ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

どうしました!?

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「どうしました!?街の中に多数のモンスターの反応がありましたが…」


地下墓地から地上へ出ると、南門にいる多くの人間が慌てふためいていた。
エルグランドが状況確認の為、辺りを動き回っていたので引き留めるも


「こちらも状況確認が出来ていない。
住人救出した所までは報告は上がったのだが、誰かが爆裂魔法を発動したらしい。
そんな攻撃ではあのモンスターは倒せるハズ無いのだが…」

「とにかく僕が街の中に入って状況確認に向かいます。
門を開けて貰っても良いですか!」

「直ぐには無理だ!三重の防護壁を掛けているので早くても2分は掛かる!」


それを聞いたノアは南門の壁際に向かい手を当て、壁に魔力を流し、壁の所々に杭を生やしていく。

ズダンッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

地面を勢い良く蹴ったノアは大きく跳躍し生やした杭に掴まっていき防壁の上へと向かう。

防壁の上に行くと、街の中の様子が確認出来た。


倒壊した家屋や瓦礫の下から次々とどす黒い体色をしたモンスターが這い出て来ており、救出された住人だろうか、痩せ痩けた者達を他の冒険者が護衛しつつ南門まで向かっていた。

数人大怪我を負った者がいるらしく、その者達も護衛しながらの為、取り囲まれるのも時間の問題であろう。


「少年、君は確か地下墓地に行ったハズでは?」

「轟音が聞こえたので確認に来ました!」

「「ぼっち君!大変なの、あの白銀鎧の奴が街の中で爆裂魔法使って…」」



妖精のサンドラとクリストロが慌てながら説明して来た内容を纏めると


『白銀鎧の取り巻きである【魔法剣士】の2人が突如モンスターに攻撃を仕掛けた事で、音に誘われたモンスターが大挙して集まってきた。』


との事らしい。


「あいつら住人の避難が完了した途端、急に騒ぎだしたの…」

「騒ぎ出した?」

「何か『民よ、これがミユキ様からの救済だ』とか何とか…」

「…で、その取り巻きは?」

「「あそこ…」」


サンドラとクリストロが指差す方向を見ると、右足から大量に出血した者と、脇腹から出血を
起こし踞る取り巻きと、それを守る様に戦うミユキとか言う【勇者】の姿があった。


「本当何がしたいんだよアイツら…」


そうこう話している間も、南門まで残り100メルまで近付いた所で集団の動きが止まる。
8人目の負傷者が現れた為だろう。

倒壊した家屋を進み、集団の裏に回ろうとしているモンスターも出始めた為、ノアは即座に頭を切り替える。


「ユグさん、サンドラさん、クリストロさんは迂回しているモンスターを狙って下さい!
僕は殿を努めているミユキとか言う女性に下がる様に言ってきます!」

「あ、待ってくれ!支援魔法を…」

「雷よ、彼の…」
「絶対零度の氷壁を…」

「僕に構わず!支援魔法は掛かりません!」

ドガァッ!「ぐっ!?」「「きゃっ!?」」


蒼いオーラを纏ったノアが石壁を踏み抜く程の速度で防壁から飛び降り、倒壊した家屋の屋根を伝い、殿の元へ向かう。


「ヴァンディット!マナポーションと回復薬はあるか!?」

「は、はい、ございます!」

「【一鬼呵成】がいつまで発動してられるか分からん!
いつでも渡せる様に準備しておけ!」

「か、畏まりました。」


ダダダダダダダダッ!


屋根伝いに走る事僅か、3体のモンスターを相手に殿を努める【勇者】まで40メルとなった所で声を掛ける。


「【勇者】のミユキとやら!伏せろぉっ!」

「!?」


ミユキが伏せると同時に猛烈な速度で飛んで来た阿羅亀噛が蜥蜴、蛇のモンスター3体を巻き込んで両断。
背後に控えていた鰐も縦に引き裂かれるが、更にその後ろにいた亀のモンスターの甲羅にヒビを入れるも、弾かれて地面に突き刺さった。
【一鬼呵成】を解除したノアが着地する。

ズザァァアッ!シュババッ!

