ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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再びアルバラスト編

戦闘開始33分頃

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戦闘開始33分頃。

丁度【忍】の『不忍殺』が口寄せで喚び寄せたヤマタノオロチを討伐するべく、ノアが突撃を仕掛けた辺り。

超巨大なヤマタノオロチが出現した事に驚く観客、輩共、冒険者達だが更に驚かされたのは、周辺一帯を飲み込む程の火炎ブレスを吸収した『蛇』の様な生物と、諸に攻撃を受けたハズのノアが猛然と攻勢を開始した事である。

多かれ少なかれ"野盗200人殺し"や【鬼神】の噂を耳にしていた者達も、今までの戦闘実績を目の当たりにした観客達は沸きに沸いていた。


「うぉおおーっ!凄ぇーっ!」
「噂以上じゃないか!」
「…ってかさっきの爆発何なんだよ…」
「ママ凄いね、人間がゴミの様に飛んでったよ!」
「そうね、ちょーっと教育に宜しくないからおもちゃ屋行きましょーね。」


感想は様々だが取り敢えず盛り上がっていた。

かと思えば、顔を真っ青にして静まり返っている者も居る。


「な、何なんだよアレ…」
「ふ、ふざけんな、"野盗200人殺し"って通り名、ガセのハズだろ!?」
「支援魔法受けててもあんな攻撃食らったら死んじまう!!」
「俺は降りるぜ!」
「お、俺もだ!ギルドへ行って取り消しに行って来るぜ!」


ノアの圧倒的な戦闘力に蹴散らされた先陣を目の当たりにし、完全に怖じ気付いた輩共約90人は次から次へと冒険者ギルドに駆けていく。

だが


「依頼の取り消し?
分かった、その代わり違約金10万ガル払いな。」

「「「「「じ、10万ガルぅっ!?」」」」」


お遊び感覚で請け負ったノアの討伐依頼を断りに来た輩共は、全員目をひん剥いてカウンターにドカッと座るワークスギルド長に詰め寄る。


「あったり前だ、依頼不履行のまま、はいさようならとなる訳無いだろ!」

「ふざけるな!そんな額払える訳無いだろ!」

「あ?もう依頼自体は始まっちまったし、被害が出てるのにタダで済むと思ってんのか?」

「お、横暴だぞ!」

「横暴?お前ら外で戦ってる討伐対象に同じ事を言えるのか?
あの坊主には今回全くメリットが無いのにテメェらのお遊びに参加してやってるんだぜ?
違約金払えねぇって言うなら、せめて外に行って1発ぶん殴られて来い。」


未だ外から聞こえるヤマタノオロチの悲鳴とグリードによるプラズマレーザーの発射、それによる破壊の轟音に微震が街の中央に位置する冒険者ギルドにも響く。


「む、無理だ…あんな所に行ったら死んでしまうだろ!」

「安心しろ、街の冒険者にお願いすれば蘇生魔法放ってくれるらしいから、ある程度バラバラになっても30分以内なら生き返れるだろうさ。
但しタダじゃねぇ、大負けに負けて10万ガルで請け負うとさ。」

「ふ、ふざけんなぁっ!結局10万は払うんじゃねぇか!
付き合ってられるか!皆行こうぜ!」
「おうさ!」
「おお!」


 輩共が声を挙げ、違約金を踏み倒して外に出ようとすると


「言質取ったから現行犯で良いよな?」


ズズズズズズズズ…

「「ひっ!?」」
「うわあっ!?」
「ひんっ!?」
「うおっ!?」


誰かの声と共にギルド内の輩共に強烈な殺気が当てられ、動けなくなる。


「ギルド長、今しがただけ抜刀の許可を頂きたい。」

「おう、一瞬だけな。」

「「畏ま『『キン!』』った。」」


誰かがギルド長に承諾を受けた直後、2人同時に刀を抜く澄んだ音がギルド内に響く。


『『カコ…。』』

ドッ、ドサッ、ドササササッ!

