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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~
ドスッ!ドスッ!
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…ガゴッ!ガギッ!ボゴッ!ドスッ!ドスッ!
「85、86、87、88、89…」
ゴッ!ガガガッ!ゴガッ!
「90、91、92、93、94…」
〝オォオラアッ!〟ゴガンッ!
「95。」
〝何でてめぇはこんだけぶん殴ってるのに悲鳴も上げず、許しを乞う訳でも無く、無表情のままなんだよ!?〟
ドガンッ!
「96。」
マディアから拳を80発、触手での叩き付けを8発、毒攻撃ありの突き刺しを8発も食らったノアは、頭部から血をダラダラと流しながらも、表情は一切変わらず、ただただマディアを睨み付けていた。
「ほら、あと4発。
4発しか無いんですよ?あなたの力はこんなものですか?」
〝う、うるさい!糞っ!糞ぉっ!〟
人質を取っているマディアが有利なハズなのだが、煽り耐性の無いマディアは徐々にノアのペースに呑まれ始めていた。
(良いぞ、ラインハードさんを拘束している触手が緩んできた。)
(『だからっつってよ、わざわざ殴られる事は無いんじゃないか?』)
(仕方無いでしょ?
ヴァンディットさんやグリードはダンジョンの中には入ってこれなかったみたいだし。)
(『つったってなぁ、割と俺はコイツに腹立ってんだぜ?
か弱いお姫さんを人質にした上に盾にするとは…
それに主のやり方で解放の手筈を探ってるから俺は口出ししないが、今こうして殴られてるのだってかなり頭にきてんだ。
あと1つでもコイツが何か仕出かそうものなら流石に"アレ"使え、俺が"やる"。』)
(あぁ、分かった。)
〝あぁあああああっ!!〟ガゴンッ!
「99。
次だ、もう次で"約束"の100回目だぞ?」
〝糞っ!チクショウメェッ!〟
そんな"約束"をした事は無いが、既にノアのペースに呑まれたマディアは追い込まれていた。
これで先程同様マディアの気が緩んだ所で救出に向かえれば良いのだが、ここぞと言う所で悪い方向に話が展開していく。
〝違う…アンタはこんな事じゃ相貌を崩す事なんてしない…
そんな事今までの対応から分かっていた事じゃない…〟
(げ!?)
(『あ!』)
〝アンタの相貌が崩れるのは、大切に守っていた"存在"が傷付く事…
この女を捕らえた時のアンタの慌て様を見れば当然の事…〟
(『マズイ!主!急いで"アレ"を発動して行動を開始しろ!』)
シャキンッ!
〝始めっからこの女を痛ぶれば良いだけじゃない…〟
マディアは触手の先端を拘束しているラインハードへと向け
(了解!それじゃあ"任せたぞ"!)
(『あいよ!』)
〝くけけけ!せいぜい良い表情で哭いて頂戴…〟
「…、…!?」
バシュッ!〝!?〟「!?」
「ぅぐっ…お姫さんを返して貰うぞ!」
先程マディアにぶん投げた荒鬼神に転移したノアは、ペースに呑まれ触手の拘束が緩んだ所を狙い、ラインハードを引き剥がす。
ブォッ!
〝糞っ!貴さ『ガシッ!』な!?何だお前は!?〟
ゴッゴッゴッ…
ラインハードの救出に来たノアへ向け、全ての触手を伸ばし、攻撃を仕掛けるマディアだが、視界の外から伸びた赤黒い腕に顔面を掴まれ、部屋の奥へと連れていかれる。
マディアの体は、最適化され、その上上半身だけとは言え機兵である。
その重量は相当な物だが、その赤黒い腕の人物は4本ある腕の内、1本のみで持ち上げ悠々と歩いていった。
「げほっ…遅くなりました。
…大丈夫ですか、ラインハードさん?」
「それは冒険者さんの事です!
