ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

無事だったんだね

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「あ!クック、無事だったんだね!?
それにノア君…ってギャーッ!?後ろのそれ何!?」


【料理人】ギルドに到着すると、中では同ギルドメンバーのレイルが心配そうに待っていた。
クックが建物に入ってくると思わず駆け寄って来たが、ノアの契約獣のグリードを見て悲鳴を上げていた。

仕方無くグリードは建物の外で一旦待って貰い、後で屋台で買った食事を上げに行くとする。

クックはレイルを落ち着け、一通り事のあらましを話した後、何か適当に作ると言って厨房へと入って行った。

クリスは直ぐに戻ると言って【彫金加工】ギルドへと向かい、安否を伝えに行った。 

クロラ達は建物内に入ると各々席に座り、一息入れる。


「「「「あー…何か疲れた…」」」」

「皆お疲れ様。」

「逆、逆。少年は言われる側よ。」

「んもぅ、ビックリしたわよ。
皆帰って来たと思ったら何か後ろから着いて来てるんだもん…」


レイルはそう言いつつ皆にお茶を出す。


「そう言えばクック、妹さんの彼氏は居たの?
しょーもない奴だったらブッ飛ばす、って躍起になってたけど。」

「へ?あ!いや、それは…」

「え?僕ぶん殴られるの?」

「え?…って事はノア君が妹さんの…?」


取り敢えずクックはレイルとノアに説明をし、ノアは兄としての心情を察して特に気にする事は無かった。
が、クロラはやはり何か企てていた事に呆れていた。

と、話が一段落した所で徐にノアが声を掛ける。


「さて、取り敢えず建物内に入ったからさっき話に上がってた人を紹介するよ。
ヴァンディット、皆に挨拶を。」

「はい、ノア様。」


ノアが声を掛けると、足元の影から漆黒のドレスを纏ったヴァンディットが姿を現した。


「「「「おぉー…」」」」


ヴァンディットはノアの影から出て皆の前に立つと、ドレスの裾を摘まんで会釈をする。


「ノア様のお友達の方々、始めまして。
私はノア様の体調管理や使用される薬品等の製作に携わっています、吸血鬼のヴァンディットと申します。」


初対面のクロラ達は分かるが、1度顔を合わせているハズのレイルやクック達ですらヴァンディットが姿を現すと、思わず見蕩れていた。

普段落ち着き払っているジェイルが頬を赤らめているのを見たロゼとポーラは、テーブルの下でジェイルの脛を蹴りつけ、ジェイルがもんどり打っていた。


「「「うわぁー…凄い美人…」」」

「うふふ、ありがとうございます。」


女3人寄れば何とやらとはよく言うが、あっという間にヴァンディットはクロラ、ロゼ、ポーラに囲まれ、質問責めに合う事になった。

割と直ぐに白熱した様なので、ノアは一旦外に出てグリードの元へ。





表に出ると、グリードがとぐろを巻いてじーっと待っていた。

その光景を通行人や野次馬が遠巻きに眺め、「アレは一体何なのだろう」と、考えを巡らせていた。


「お待たせ、グリード。
お腹空いたろ、さっき買った物今食べちゃおうか。」

グルル。ガバァッ!

グリードが口を開けたので、アイテムボックスから焼き鳥200本を取り出して串ごと投入。

むしゃむしゃミシミシッむっちゃむっちゃ…

「どう?美味しい?」

グー。

どうやら美味い様だ。
先程ノアも食べたので、美味いのは確認済みである。
じっくり火を通してあるので、とても柔らかく、脂身が甘く感じる。

続けてケバブ、鶏の丸焼き、カラメル牛のカツサンドも同様に次々と投入すると、むしゃむしゃと食べていく。
丸焼きは骨ごと行っているが、全く問題無い様だ。
カラメル牛とは、王都周辺で良く見られる牛らしく、毛色が煮詰めたカラメル色をしているとの事で割と需要があるらしい。
だが気性が荒く時折討伐の依頼が来る様だ。

(後で冒険者ギルドに寄って依頼出てないか見てみよう。)

その後、ノリで買った猪の丸焼きをズルリと取り出す。
恐らく腹の中に香草を詰めているのだろう、香ばしい香りが食欲をそそる。

猪の胴体はグリードの口よりも大きかった為、少し切り分けようと思ったのだが、既にガパッと口を開けていたのでそのまま頭から口に運んでやった。

ガシュッ!ゴグンッ

蛇が卵を飲み込む様に、一気に頬張ると、口の中から圧縮する様な音が響く。
そのまま嚥下したグリードは、満足したように喉を鳴らして足元に魔法陣を展開し、地面に潜っていった。


「今日はお疲れ様~。」






カランコロンカラン


ノアが【料理人】ギルドへ戻ると、クックが簡単なシチューを作り終え、ジェイルと共に配膳をしている所であった。

クロラ達は未だにヴァンディットを囲んで何やら話に華を咲かせている。

少しするとクリスも戻ってきたので、皆席に座って食事を摂る。
その席にはヴァンディットも同席する事になった。







「そういえば皆はこれからの予定とかは決めてるの?」


レイルが話の種として皆に今後の予定を聞いてきた。


「私達は1~2日位のんびりしたら何か依頼を受けようかなーって。ね?ジェイル。」

「そうだな、装備はオードゥスで一通り作ったから、どこまで通用するかの確認で幾つか受けるつもりだ。
ノア君はどうするんだい?」

「自分は、恐らく今日の事で数日は外での依頼とか受けれないだろうから、街の中で出来る依頼とかあったら受けるつもり。
あと、さっきの戦い見て貰ったから分かるだろうけど、この防具、普段使いし辛いから下方修正して貰うよ。」

「確かに結界張った上でアレだものね…
…と言うか少年よ、その防具は何の素材で出来てるんだい?
オードゥスに居た時はあの爆発(?)か何かを起こした事無かったし、久しぶりに会って変わってる所なんて防具位だし、あの尋常では無い殺気もそれに関係してるんじゃないの?」

「はは、相変わらず鋭いねポーラは。
でも申し訳無いけど、今は話す事は出来ない。
近々色んな人に声掛けて、話を進めようとは思ってるからそれまで待ってて欲しい。」


ノアが真剣な顔で話すので、ポーラはそれ以上の追求はしなかった。


「少年がそう言うならそうしときましょ、つまりそれだけの代物、厄介な物って事でしょうからね。」

「察してくれて助かるよ。
取り敢えずこのシチューを戴いたら僕は早速行動に移すとするよ。」

「今日は色々あったんだからゆっくりしてっても良いんだぞ?」


クックがノアを気遣ってそう言い聞かせるが、ノアが建物の外を指差すのでそちらに視線を動かすと、外は人混みで溢れ返り、外から中を見てきていた。


「これ以上居ると迷惑掛かりそうですからね、暫くは影移動や<縦横無尽>を使って街に潜んでます。
皆さんの所には定期的に顔を出しますので、用があればその時にでも。
さ、ヴァンディットさん、行きましょうか。」

「はい、ノア様。」


ノアはヴァンディットと共に席を立ち、建物の出口へと向かう。
外にいる野次馬はノアが表に出て来るので、俄に色めき立っている。


「クックさん、料理美味しかったです、また来ますね。」

トプン…

そう言い残してノアとヴァンディットは影の中へと潜っていった。
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