「おぅ、コイツらを牢屋にぶち込んで欲しいんだが、誰か兵士を連れてきてくれないか?
…済まなかったな2組共。」


ワークスが周囲の職員に兵士を呼んでくる様に頼むと、事態を収拾させた2組に向き直る。


「いやなに、俺らもあの少年と戦ってみたくてここに来たんだが、来てみたらあの状態だろ?
騒がしいったらありゃしないから勝手に介入したまでだ。」

「「右に同じく。」」

「はっ!上級冒険者2組も"野盗200人殺し"目当てか。」

「いや、俺らは【鬼神】目当てだ。」

「ほぅ…」


カウンターの前に立つ2組のパーティ。

1組目は、身長2メルを越え、筋骨隆々な体躯に鉄色の重鎧を纏った大柄な男性。
背中には身の丈程もある巨大な斧2本を交差させる様に背負っている。
後ろには【魔法使い】だろうか、ローブを纏った女性3人を侍らせている。


2組目は、腰に二刀の刀を差し、頭に2本の特徴的な角を生やした鬼人族の壮年2人組。
2人共、和装の着流しと言うかなりの軽装である。

2組共早く戦いたいのか外の様子を頻りに確認してウズウズとしている様だ。

すると


「おおーっ!6本目の頭が潰されたぞーッ!」


外から観客の歓声が聞こえてきた。
丁度【一鬼呵成】を発動したノアが首を撥ね飛ばせる速度にまで達した所である。


「あっちもそろそろ終わりそうだな。
つー訳でギルド長、俺らは行くぜ?」

「「拙者らも向かうとしよう。」」

「おぅ、急いだ方が良いぜ、あの坊主に余力があれば"アイツら"も参加するみたいだからな。
健闘を祈る。」

ガチャ…バタン…

2組は急ぎ足で、巨大な斧を背負っていた男性のお伴である3人の女性【魔法使い】は、恭しく頭を下げていった。





その冒険者ギルドの屋根の上には、北門に人が集まり過ぎてノアの戦いっぷりを見れないクロラ達が登り、<千里眼>を発動して眺めていた。

因みにヴァモスとベレーザは種族的に目が良いらしく普通に見えるそうだ。


「暴れてるわね、少年…」
「ああ…御前試合の時もそうだったがやはり滅茶苦茶強いな…」
「契約獣の攻撃を意に介してないねー…」
「…凄い…強いのは知ってましたが、これ程とは…」
「凄いにゃ…あ、7本目の首が落ちたのにゃ…」
「うーん…ノア君大丈夫かな…」


皆呆然としつつ思い思いに感想を溢す中、クロラだけは心配の声を上げていた。


「いや、大丈夫でしょ。一方的な展開よ?」

「あ、その辺りは心配してないの。
前にノア君、あの状態を維持するの結構しんどいって言ってたからそっちの方が心配で…」

「うーんー、見た感じピンピンしてると思ーけどねー。」

ズルッ

「その辺りは私が御説明しましょう。」

「「「「「「おわっ!?」」」」」」


突然皆の影からヴァンディットが姿を現す。


「そっか、ノア君の健康面を見てるヴァンディットさんなら何か知ってるかも…」

「ええ、私が初めてノア様とお会いしたのも野盗殲滅戦の時でしたが、その頃のノア様の疲労物質の量は常人ではあり得ない程…全く動けなくなる程の量が蓄積されてました。
王都で海洋…鉱山に行かれた時を境に変化が見られ、今ではあのお姿でも常人と変わらぬ程にまで落ち着きました。」

「その鉱山?に行った時に何かあったの?」

「詳しい所までは分かりませんが、何か転機になる様な事が起こって、今は非常に安定した状態です。
つまりあの状態が通常状態となる可能性があります。」

「ほー…」

「あの状態が通常状態ねぇ…」


ヴァンディットの話を聞いた全員は、視線の遥か先で赤黒いオーラを全開に立ち昇らせて荒鬼神を振り上げるノアを見詰めていた。
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