あぁ、何か止血出来る布か何かを…」
「あ、お気になさらず。
回復玉を2、3個放り込んどけば止まりますし傷も塞がります。」
「それでもあれだけ殴られれば…」
「ふふん、力を逃がしてたので見た目程ダメージはありません。
それより毒の方がキツイですね。
多分毒消しだけじゃ、毒が抜けきらないでしょう。」
ノアはラインハードを救出した後床にドカリと座り込み、朦朧とした意識を立て直そうとしていた。
「それであれば、道中で『錬金石ディジントキシ』がありませんでしたか?」
「え?…あぁ、何か図書館みたいな所で手に入れた…」
「はい、私の元書斎です。
アレを体に取り込めば回復は早いですが、身に付けているだけでも効果があります。」
「あ、分かりました…」
ラインハードの言葉を信じ、アイテムボックスから『錬金石ディジントキシ』を取り出したノアは胸の位置で持って経過を見る事にした。
『錬金石ディジントキシ』…昔、機兵製作に長けたとある国の女王が劇毒に侵された際、国中の【錬金術】の者達が総力を挙げて製造したとされる錬金石。
ホワワ…
「ヒュー…ヒュー…」
「スー…ハー…
本当だ、あっという間に呼吸が楽になった…」
「うふふ、そうでしょう。
国の【錬金術】のみならず、民全員が私の事を思って作り上げた逸品ですから。
…本当良い民達でした…」
そう言って何処か寂しそうな表情で呟くラインハード。
そんな雰囲気を切り替える為、ノアが下ろしていた腰を上げて声を掛ける。
「…ぃしょっと…
積もる話もあるでしょうが、一先ず後にしましょう。
どうやら"連れ"が来たみたいです。」
「あ…あ、そうでした!
そういえば先程の"あの方"はどなたですか?
今まで姿が見えませんでしたが…」
座り込んでいたラインハードが慌てて立ち上がりつつ、先程現れた赤黒い腕の人物について問い掛けてきた。
「んー…ちょーっと説明がややこしいのですが…」
ノアが顎に手をやりつつ、「どう説明したものか…」と思案していると
〝う、うぅぅ…〟
『よぅ!そっちはどうやら事無きを得た様だな!』
明るい口調で部屋の奥からやって来た"赤黒い人物"の手には、腕と触手を全て引っこ抜かれ、頭部と胸部装甲のみのマディアをぶら下げていた。
"赤黒い人物"の見た目としては、特徴的な鋭い一本角が額から生え、肌は全体的に赤黒く、目は漆黒に染まり瞳は金色に光っている。
腕は4本生えており、服の代わりなのか【鬼鎧殻】を身に纏っている。
そして何故か顔や背丈が"ノア"そのものなのであった。
「……。」
『……。』
「初めまして。」ペコッ。
『おぅ、初めまして。』
「えっ!?初対面なんですか!?
と言うか顔がそっくりで…兄弟さん?
アレ?でも初めまして…って…アレレ?」
"赤黒い人物"とノアの挨拶を見て混乱するラインハード。
『まぁ、その辺は後で話すとして、先にコイツの"処理"を済ませちまおう。
お姫さんよ、コイツの中にある魔石を破壊すりゃコイツは動かなくなるんだよな?』
「え、えぇ…その通りです。
ですが、高純度の魔石は非常に強固で、破壊するのは骨が折れるかと…」
『ふーん…』コッ。
ラインハードからそう説明された"赤黒い人物"改め"赤黒いノア"は、項垂れているマディアの胸部装甲に触れる。
ゴリッ…
〝え!?〟「「え…?」」
ノアやラインハードはおろか、マディアですら驚くのも無理は無い。
【鎧袖一贖】を発動したノアでさえ3発ぶん殴って突破した胸部装甲を、この"赤黒いノア"は事も無げに一掻きで削り取った。
〝ちょ、待『ペキンッ!』うっ『ズボッ!プチプチッ…』止め!待『カシュッ!』…〟
パラパラ…ガシャンッ!
『これで終わりだな。』
削って空いた穴に指を突っ込み、薄氷を割るかの様な音と共に装甲が剥がされ、動力源である魔石を引きずり出すと、マディアの懇願(?)に聞く耳も持たず、まるで胡桃を割るかの様な音を立てて握り潰した。
動力源所か、マディアも完全に消滅した機兵は力無く床に崩れ落ちていった。
『さて、お互い話す事もあるだろうから場所を移そう。
ここじゃなんだから1つ前の部屋にでも戻って…』
「それなら私にお任せ下さい。」
パンッ!
シュパッ!「『え?』」
と、ラインハードが手を叩くと、破壊の限りが尽くされた部屋が、初めてこの部屋に訪れた時と同様のレイアウトに戻っていた。
いつの間にかラインハードは椅子に車輪が付いた装置に腰掛け、2人を見やる。
「…先に、このダンジョンについて説明した方が宜しいですね。」
ラインハードは、この部屋に初めて訪れた時と同様の儚げな笑みを浮かべて話を始めたのであった。
「85、86、87、88、89…」
ゴッ!ガガガッ!ゴガッ!
