ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

鉱山の真下

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『私達が現在暮らしているのは王都近郊にある鉱山の真下…『スイッスイッ』ここですね。』


リヴァイアは私室の巨大なガラス張りの壁に王都近郊の立体地図を映し出した後、指で操作して範囲を拡大させていくと下部にリヴァイアが居る『龍宮城』の簡易図が表示される。

王都と鉱山との距離とを比較すると、途轍も無く深い場所に居る事が分かる。


『それでです「ちょ!ちょっと待って頂きたい!」


説明を続けようとしたリヴァイアに食い気味で呼び止めるローグ。


「色々と混乱しているのだが、海洋種…と言いましたな?
済まない、不勉強で聞き慣れない種族だったもので…」

『それは不勉強などでは無く、地上と交流を持ち始めたのがここ1ヶ月位の話ですから無理無き事。
交流を持つ切っ掛けとなったのはそこに居られるノア君です。』


全員の視線がノアに注がれる。

(…視線が痛い…)

『話を急ぎ過ぎた様ですね。
先ずは私とノア君の関係から話した方が良さそうですね。』


と、リヴァイアは自分達の種族の事、ノアとの関係、今後王都と国交を結ぶ事等をガラス張りの壁に映像を投射して時系列順に説明し出した。

途中全体像は分からない様にしているが、鉱山の下で半身がグシャグシャに潰れたノアとクラーケンが戦闘している描写を映し出した時は、ハナが小さく「ひっ」と声を漏らしたりしていた。





『…とまぁ、こう言った経緯があってノア君と仲良くさせて頂いて、今に至ると言う訳です。
何かご質問あればどうぞ。』

「「「「「「「「「……。」」」」」」」」」


と、リヴァイアが説明を終え、質疑応答に移ったのだが、その場に居る者全てが呆気に取られていた。

が、そんな中1人の臣下が手を上げてリヴァイアに質問を投げ掛けてきた。


「さ、先程輸送の話の時に【鬼神】殿が"出現"させる、と申しておったが、具体的にはどうなされるおつもりでしょうか?
まさか逐一転移でこちらに届けると言う事ですかな?」

『どうやらノア君の話では地上には目敏い塩専門の商人が居るとか。
なので、ただ塩を転移させると、"利権が~"とか"出所は~"とか騒がれるとお互いに厄介でしょうから、"地殻変動か何かで領地内に突然岩塩層が隆起してきた"と言う体を取らせて貰おうかな、と思っているのですがどうでしょうか?』

「「「「「「「「え、えぇ…」」」」」」」」


リヴァイアはサラリと言っているが、やろうとしている事は超力技である。
ある意味リヴァイアでないと実現不可能な事である。

リヴァイアの説明によれば、まず『龍宮城』近郊にある岩塩層を座標指定。
地表の指定した場所に槍の様に伸ばしていき、出現させると言う事らしい。


その説明をした後、リヴァイアは『龍宮城』の外の海底に高さ100メル程の石柱を立てて実演してみせた。


「とまぁこんな感じです。」

「「「「「「「「お、おぉ…」」」」」」」」


再びサラッとやってのけたリヴァイアだが、普通であれば莫大な量の魔力を消費する為、直ぐにでも魔力切れを起こしても良いハズなのだが、リヴァイアはそう言った素振りを見せていなかった。


「リ、リヴァイアさん…その、お体の方は大丈夫でしょうか…?」

『あ、御心配無く。
この程度であれば余剰魔力で全て賄えるので特に問題はありません。』

「そ、そうですか…」

(まぁ気持ち分かりますよ…
一昨日の大風も余剰魔力で行使したって言うんですから、リヴァイアさんの底が知れませんよ…)


リヴァイアクラスの存在になると、余剰魔力ですら膨大な量になる為、大抵の事であれば行使出来るとの事らしい。


「うーむ…輸送面に関しては問題無しか…
だが、こちらとしては大きな問題が2つある…それをどうするべきか…」

『問題とは何でしょうか…?』


顎に手を当て、うんうんと悩みあぐねいているローグ。


「まず1つ目に、これだけのお膳立てをして頂いたのに、我が国から貴国に提示出来る見返りの対価が思い付かないのだ。」

『あ、その辺りはそこまで考え過ぎずとも…』

「さらりとやってのけているが、リヴァイアさんが行使した魔法の数々…恐らく空間魔法の応用だろう。
どれも見た事が無い物だ。
しかも軍事転用している訳で無く、職務の一端に使用している所を見るに、技術面、文化面の観点から見ても圧倒的に貴国の方が上であろう…」

