ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
197 / 1,117
フリアダビア前哨基地編

困り顔のエルグランド

しおりを挟む
バラス、アルキラー夫婦が参加すると聞いた時は貴重な戦力として2人を歓迎した物だが、少し冷静さを取り戻した所で現在は困り顔のエルグランドがそこにいた。


「…しかし良いのですか?
あなた達は本来解体師として前哨基地に来たのに、戦闘にも参加して頂いて…」

「気にしなーい、気にしない。」

「本業は冒険者、解体師はあくまで趣味ですので…
それに、持ち込みが無いとその間は手が空いてますからね。」

「…であれば宜しく頼む。」


何故か言葉に詰まるエルグランド。
そんな事気にせず会話を続ける2人。


「共闘なんて久し振りね。」

「ああ、そうだな。
最後に一緒に戦ったのは、ここ(異世界)に来て3ヶ月目位の時かな?」

「そうね、もう5年経つのね~。
組織時代の腕前落ちてな~い?、シリ"アルキラー"(連続殺人犯)さん。」

「それを言ったら君だって。
組織時代の力強い戦い振りを見せてくれよ?
バラス(殺す・解体)ちゃん。」

「も~、ちゃん付け止めてって言ったじゃな~い。」


端から見ればキャッキャ言い合っている仲が良い夫婦にしか見えないが、漂う雰囲気がそれとは全く違う物だった為、違和感を覚えるエルグランドだった。

(この2人時折ヤバい空気漂わせるから怖いんだよなぁ…)







「あ、どうもお待たせしてすいませんノア君。」

「いえいえ、それで協議の結果どうでしたか?」

「ああ、街には3時間程で防具、皮革加工、彫金加工の職人、その他職人が来る様です。」

「そうですか、助かりました。」


ノアはエルグランドとの協議が終わったバラガスの元へと来ていた。
2、3協議の結果を報告すると、突然ノアに対して深々と礼をし出した。


「ど、どうしたんですか?突然…」

「…オードゥスでのノア君との商談の後、直ぐ様あの素材『鎧蜂の腹甲殻』を使って1つ防具を作らせて頂きました。
とても美しく、気品のある物に仕上がり、とある国の騎士様の目に止まりました。
ある意味その方が広告塔となってくれたお陰で我が商会の客足は伸びる一方となりました。
あの時私の露店に立ち寄って頂き、誠にありがとうございます。」


そう言って再び深々と礼をされた。


「ははは、大袈裟ですよ。
バラガスさんの商品は高性能ですから、僕が関わって無くても何れは良い方向に向かってたと思いますよ。」

「いえいえ、そんなそんな…」

「いや、本当ですよ?
自分ここ3週間位の間に10回位爆裂魔法食らってますけど、誤作動とかありませんし…」

「…ノア君、一体どんな冒険者生活送ってるんですか…?」


そんなこんなありつつ話が進むと、どうやら事業が上手く行っている様で、ノアにお礼として渡したい物があるらしい。


「いやいや、お礼とか見返りを求めていた訳では無いので…」

「いえ、受け取って頂きたい。
今度売り出そうと思っている新製品です。」


ノアにとって大した事をしたつもりも無いので断ったのだが、あまり断り続けるのも申し訳無いので受け取る事にした。


「これが我が商会の新製品『転移の腕輪』にございます。
申し訳ありません、出来てまだ日が浅い物で割とそのままな名前ではございますが…」

「『転移の腕輪』…ですか…」

「はい。
先程お話しました、とある国の騎士様からのご相談で『強力なモンスターと戦う際に武器を弾き落とされた場合の対策を取りたい』となかなか無茶な相談をされまして…」

「確かになかなか無茶な話ですね…それで出来たのが、コレですか。
どう使うのですか?」

「それではまず使用したい武器をお貸し下さい。」


バラガスに促された為、腰に提げていた阿羅亀噛を地面に突き刺す。


「滅茶苦茶重いのでこのままでお願いします。」

「は、はぁ…」


阿羅亀噛の特徴を知らないバラガスは少し困惑したが、柄の部分に転移の腕輪を装着した時に剣がピクリとも動かなかった事で色々と察した様だ。


「では次に利き手の手首にもう一方を装着します。」

カチャリ キュルル


ノアの右手首にはめられた腕輪はノアの腕に合う様に自動で調節されていく。


「その状態で一度剣を握ってみて下さい。」


バラガスに言われるままに阿羅亀噛の柄を握ると、2つの腕輪が光出す。


「はい、これで位置が登録されました。
さてそれでは説明に入らせて頂きます、まずこの腕輪には2つの機能がございます。
それは『転移する』と『転移させる』の2つにございます。」

「『転移する』『転移させる』…ですか?」

「はい、では始めにその剣を地面に刺し、少し離れた場所にお立ち下さい。」

ザスッ!スタスタスタ…

「これ位で良いでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。」


地面に突き刺した阿羅亀噛から離れる事およそ10メル。


「先ずは腕を伸ばした状態で剣の柄を掴む動作をして下さい。」

「こう…で『バシュッ!』すか、って、うわっとっと!?」


ノアが掴む動作をした瞬間、視界が一瞬で変化して剣を握った状態で剣の場所まで転移していた。

ノアは先程立っていた場所と今立っている場所とを交互に見て、何が起こったのかと呆気に取られていた。


「最初は困惑されるかと思いますが直に慣れるでしょう。
次はまた先程と同様に地面に剣を突き刺して離れて下さい。」

ザスッ!スタスタスタ…

「では今度は弓を引き絞る様に腕を引いた状態で、剣の柄を掴む動作をして下さい。」

「…えっと、弓を引き絞る様に腕を引いた状態で、柄をに『バシュッ!』ぎると…おおー!」


今度はノアの立ち位置はそのままに、剣の方がノアの手の中に転移していた。


「なるほど、剣を掴み取りに行く動作で、自分を転移させ、剣を引き寄せる動作で剣の方を転移させるのですね。」

「飲み込みが早うございますね、流石でございますね。
ただ、乱発はしない様にして下さい。
転移するのも、させるのも魔力を消費致しますので。」

「分かりました、その辺りは実際に使ってみて探ってみようと思います。
それで、この商品はお幾らになりますか?」


このノアからの質問にバラガスは無償でお譲りします、と答えた。
バラガスからの厚意に感謝して頂く事にしたのだが、ふと本来の価格は幾らなのかと気になったので聞いてみる事にした。


「価格ですか?
…まぁ割と無茶な案件というのもあって採算度外視で作った物ですから、それ1組で300万ガル程「ぶほっ!?」にはなるかと…ど、どうされましたか…?」


バラガスは制作当時の事を思い出そうと顎に手をやりつつ価格を口に出した所、ノアが突然噴き出し地面に手を付き項垂れた。

ノアの身を案じて近付くと、ガシリと肩を掴まれ


「払います!いえ、払わせて下さい!
300万ガルの物を無償で貰って、平然と出来る程肝は据わってないんです!」

「は、はぁ…分かりました…」


バラガスに詰め寄ったノアは、割と懇願気味に言った為か直ぐに了承してくれた。
この流れでノアは転移の腕輪をもう1組と、余剰魔力を溜め込める魔石の改造を施して貰い、合計700万ガルの買い物となった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...