ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

ゴクンッ!

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ゴクンッ!


超高速で引き戻された『俺』は何の抵抗も無いままカメレオンの口内に突入。


「おいっ!?坊が呑まれよったぞ!?」

「余裕かましてるからよ!自業自得だわ!」


ズガァアッ!ゴォオオオオオオオオオオッ!


突如カメレオンの首元が煌々と、光りを伴って体内から大爆発が発生。
大量の血飛沫と血煙、悲痛な叫び声を上げながら防壁から落下し、街の中へ。

カメレオンは炭化した首の穴から止めどなく血を噴き出し、悶え苦しみつつも何とか体勢を立て直す。

すると首の穴から『俺』が姿を現す。


『やっぱ薬と爆発は中からが一番効果的、ってね。』


などと言っていると、前哨基地の方角から発煙弾が上がる。
南門付近にいる冒険者達が煙の色を確認して『俺』に向けて声を上げる。


「発煙弾だ!しかも色は青…住人はさっきので全員って事だな。
おぅい!何するか分からんが、この発煙弾が見えるだろ?住人の避難は完了した合図だ!」


冒険者のロッドがでかでかとした声を上げる。


『報告ご苦労さん。
かめれおん?とか言う奴は大した事無いが、あまり時間が掛けられないのでね、ちゃっちゃと終わらせて貰うぞ。』


先程まで夥しい量のモンスターで溢れかえっていた街の中も、【鬼骸兵】による蹂躙で残すは僅か数体となっていた。
カメレオンの方も未だ止めどなく血が溢れ、放って置いても死ぬのは時間の問題であろう。


『だが無駄に死なせるのは忍びないのでな、街の向こうにいる"奴ら"への見せしめとして意味のある死に方をして貰おう。
という訳で教会や地下墓地、防壁は破壊しない様に注意してくれよ、グリード。
活きの良い蜥蜴だ、残さず綺麗に食べるんだぞ?』


『俺』がグリードの名を呼ぶとカメレオンいる地面に巨大な魔法陣が展開。
カメレオンは咄嗟には動けない様なのでせめてもと『俺』に向け超高速の舌を飛ばす。

バヒュォッ!

が、『俺』に舌が当たるよりも早く魔法陣から大口を開けたグリードが出現し、腹の下から食らい付きその巨体を上空にまで押し上げた。


グルォオオオオオオオオオオオオオオオッ!

ゴァアアアアアアアアアッ!?


カメレオンは突如真下から出現したグリードに驚くも、何とかその地獄の門から抜け出そうと脱出を試みる。
が、返しの様に張り巡らされた5メルを越える長さの無数の牙、奥底から伸びる長い舌、そして2つ目の口が凄まじい速度で腹を突き破り背中に抜ける。

ドブァッ!ゴガ…ガァアアアアアアアッ!?

叫び声というか最早悲鳴に近いカメレオンの声がフリアダビア周辺に響き渡る。


『うーん、やはり巨大生物には巨大生物をぶつけるに限るな。
それにしてもグリード、また大きくなってないか?全長100メルは越えてるだろ。』


グリードは凄まじい量のヒュドラを捕食した事で大幅な成長を遂げていた。
全長は100メルを越えており、魔法陣から全身を出していない状態である。

戦いの中では発揮されていなかったが、カメレオンの表皮は魔素強化されたアイアンリザード以上の硬度を誇り、蜥蜴モンスターを容易く斬り捨てていた【鬼骸兵】の刀でも斬るのは容易では無い程である。

が、グリードの顎の力は凄まじく、人間で言う鶏や豚の軟骨をコリコリと食べる様な小気味良い音を立てながら次々と食べ進めていき、あっという間にカメレオンの体はグリードの中へと呑み込まれていった。

ゲフォッ!グルルル…

満足したのか口の周りを舌で舐め取るグリード。


『急に呼び出して悪かったなグリード、ご苦労さん。』


そう呼び掛けたのだが、グリードは『俺』の方をジッと見詰めて動かなくなった。


『心配すんなグリード、ノアはそんな簡単にくたばりゃしないさ。
アイツが死んだら俺も死ぬんだ、中でぐっすり寝てるだけだから次の戦いに備えて首を長くして待っていてくれ。』

グル!

