ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

【弓】ギルド

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クロラ達と別れ、冒険者ギルドを出たノアは道なりに歩きつつ、【弓】ギルドの建物へと向かう。

【弓】ギルドへは初めて行くのだが、方々から何人かの冒険者がとある建物を目指し集結ていたので直ぐに分かった。

既に<気配感知>内に30人程が集まっている様だ。

(そう言えば何人集まるかは聞いていなかったな…)

そんな事を考えながらも弓の意匠が彫られた看板を見付けた。
その上、弓の様に遠距離武器系の建物は他のギルドに比べ、広めに造られているとの事。
その為両隣にある【剣士】【斧】のギルドよりも大きいので直ぐに分かった。

ちなみに広い造りのギルドは、パーティの模擬戦会場としても使われる事があるとか。



ガチャリ

「失礼しま「「「おお!来たぞ!」」」」


【弓】ギルド内に入ると、色々な【適正】の冒険者がノアが来るのを今か今かと待っていた様で、ノアの挨拶に食い気味で声が掛かった。

(10、20…うぉぉ、50人位居るじゃん…
パーティ数で言えば最低10パーティって所か。)

「えーっと、戦闘訓練依頼で来ましたが、僕をエリアボスに見立てて戦うとかで…」


そう言うと、集団の中から大剣を背負った冒険者が1人前に進み出た。


「初めまして、俺は中級冒険者のレドだ。
俺らは今度パーティで北方にある獣系ダンジョン踏破を目指すつもりなんだが、そこのエリアボスにミノタウロスの上位種のマッシヴ・ミノタウロスってモンスターが居るんだ。
昨日の御前試合で召喚されたミノタウロスを事も無げに屠ったお前さんなら、練習相手に良いんじゃないかと思ってな。
元々は俺らだけが依頼を出してたんだが、続けとばかりに他の連中も依頼を出したんだ。」

「で、こうなったと…」

「…そう言う事だな…」


会話をする2人の後ろでは、60人程の冒険者が集まっている。
「次は私達が」「いや、俺らだ」と言う様に順番決めを行っている所だ。


「分かりました。
…それで、どこでやるのですか?」

「話が早くて助かる。この建物の奥に地下へと続く階段があるのでそこを下りれば昨日の試合場と殆ど同じ広さの場所がある。
【魔術】ギルドの方達はもう下に下りて、結界やらの準備を進めている。」


冒険者のレドに促され、奥へと進み、階段を1分程下って行くと、確かに御前試合が行われた試合場よりは狭いが、戦うには十分な広さの場所に出る。

広さは50メル四方で、天井まで20メル位あるので、三次元的な戦闘が可能である。
試合場には【魔術】ギルドだろうか、10人程の者達が結界や術式に魔力を込めている。


今更ではあるが【魔法使い】と【魔術】の違いだが、魔法を用いて戦闘を行う職を【魔法使い】。
魔法を戦闘以外の目的で用いる職を【魔術】としている様だ。


「レドー、アンタん所最初でしょ?こっちは準備出来たからいつでも良いわよ!」


【魔術】ギルドの1人がレドに準備完了の合図を送る。
それを合図に【剣士】のレドの元に【神官】の女性、【斧】だろうか身の丈もある斧を担いだ女性、【弓】の男性2人が集まる。