「90、91、92、93、94…」
〝オォオラアッ!〟ゴガンッ!
「95。」
〝何でてめぇはこんだけぶん殴ってるのに悲鳴も上げず、許しを乞う訳でも無く、無表情のままなんだよ!?〟
ドガンッ!
「96。」
マディアから拳を80発、触手での叩き付けを8発、毒攻撃ありの突き刺しを8発も食らったノアは、頭部から血をダラダラと流しながらも、表情は一切変わらず、ただただマディアを睨み付けていた。
「ほら、あと4発。
4発しか無いんですよ?あなたの力はこんなものですか?」
〝う、うるさい!糞っ!糞ぉっ!〟
人質を取っているマディアが有利なハズなのだが、煽り耐性の無いマディアは徐々にノアのペースに呑まれ始めていた。
(良いぞ、ラインハードさんを拘束している触手が緩んできた。)
(『だからっつってよ、わざわざ殴られる事は無いんじゃないか?』)
(仕方無いでしょ?
ヴァンディットさんやグリードはダンジョンの中には入ってこれなかったみたいだし。)
(『つったってなぁ、割と俺はコイツに腹立ってんだぜ?
か弱いお姫さんを人質にした上に盾にするとは…
それに主のやり方で解放の手筈を探ってるから俺は口出ししないが、今こうして殴られてるのだってかなり頭にきてんだ。
あと1つでもコイツが何か仕出かそうものなら流石に"アレ"使え、俺が"やる"。』)
(あぁ、分かった。)
〝あぁあああああっ!!〟ガゴンッ!
「99。
次だ、もう次で"約束"の100回目だぞ?」
〝糞っ!チクショウメェッ!〟
そんな"約束"をした事は無いが、既にノアのペースに呑まれたマディアは追い込まれていた。
これで先程同様マディアの気が緩んだ所で救出に向かえれば良いのだが、ここぞと言う所で悪い方向に話が展開していく。
〝違う…アンタはこんな事じゃ相貌を崩す事なんてしない…
そんな事今までの対応から分かっていた事じゃない…〟
(げ!?)
(『あ!』)
〝アンタの相貌が崩れるのは、大切に守っていた"存在"が傷付く事…
この女を捕らえた時のアンタの慌て様を見れば当然の事…〟
(『マズイ!主!急いで"アレ"を発動して行動を開始しろ!』)
シャキンッ!
〝始めっからこの女を痛ぶれば良いだけじゃない…〟
マディアは触手の先端を拘束しているラインハードへと向け
(了解!それじゃあ"任せたぞ"!)
(『あいよ!』)
〝くけけけ!せいぜい良い表情で哭いて頂戴…〟
「…、…!?」
バシュッ!〝!?〟「!?」
「ぅぐっ…お姫さんを返して貰うぞ!」
先程マディアにぶん投げた荒鬼神に転移したノアは、ペースに呑まれ触手の拘束が緩んだ所を狙い、ラインハードを引き剥がす。
ブォッ!
〝糞っ!貴さ『ガシッ!』な!?何だお前は!?〟
ゴッゴッゴッ…
ラインハードの救出に来たノアへ向け、全ての触手を伸ばし、攻撃を仕掛けるマディアだが、視界の外から伸びた赤黒い腕に顔面を掴まれ、部屋の奥へと連れていかれる。
マディアの体は、最適化され、その上上半身だけとは言え機兵である。
その重量は相当な物だが、その赤黒い腕の人物は4本ある腕の内、1本のみで持ち上げ悠々と歩いていった。
「げほっ…遅くなりました。
…大丈夫ですか、ラインハードさん?」
「それは冒険者さんの事です!