『もしもーし…』

「自国を悪く言うつもりは無いが、我が国はこれと言った特産品や『あのー…』王都の様に鉱山を所有している訳でも無い。
『すみませーん…』たまたま近くに『滅びの森』とダンジョンが2つある程度で、後は温暖な気候を生かして多種多様な果樹園を『それです!』へ?」


リヴァイアが時折ローグに話し掛けていたのだが、悩みまくってて声が聞こえていなかった様で、リヴァイアの大声で漸く我に返るローグ。


『私共としては貴国で採れた果実…果物を所望したいのですが宜しいでしょうか?』

「く、果物…?そんなので宜しいのですか…?」



~タイトル:『ハナさん、という方』より抜粋~

主な産業は豊富な果実の栽培と、地下から採掘する事で得られる宝石等が主である。



リヴァイアからの要望が意外過ぎたのか、ローグは呆気に取られている様子。


『私個人としては先程ノア君の彼女さんに頂いた『バナナナナナナ』が好みですわ。
食べ易く甘さ控えめで子供達でも簡単に食べれるでしょうから。』

「リヴァイアさん、さっきモリモリ食べてましたものね。」



~タイトル:『語彙力皆無』のラストまで遡る~


「果物とかどうでしょうか?」

「果物か~、獣人国は果物を栽培しているのかい?」

「みたいです。自分はまだ食してはいませんが、種類も豊富みたいですよ。」

「そっか~。
ね、ね、ノア君何か持ち合わせの果物を持ってたりしないかな?
ちょっと味をみてみたいんだ。」

「え!?あー、どうしよう…生憎持ち合わせが「ありますよ。」え?」


と、今までノアとリヴァイアのやり取りを静観していたクロラが声を発をして手を上げていた。

すると徐に自身のアイテムボックスに手を突っ込むと、1房に70本以上の小振りなバナナが付いた束を取り出した。


「これ『バナナナナナナ』という果物です。
小振りですが量も多くて甘さ控えめ、手で簡単に皮を剥けれるので食べ易いですよ。はいどうぞ。」

ムキッ

「あ、どうも。」ミリリ…


クロラから『バナナナナナナ』を手渡され、リヴァイアは先端から皮を剥いていく。



『バナナナナナナ』…1房に77(ナナナナ)本のバナナが生る。
甘味控えめで小振りな為、割と安価でお買い求め出来る。



「…にしてもクロラさん、よくその『バナナナナナナ』?を持ってたましたね。」

「えへへ、青果店のおじさんに日持ちしないから、って戴いたの。『ミリリ…』はい、ノア君。
あーん。」

「あ、あーん…」ムグムグ…


と、ノアとクロラがしれっと恋人ムーブをしている横では、『バナナナナナナ』5本目に差し掛かったリヴァイアが居た。


ムグムグ…「うんうん…これは美味しい。
舌で押し潰せる程の柔らかさ…これなら歯が生え揃っていない子供達にも良いかも…」


と、個人的な感想も踏まえつつ子供達が食べられる物かどうかを判断している様だ。


「是非ともこの果物を見返りに…というか、獣人国との交易品の1つとして取り扱って欲しい物だ。」

「まぁ後は獣人国の反応次第ですね。」

「よーし、プレゼン頑張るぞー!」

((プレゼン…?))

というやり取りが先程『龍宮城』にて行われていたのであった。



「自国にとっては大した物では無いかも知れませんが、他国にとっては有益な物である場合はよくある事。
王都の商人さんが最初に私共にお求めになったのは身の無い貝殻ですのよ?
何でも、ノア君との関係説明の中にあった鉱山での一件で昇降機が使えなくなってしまい、一時的に閉山しているとか。
その為多様な用途のある石灰が採れなくなったので、急場凌ぎの為に欲しい、と。
長く生きて居ますが、私の知らない事はまだまだ沢山御座いますね。
して、獣人国国王ローグ・ラグナー殿、私共から提供致します岩塩の対価として貴国の果実を所望しても宜しいでしょうか?」

「こちらとしては願っても無い事です。
是非ともお願い致します。」


という事で、問題の1つ目は割とあっさり解決したのであった。
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