「今回の依頼内容だが、君をエリアボスと見立てて戦うのもそうだが、君が感じ取った物を教えて欲しい。要は粗探しだ。」

「敵側の視点から意見が欲しいという訳ですね?
でも良いのですか?新人冒険者である僕が皆さんに意見とか…」

「昨日の戦いっぷりを見て文句言う奴なんか居やしないさ。
何ならここに集まっている奴ら皆俺らと目的は同じだろうぜ。」


周囲の冒険者達を見ると、集団の大半がウンウンと首を動かしている。


「分かりました。
若輩者ではありますが、この依頼務めさせて頂きます。」


そう言って試合場の中へと入るノア。
一応エリアボスと言う役割なので試合場のやや奥へと向かう。

続いて依頼主の5人も入場する。


「この試合場は昨日の御前試合同様『致命傷無効』を付与しています。
他に何か掛けておく物あれば今の内にどうぞ。」


【魔術】ギルドの者達が声を挙げる。
レド率いる5人パーティは首を振り、特に無いとの意を示す。
が、ノアは注文がある様で


「すいません、武器破壊不可とかありませんか?」

「武器破壊不可ですか…調度品を保護する様な魔法があるので、それで代用しましょう。
…と言うか、壊すのですか?」

「僕のこの剣、今の所何やっても壊れないので、念を入れての保険です。」


ノアは腰の荒鬼神をポンポンと叩く。


「すいません、皆さんの討伐目標であるマッシヴ・ミノタウロスの特徴を教えて頂いても良いですか?」

「特徴…立ち上がると3メル程の体躯で、武器は使わず素手のみ。
その代わり腕が4本生えていて、通常のミノタウロス以上の筋量を持つ。その上俊敏だ。」


マッシヴ・ミノタウロスの特徴を聞いたノアは少し考え、弓、刺突武器、カランビットナイフ、荒鬼神全てをアイテムボックスへと仕舞う。


「お、おいおい、無手でやるつもりかい?」

「なるべく実戦と同じ状況の方が皆さんの為にも良いでしょ?
…ただ、身長は伸ばせませんが…」


と、ノアの眼が徐々に赤黒く染まっていき、体に赤黒いオーラを纏い出す。
その赤黒いオーラが肩甲骨辺りに集まり2本の腕を形成する。


「「「「「おぉお…」」」」」


御前試合の場でノアが見せた変容ぶりに、5人パーティはおろか、集団からも声が上がる。


「よし、こちらは準備終わりました。
いつでも良いですよ。」


肩や腕を回し、筋等を軽く伸ばした後、ノアはダラリと腕を垂らして立つ。

30メル程離れた5人は各々武器を手にした直後

ダンッ!
ズダンッ!

大剣を担いだレドとの背後を【斧】の女性が追う形でほぼ同時に駆け出す。
その後方から【神官】からの支援魔法が届く。


「<光の守り><身体強化><剣強化付与>!」

(始まったか)

と、ノアが思った直後、ノアの両脇に矢が降り注ぐと陣が形成される。

(これはクロラさんが前に使ってた<矢水垂>だな、こちらの動きを阻害しに来たか。)

タンッ

陣の範囲外に出る様に、後ろへ後退する。
すると、レドと【斧】の女性の進行方向に陣が張られている為、迂回する形となる。

ザザサッ!
ズザザッ!

先に到達したのは斧を担いだ女性の方で、ノアの左側面にやって来る頃には斧を振り被っている所であった。


「はぁああああっ!」ブォンッ!
「シッ!」バチンッ!


ノアの左肩目掛け振り下ろされた斧の側面を叩き、軌道を逸らす。

ズガンッ!

空を切った斧が地面に突き立ち、【斧】の女性の動きが僅かに止まる。

バシィッ!「きゃっ!?」

咄嗟にしゃがみ込んだノアが足払いを仕掛ける。
【斧】の女性は倒れこそしなかったが、バランスを崩してその場でたたらを踏む。

ズダンッ!

地面を蹴ったノアは、右側からやって来るレドへと勢い良く駆け出す。

ドッ!ドドッ!ドッ!

【弓】2人が矢を雨の様に降らして来るが、致命の物以外は無視して直進。
勝手な思い込みだが、ミノタウロスならこの程度の攻撃は避けないだろう、という考えの下行っている事である。

ギリリッ…「!?」

ノアが右拳を握ったのが見えたレドは、直ぐ様背中に背負っていた大剣を抜き、盾代わりに自身の前に構える。

(うーん…)

ガィンッ!「ぬぐっ!」ズズズ…

盾代わりの大剣を殴り付けられたレドは、何とか受け止めるも

スゴンッ!「ぅおっ!?」

<渾身>を発動させ、更には生成した赤黒い腕で同時に殴り付けられたレドは踏ん張りが一切利かずに吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。


「くっ…」


強かに体を打ち付けたレドが立ち上がろうとすると


「ちょっと待って下さい。」


ノアから制止の声が上がった。
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