クロラは俺に、ロゼはポーラに付いてくれ!
ポーラ!皆に支援魔法を!」

「合点!<守り手><身体強化><盾強化付与><剣強化付与>」


皆に支援魔法が掛かったと同時に鬼苦万蜂が飛来、ノアが直ぐ様矢で射落とす。


「取り敢えず序盤は自分がどんどん射落としていくから直ぐに止めを!
射ち漏らしが出て来次第対応を頼みます!」


<気配感知>のお陰で次、どこから現れるかが分かっているノアはその場所に射続け、周りが止めを刺す。

だが、その間も樹上の巣から次々と鬼苦万蜂が出現を続けており、ノアでも手が回らなくなってきていた。


「ポーラ!背後に現れます、迎撃を!」

「あいさー!」

「クロラ!目の前に2匹来ます、少し距離を取って!」

「はい!」


そうして何とか30匹程倒した頃、<気配感知>の範囲内にまた新たな反応を感知。
"新たな"とは言ったが表示されているのは"鬼苦万蜂"のままだ、ただ大きさが他の鬼苦万蜂と異なる。


中層にいる苦万蜂が人間の頭部程の大きさ。
下層から戦った鬼苦万蜂は人間の胴体程の大きさ。
そして新たに現れた個体は成人男性程の大きさである。


更に引っ掛かるのは、出現したのはこの1匹だけ
という事であった。

気にはなるが、未だに飛び交う鬼苦万蜂の対処を優先する。


ザシュッ!「よーし。こっちは終わったよ!」

ズシャッ!「こちらも今終わった所だ。」


ポーラとクロラが射ち落とした鬼苦万蜂にロゼとジェイルの2人が丁度止めを刺した所だった。


「一時はどうなる事かと思ったが何とかなって良かったな。」

「そうね。クロラ、ロゼ、今の内に回収しておきましょ。」


ポーラはクロラとロゼと共に鬼苦万蜂の回収に向かう。
その間ジェイルは樹上の反応を窺っているノアの元へ向かう。


「鬼苦万蜂は来ないみたいだが、反応の方はどうだい?」

「巣の中から別の個体…ただ反応としては"鬼苦万蜂"なのですが、それが巣から出て来た途端こちらへは来なくなりました。
ですがその個体を中心として周囲を飛び回っています。
皆の回収が済み次第先に進みましょう。」

「分かった、そうしよう。」


ノアとしても<虫の知らせ>が発動する程嫌な予感というものは感じないが、今回はジェイル達もいる。
避けられる事なら避けた方が良いだろう。


「回収終わったよ!」

「よし、それじゃあノア君の判断で先を急ぐ事にしよう。」

「そうしましょ、比較的楽だったけど数で来られたらたまったもんじゃないわ。」


そうしてノア達は2階への坂を探すも、案外直ぐに見付かった。
どうやら1階は縦に長い様だ。
坂が直ぐに見付かり安堵の空気が流れた時だった。

先程の鬼苦万蜂の個体とウネウネと長く連なる反応をノアが捉えた。

即座に後ろを向くと、鬼苦万蜂よりも体躯が大きく、甲殻がより赤みを増し、毒針を持たない蜂が飛んでいた。
その周囲を蛇の様に一繋がりになった鬼苦万蜂の群れがその個体を守る様に飛んでいた。


ノアはその個体を視認すると視界に個体名が表示された。


「"鬼苦万蜂・雄"?」
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