あぁ、何か止血出来る布か何かを…」
「あ、お気になさらず。
回復玉を2、3個放り込んどけば止まりますし傷も塞がります。」
「それでもあれだけ殴られれば…」
「ふふん、力を逃がしてたので見た目程ダメージはありません。
それより毒の方がキツイですね。
多分毒消しだけじゃ、毒が抜けきらないでしょう。」
ノアはラインハードを救出した後床にドカリと座り込み、朦朧とした意識を立て直そうとしていた。
「それであれば、道中で『錬金石ディジントキシ』がありませんでしたか?」
「え?…あぁ、何か図書館みたいな所で手に入れた…」
「はい、私の元書斎です。
アレを体に取り込めば回復は早いですが、身に付けているだけでも効果があります。」
「あ、分かりました…」
ラインハードの言葉を信じ、アイテムボックスから『錬金石ディジントキシ』を取り出したノアは胸の位置で持って経過を見る事にした。
『錬金石ディジントキシ』…昔、機兵製作に長けたとある国の女王が劇毒に侵された際、国中の【錬金術】の者達が総力を挙げて製造したとされる錬金石。
ホワワ…
「ヒュー…ヒュー…」
「スー…ハー…
本当だ、あっという間に呼吸が楽になった…」
「うふふ、そうでしょう。
国の【錬金術】のみならず、民全員が私の事を思って作り上げた逸品ですから。
…本当良い民達でした…」
そう言って何処か寂しそうな表情で呟くラインハード。
そんな雰囲気を切り替える為、ノアが下ろしていた腰を上げて声を掛ける。
「…ぃしょっと…
積もる話もあるでしょうが、一先ず後にしましょう。
どうやら"連れ"が来たみたいです。」
「あ…あ、そうでした!
そういえば先程の"あの方"はどなたですか?
今まで姿が見えませんでしたが…」
座り込んでいたラインハードが慌てて立ち上がりつつ、先程現れた赤黒い腕の人物について問い掛けてきた。
「んー…ちょーっと説明がややこしいのですが…」
ノアが顎に手をやりつつ、「どう説明したものか…」と思案していると
〝う、うぅぅ…〟
『よぅ!そっちはどうやら事無きを得た様だな!』
明るい口調で部屋の奥からやって来た"赤黒い人物"の手には、腕と触手を全て引っこ抜かれ、頭部と胸部装甲のみのマディアをぶら下げていた。
"赤黒い人物"の見た目としては、特徴的な鋭い一本角が額から生え、肌は全体的に赤黒く、目は漆黒に染まり瞳は金色に光っている。
腕は4本生えており、服の代わりなのか【鬼鎧殻】を身に纏っている。
そして何故か顔や背丈が"ノア"そのものなのであった。
「……。」
『……。』
「初めまして。」ペコッ。
『おぅ、初めまして。』
「えっ!?初対面なんですか!?
と言うか顔がそっくりで…兄弟さん?
アレ?でも初めまして…って…アレレ?」
"赤黒い人物"とノアの挨拶を見て混乱するラインハード。
『まぁ、その辺は後で話すとして、先にコイツの"処理"を済ませちまおう。
お姫さんよ、コイツの中にある魔石を破壊すりゃコイツは動かなくなるんだよな?』
「え、えぇ…その通りです。
ですが、高純度の魔石は非常に強固で、破壊するのは骨が折れるかと…」
『ふーん…』コッ。
ラインハードからそう説明された"赤黒い人物"改め"赤黒いノア"は、項垂れているマディアの胸部装甲に触れる。
ゴリッ…
〝え!?〟「「え…?」」
ノアやラインハードはおろか、マディアですら驚くのも無理は無い。
【鎧袖一贖】を発動したノアでさえ3発ぶん殴って突破した胸部装甲を、この"赤黒いノア"は事も無げに一掻きで削り取った。
〝ちょ、待『ペキンッ!』うっ『ズボッ!プチプチッ…』止め!待『カシュッ!』…〟
パラパラ…ガシャンッ!
『これで終わりだな。』
削って空いた穴に指を突っ込み、薄氷を割るかの様な音と共に装甲が剥がされ、動力源である魔石を引きずり出すと、マディアの懇願(?)に聞く耳も持たず、まるで胡桃を割るかの様な音を立てて握り潰した。
動力源所か、マディアも完全に消滅した機兵は力無く床に崩れ落ちていった。
『さて、お互い話す事もあるだろうから場所を移そう。
ここじゃなんだから1つ前の部屋にでも戻って…』
「それなら私にお任せ下さい。」
パンッ!
シュパッ!「『え?』」
と、ラインハードが手を叩くと、破壊の限りが尽くされた部屋が、初めてこの部屋に訪れた時と同様のレイアウトに戻っていた。
いつの間にかラインハードは椅子に車輪が付いた装置に腰掛け、2人を見やる。
「…先に、このダンジョンについて説明した方が宜しいですね。」
ラインハードは、この部屋に初めて訪れた時と同様の儚げな笑みを浮かべて話を始めたのであった。
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