『俺』からの言葉を聞いたグリードはそのまま展開中の魔法陣を通じて潜って行った。

一先ず『俺』は阿羅亀噛を回収したり影の中にいるヴァンディットへこの後の事を伝えつつ、南門の方へと戻る事にした。





「お?おお!坊!戻ってきたか!」


南門の近くまで来ると、冒険者らが待機していた。更にその周囲には待機状態の【鬼骸兵】が佇んでいた。


『おぅ、お前さんはロイだったな待っててくれたのか、これは有難い。』

「そりゃあ、あのまま放って置けるかい!」

『そりゃそうか。
んじゃ早速で悪いが、今からこの状態を解除するが、後の事は従者に任せてある。
その娘の指示通りに動いてくれ。』

「?お、おぅ、分かった。」

『それじゃあヴァンディット宜しく頼む。』


『俺』がそう言うと門の直ぐ近くにある影からヴァンディットが姿を現す。

姿を初めて見た冒険者らとミユキは多少たじろいだが、直ぐに冷静さを取り戻した。


『先程も言ったが、この状態は体の持ち主にとっても相当の負担でね。
その上先程まで戦いっぱなしだったしな。』


すると『俺』の頭や全身の傷口、口の端から血が滲み始める。


『…一応俺の方で出血を止めてたから何とかなってたんだ、が、な…』


ノアの体と眼から赤黒いオーラが消え、周囲に待機していた【鬼骸兵】も灰となって崩れ去る。

途端にノアの全身から血が噴き出し、目は虚ろになって膝から崩れ落ちる。

寸での所でドワーフが支えるも、皆どうして良いか分からず、声を発する事が出来ない。
それ程ノアの状態は手の施し様が無い状況であった。


「ドワーフさん、そのままノア様の体を支えてて下さい!私が処置致します!」


ヴァンディットが鬼気迫る表情になり、両手に魔力を込め始めた。














不意に目が覚めた。

と言っても意識はハッキリと覚醒せず、目も薄ぼんやりと開いているに過ぎない。

今ノアは毛布を掛けられ、何かを背凭れにしてやや後ろに倒れぎみに寝ている状態らしい。
確認しようにも指1本動かすのが億劫になる程、体が怠く、目蓋も重い。

視界の中に焚き火が見えた。
焚き火の光が眩しく感じるのだから恐らくもう夜なのだろう。


<…助…て良……>
<……飢…を待……った…>
<…冒…達……謝……>


痩せ細った人の姿が目に入る。
恐らく救出された住人達だろう、焚き火を囲んで温まっている様だ。

そういえばと思い出してみると、この土地は大陸の北に位置する。
とか何とか言ってたな、と今更ながら思い出す。

住人にとってこの季節はまだ肌寒い事だろう。
しかし今のノアにしてみれば火照った体にヒンヤリしたこの空気が心地よく感じ、再びノアは眠りについた。




が、その1時間後に全身の傷が熱を持ち、強烈な発熱で目を覚ますが、意識は朦朧としている。

意識がハッキリしていない為か<苦痛耐性>も<激痛耐性>も上手く発動しない。

結果、熱に浮かされ身動ぐが、全身の傷口が開き激痛を伴う悪循環に悩まされる事になった。


<…い熱じゃのう…>
<大の…も耐…て…>
<…ストロ…氷…>
<はいよ…>


少しすると体のあちこちがヒンヤリと冷えていく感覚を覚える。
誰かが…クリストロという妖精が氷を出してくれたのかも知れない。

ぺたっ。

両頬にヒンヤリと何かが触れる。
ヴァンディットが湿布か何かを作ってくれたのだろう、か…

<…心…て……下…>

何か聞こえた様な気がしたが、先程までの熱が嘘の様に引いていき、今度こそノアはぐっすりと熟睡する事となった。
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