「受け取れ回復薬だ!
早く怪我人とそこの足手まとい2人連れて門まで向かえ!」

「あなたは確か新人冒「悠長に喋ってる暇無いだろ!さっさと動け!
南門から出たら街の住人はこれで全てかエルグランドに確認を取れ!良いな!』

「ひっ…わ、分かりました…」


ノアの怒号混じりの指示に、体をビクつかせながらも取り巻き2人を集団へと引き摺って行く。
 
その間も前方から続々とモンスターが現れ、<気配感知>の範囲内の反応は50を越え、尚も増え続けている。

モンスターは突如現れたノアでは無く、南門まで下がっていく集団へと狙いを定めている様だが


<殺気放出>を発動、バーサークベア以上の殺気を放出する事でモンスターの狙いが全てノアの方へと向く。


「ノ、ノア様…逃げましょう…あの数は無理です…」

「狼狽えるなヴァンディット!準備は出来てるな?
あの集団が街から出て全員の避難が完了したのを確認したら退く。
それまでの辛抱だ、万が一にも出てくるんじゃないぞ?』

「わ、分かりました!」

「確かにこのままじゃ勝てる見込みは無い、救出が完了したかの確証が無いから"アイツ"も呼べん、魔力の残量も心許ないから【鬼鎧殻】も【鎧袖一贖】も乱発出来ん。』


この絶望的な状況を影から見ているヴァンディットは不安そうにノアの顔を見る。
状況とは裏腹に、ノアは不適な笑みを浮かべ、徐々に眼を赤黒く染めていく。


『『俺』に死なれちゃ困るんでな、最悪『俺』が出て相手してやる。』

ドガァンッ!「オラァァアアアアアアッ!」

石畳を踏み抜く勢いで駆け出したノアに対し、50以上のモンスターが続々と魔法陣を展開。

炎、氷、風、雷のブレスがノアに向け、一斉に放たれる。
<蹴撃><渾身>を発動して更に加速したノアは、瞬間的に超加速してブレスを避け、手近にいた蜥蜴モンスターへ斬り掛かる。

最少の動きで接近し<渾身>を発動、首を撥ね飛ばすと同時に1秒にも満たない時間【一鬼呵成】を発動して加速し、モンスターらの視界から消える。

その隙に集団の左端まで移動してノアを見失い、硬直しているモンスターの側面にまわり<渾身>を発動して首を撥ねる。

ノアの攻勢に気付いたモンスターらからブレスや尻尾を使った影魔法がノアに飛ぶ。
最少、最小の動きで避け、多少の擦過傷であれば避ける事はしなかった。


瞬間的な【一鬼呵成】、<蹴撃><渾身>による高速移動と最小限な動作でのモンスター討伐を行っていたノアだが、8体討伐した所で敵の動きに変化が現れる。


ギュアッ!グルァッ!ギュギャッ!

「くっ!?」


突如ノアの前方に蜥蜴モンスター3体がそのまま転移。
3体同時に噛み付きを仕掛けてきたので阿羅亀噛を盾に全て受け止める。

と、同時にノアの周囲に大蛇型のモンスターが転移。
猛烈な速度でその長い胴体を這わせ、蜥蜴モンスターごとノアに巻き付きに掛かる。


「マズイ!」ドバァッ!


即座に<渾身>を発動した上で阿羅亀噛を両手持ちし、振り抜く。
剣に食らい付いている3体の蜥蜴モンスターを両断。

ビキッ!「ぐぅっ!?」ズダンッ!

<渾身>の乱発で筋が痛み始めたが気にせず飛び上がると、蜥蜴モンスターの死骸ごととぐろを巻いた大蛇の胴体がその場を埋め尽くす。

ズギュルッ!ガシュッ!

蜥蜴の死骸は元の生物が何だったのか分からない程、一瞬の内に圧縮される。
圧縮された事でとぐろの中心から血が噴き上がり視界が埋め尽くされる。

ジャァアアアッ!「くっ!?」

血飛沫の奥から大蛇の大きな口が迫る。

空中と言う足場の無い所ではあるが、腰の捻りと腕のしなり、<渾身>を発動させて大蛇の上顎から頭部の半分に掛けてを削ぎ落とす。

ゾリンッ!

勢いを殺さずに更に捻りを加えて絶命した大蛇の顔側面を蹴ってその場を離れると、ノアがいた位置に複数のブレスが着弾。

しかしその内の雷と氷のブレスが右腕と右脇腹に直撃、倒壊した家屋に押し込まれ体を地面に叩き付けられる。

ドガァッ!ドガララッ!「ぐふっ!」

自由の利かない右手から左手へと阿羅亀噛を持ち替え、次々に襲い来るブレスを掻い潜り開けた場所に出る。

チラリと門の方を見ると、救出された住人含め街にいた全員が門の外へと出ていく所であった。


「…さ、て、報告早くしてくれよ…」





その頃テラヴァジア方面から巨大な何かが街に向かって進行を始めていた。
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