ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

ちょっと待ってくれ!

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「ちょ、ちょっと待ってくれ!何だその引き摺られてる3人は!?」

「この先の小道にいた野盗を捕まえて来ました。
それでお話しをしたら彼らの装備の場所を教えてくれたので無事取り返す事が出来ました!」


ノアは生き生きと話しているが、野盗は完全に怯え、後ろの3人は何故か顔が引きつっている。

街の門の兵士も、ノアが何かやったのは明白だが、深堀せず職務に徹する事にした。
ノアから野盗を引き取った兵士は連行していった。

その際兵士には『野盗捕縛の話は兵士、ギルド、街の人間だけに留める』様にお願いした。


「あーその…ノア君、だったか。
武器や所持品を取り返してくれてありがとう。
さっき貰った10万ガルは早速返すよ。」

「いいんですかランダさん、まだお金は返って来て無いんですよ?」

「私達が来る前にもう使っちゃったんでしょ、武器が帰って来ただけでもありがたいわ。」

「そーですよ、それに装備とか買っちゃってたから元からお金入って無かったですし。」


そう言われた為、先程3人に上げた10万ガルを返して貰う。
ちなみに、現場から街へ戻る途中にお互いの自己紹介は済ませてある。
金属鎧を着けた男性はランダ、【斧】の適正を持っている。
【魔法使い】の女性2人は金髪と黒髪だったから分からなかったが姉妹なのだとか。
金髪がカリン、黒髪がカレンというらしい。


「それでは皆さんこれからどうするんですか?」

「取り敢えず簡単な依頼受けてコツコツお金を貯めていくよ。」

「今度野盗に会ったらこの杖で撃退してやるんだから。」


街に戻るまでの間2人に素手・杖での簡単な護身術を教えてあげた。


「ははは、その意気ですよ。
僕は野盗から教えて貰った情報をギルド長にでも話して今後の事を考えるとします。
それではまたどこかで。」





ギルドへと向かうノアを眺める3人。


「"教えて貰った"ねぇ…」
「私達と歳変わらないのに物凄く強かったね…」
「私彼に怒っちゃったけど大丈夫かな…あの拷問凄く恐かったよ…」


その時の光景を思い出し、身震いする3人だった。






ノアは街の中を進む。

今更知ったがこの街の名前は『アルバラスト』と言って、だだっ広い平原の真ん中に立つ比較的大きな街らしい。

北は王都。
南は『オードゥス』。
西に行けば竜種ダンジョン『ドラガオ』。
東の山々を越えると色々なタイプの獣人が多数住む『ヴァーリアスフェアレス』へと繋がる為、かなり栄えているとの事だ。

街には東西南北の4ヶ所に門があり、街の真ん中に冒険者ギルドが立ち、その周りを露店等が建ち並ぶ。

北西エリアには商業区画、南西エリアには王都程では無いらしいが錬金術や宝石商、薬剤等のギルドが犇めく。
東南エリアには多種多様な武器や防具等を販売、作成している店があり、東北エリアは食品街となっているとの事だ。

とにかく人が多く<聞き耳>を発動しっ放しの為、色々聞こえて来る。
商いの話やあまり宜しくない話、冒険者同士の会話なり、飲んだくれの下卑た発言等々。


だが色んな業種が犇めき、常に騒がしい光景に目移りしながら眺めていた。


(『うーむ…見てて飽きないな。』)

(ああ、大規模な市場にいる気分だよ。暫くはここに腰を据えようと思うよ。)

(『王都に呼ばれてるのにか?』)

(具体的な日は言われてないから良いでしょ。)


『俺』も思いの外ワクワクしている様だ。


「坊主この街は初めてかい?」


後ろを振り返ると腰に剣を提げた兵士が立っていた。


「分かりますか?」

「腰から真っ黒な剣を提げた冒険者なんて見ないからな。」


兵士はチョイチョイとノアの腰に提げた剣を指差す。
言われてみればこの剣は割と目立つなと思う。


「確かに少し前にこの街に来ました。」

「門の仲間がお前さんの事話してたんだ。
"ついさっきこの街に来た冒険者が野盗を捕まえて来た"ってね。
アイツら野盗はこちらも手を焼いててね、まだまだいるが取り敢えず捕まえてくれてありがとう。」

「先程捕まえた野盗から情報を聞き出したので冒険者ギルドに向かう所なんです。
可能な限り捕まえる予定ですよ。」

「そいつは頼もしい、恐らくそうなら特別依頼と言う形で君に依頼が来るだろう、頑張ってくれ!」


兵士からの激励を受けたノアは礼をした後冒険者ギルドに向かう。
近付くにつれ、<聞き耳>に色々と話し声が聴こえてきた。


<おい、さっき野盗に会ってくるって言ってた奴、マジで捕まえて来たらしいぜ!>

<聞いた聞いた。武器戻ってきたってな?>

<俺のダチの武器も取り返してくれねぇかな…>

<職員達が騒いでたぜ?特別依頼出すかもって>


色々話しているようだが気にせずノアはギルドの扉を開けて中に入る。
今まで騒がしかったギルド内が静まり返る。


「よう!先程の坊主、お手柄だな。」

「財布は取り返せませんでしたけどね。
捕まえた野盗から幾つか情報を教えて貰いましたのでその報告に。」

ガタッ!「何だと?」

この発言を聞いた数名の冒険者が席を立ちノアの元に歩み寄る。


「その情報とやら、俺達も聞いて良いかい?」


ノアの元に近付いて来たのは、壁に槍を立て掛けた席にいた男性冒険者と全身を黒と紺の装束を着て口元まで顔を隠した小柄な女性冒険者。

ぶっとい腕に派手目なガントレットを装着した筋骨隆々の獅子型男性獣人の3人だった。


「良いですよ、どのみち<聞き耳>を立ててたでしょうから。」

「バレてたか。」

「獣人さんの耳がピクついていましたから。」

「う…む…
そ、それで、情報とやらを教えてくれるか?」

「すいません、職員さん、この周辺の地図ありますか?」


その言葉にカウンターのおっちゃんが職員に指示を飛ばす。


「3の2の棚だ、あと扉ん所に『閉店』の札でも下げとけ。
おぅ、真ん中にテーブル寄せろ!」


カウンターを飛び出したおっちゃんはツカツカとノアの元に歩み寄る。

テーブルを寄せ終わった後に職員が地図を持ってくる。

その頃にはギルド内の全員がテーブルに集まっていた。


「僕がさっき野盗に遭遇したのはこの街を出て直ぐの山の小道です。
この辺りは思わせ振りな廃屋とかあばら家がありますが、それはただの囮です。
本命は中位の大きさの岩の下です。」

「「「岩?」」」

「野盗の何人かに【万能】がいて、岩の下に盗った武器や金を隠す穴蔵兼緊急避難用の穴を掘っています。
そして岩にも<気配遮断付与>が付いてます。」

「通りで捕まえに行ったのに気配1つ無いのか…」

「全てではありませんが連行してきた野盗が言ってた場所から3人の武器を見付けました。
財布の場所は別の野盗に渡したから分からないと言われたので今後の捜索次第ですね。」

「よし…逃げたら岩の下だな…」


話の途中だが足早にギルドから出ようとする冒険者がいたので慌てて制する。


「早く捕まえたい気持ちは分かりますが、これから本題を話すのでもう少し待って下さい。」

「「「本題?」」」

「ええ、内通者の炙り出しです。」
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