ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

野盗と言えば

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「おぼろち、朧さん、野盗と言えばどんなの想像しますか?」

「そりゃ、ボロ布纏って、下卑た笑い声を上げて、いっつも腹空かしてて…」

「はい、そこです。奴ら、最初に要求したのが『武器と金』なんですよ。
朧さんの野盗像のままなら『食い物寄越せ』が普通でしょ?
野盗が大量に持ってても換金したり食糧を買い辛いのにどうしてそんなに要求するんでしょうね。」

「それで商人か。でも中級冒険者と見るや姿を眩ますのはどうやって見分けてるんだ?」

「簡単ですよ。さっきも露店で言われましたよね?
『おや、お二人さん新人かい?』って、あれをただの挨拶と捕らえたのなら内通者の思うツボですよ。
たった一言で自分達の身分を晒してる様な物ですから。
恐らく特徴等を流してるのでしょう。
だから僕はその返答として自分の事は言わずに朧さんだけ『彼女が両親から買って貰った新品の杖を、野盗に取られちゃいまして』と言いました。
両親から新品を買って貰うなんて普通に言ったら新人冒険者じゃないですか?」

「…なるほど、な…」

「なのでそれを踏まえて街を回って下さい。
武器屋周りで良いですよ。」

「承った。」

「新人【魔法使い】ですよ?」

「は、はーい。」


ノアに促されぎこちなくではあるが武器屋を回り始めるおぼろちゃん。
その後ろ姿を見届けた後、ノアはその場を離れ街をウンウン言いながら物思いに耽る。

(後は例の商人探し…"武器を売って食糧を買い込んでいる"商人をどうやって探すか…)

「商人の知り合いなんてジョーさんしかいないからな…」

「呼んだー?」

「うわっ!?何でここにいるんですか!」

「何だい人を化け物みたいに、勿論商売でここに来ただけだよ。
その剣持ってるの君位だし直ぐに分かったよ。
何か困ってるみたいだけど相談乗るよ?」

 「実は…」






「なーるほどね。その内通者を探してる訳だね。」

「そういう事です。ですが商いの内容を見せてくれ何て無茶な話ですしどうしたものかと…」

「分かった、この件は僕が何とかしてみよう。
こういう調べ物が得意な者がいるのでね、半日程待てるかな?」

「は、半日!?そんなので良いんですか?」

「ああ、十分だよ。他にもやる事があるのだろう?ここは任せてそっちに注力するといい。」

「はい、ありがとうございます。」


再びギルドの方へ向かうノアの後ろ姿を見たジョーは行動を開始する。

「また厄介事に首突っ込んで…
さて、今の話は聞いてたよね?半日で頼むよ。」

「はい。」

「了解しました。」


ジョーの前を横切った人の後ろからフードを目深に被った2人の人物が歩み寄る。
言葉少なく返答すると再び姿を消す。
するとジョーも雑踏の中に消えて行った。




「失礼しまーす。」

「おぅ、坊主、丁度良い時に来たな。
例のブツ、30分程で出来るってよ。」

「早っ、ありがとうございます。それじゃあ、後は…」


ノアはカウンターにあったペンで紙にサラサラっと文字を書いていく。


「これでよし、っと。」

「黒い二刀の冒険者が行くと伝えてあるから、店先に猫獣人が立ってる店ん中入る時に2回咳払いしてくれ。」

「分かりました。」


恐らく依頼人だと言う確認の合図なのだろう。
ノアはギルドを出て先程の武器屋があるエリアへと向かう。

すると既に格好について気にならなくなった朧が武器屋の店主と会話をしている様だった。

(大分自然に振る舞っている様だな。)

「あ、おぼろちゃん、お待たせー。」

「あ、おぅ…は、はーい。待たせちゃってすま…ごめんねー。」

(あ、うん。喋りはまだまだぎこちないな…)


朧と合流したノアは再び近くの店と店の間に入り、小声で話す。


「取り敢えずお疲れ様です。
何人位に話し掛けられましたか?」

「ざっと8人位よ。露店売りは今ので最後だ。
だが4人目で気になる奴がいたな。」

「何か言われましたか?」

「その盗られた杖はどんなだ、とかはまだ良いのだが。
"似た杖があったら幾ら出す?"とかやたらこちらの懐事情を聞いてきたりしたな。」

「そうですか…一先ずその話は置いといて、こちらもそろそろお目当ての物が手に入ります。」

「お目当ての物?ギルド長に頼んでた奴か。」

「ええ、後少しでどこかの武器屋の店先に猫獣人が立つらしいので僕が行って、入口で2回咳払いすれば良いそうです。」

「ぅぉぉぉっ…如何にも裏社会でのみ通じる合言葉みたいで羨ましい…」


そういえば朧の適正は【忍】だったな、と今更ながら思い出す。
すると一番奥にある武器屋の前にちょこんと猫獣人が立つのが見えた。


「恐らくアレでしょう、行きましょうか朧さん。」

「い、良いのか?一緒に行っても。」

「そりゃこの後朧さんにやって貰いたい事がありますしね。」


ノアの背後で朧が小さく「ふぉおお」っと興奮しているが気にせず店まで向かう。
猫獣人もこちらに気付いた様でにこやかな表情のまま話し掛けてきた。


「にゃーにゃーおにーちゃんいらっしゃいなのにゃ!
何か武器をお探しかにゃ?」


ノアは表情そのままに入口まで行くと少し立ち止まり「コホンコホン」と咳払いを2回する。


「にゃー、外は埃っぽいからにゃかに入ると良いにゃー。」


そう言って中に入るノアと朧。
すると猫獣人の言葉遣いが変わる。


「野盗達の内通者を捕まえる為、物証用の杖を作って欲しいと言う依頼を出したのはあなたですねノア君。」

「はい、そうです。」

「それではどうぞこちらがその杖です、ご確認下さい。」

一本の木をそのまま加工して作られた杖、皮張りの持ち手の上部には光輝く宝石が埋め込まれている。
杖を受け取ったノアは朧に見えない様にある細工を施してそのまま朧に渡す。


「朧さん、この杖を持って街の外で野盗にわざと盗られて来てください下さい。」

「え!?これをか?」

「その為に作って貰いましたからお願いします。」

「分かった、奴らの前でわざと落として逃げ帰ったフリでもして戻ってくるぞ。」

「ええ、それでお願いします。」


杖を受け取った朧はそのまま店を出て街の外へと向かう。


「すいません、急がしてしまった上に仕込みも作って貰って…」

「いえいえ、構いません。
私も野盗に襲われて無一文でこの街に来た所をギルド長に助けられました。
この街に来て早々、野盗を捕まえた貴方なら何かやってくれるだろうと思い助力したまでの事。」

「それで、製作依頼のお金はこれで足りますか?」


そう言って10万ガルを机の上に置く。


「ふふ、律儀なのですね、でも今回はお代はいりません。
この件が片付いたら、この店を贔屓にして頂ければ有り難いです。」

「分かりました。」

「それに、朧ちゃんのあんな可愛らしい姿見れたから逆に儲けもんよ。」


その後猫獣人の店主から「露出多めの忍装束とかどうかしら?」等、返答に困る話に付き合わされる事になるノアだった。
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