ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

『ブレイカー』としてのお仕事

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「はい、トドメを刺す場合はサクッと決めましょうね。
妙な溜めを作って変なフラグを立てると、今みたく返り討ちに遭い掛けるので今後は気を付けて下さい。」

「「「はい…以後気を付けます…」」」


個人的に楽しめたり、今後のフラグとなりそうな出会いがあった宴から一夜空け、ノアは『ブレイカー』として再び滅びの森に来ていた。

体の調子が戻った為、今回はクロラは同行していない。(と言うか同行していたらポーラにひたすら茶化されるので断った。)

その合間に以前請けた魔蛸の討伐兼素材採取依頼をこなしている。
今朝だけで2体の魔蛸を討伐している。

だからなのか、何組かのパーティから相談されたので、幾つかアドバイスを出した。

すると、最低でも3組のパーティでないと討伐出来なかった魔蛸が、2組のパーティで討伐され始めたのだ。

だが最後の最後、トドメを刺す際に余計なセリフを言ってしまい、僅かに回復した魔蛸の返り討ちに遭いそうだった為ノアが救い出した所であった。




カキカキ…φ(..)

「ふぃーっ…開始3時間で5組か~…
昨日よりは少ないけどまだまだ居るものだなぁ…」


後でギルドに報告する為、『ブレイカー』として助けたパーティの名前を記帳するノア。

そんなノアの下に、4人組のパーティが近付いてきた。


「アンタ、昨日俺のパーティメンバーを助けてくれたんだってな。」

「ん?誰の事…
…あぁ、あなたは昨日の…もう体調は宜しいのですか?」


そこには両腰と背中に2本ずつ剣を差した青年が。
その後ろには武者鎧に身を包んだ褐色肌の女性と女性狼獣人、前日に助けた【聖女】の女性が立っていた。

奥の【聖女】に目を移すと、おずおずと会釈していた。


「なぁ、アンタの腕を買って頼み事があるんだ。」

「頼み事?」

「あぁ、俺達は"傷の無い魔蛸の眼石"を欲してるんだ。
値は弾むからチャチャっと狩「断る。」

「…はぁ?」


青年が言い切る前に断りを入れるノア。


「素材を欲してるのはあなた達だけじゃなく、ここら辺で戦っている人達も同様だ。
自分達で取るか、最近多少出回り始めたからギルドに行って予約してくれ。」

「そう堅い事言うなって。
俺達は今すぐ欲しいんだよ、金ならやるし、ウチのパーティから女を出してやっても良いぜ?」

「はぁ?」


チラリと青年の後ろに立つ女性達を見ると、【聖女】はまだしも、褐色肌の女性と女性狼獣人2人は何処と無く目が虚ろであった?


「悪いが、金や色仕掛けを使っても合意する事は出来ない。
申し訳無いがさっき言った通りギルドを「チッ、面倒臭ぇなっ!」

ズズズ…

「!?」


突然青年の口調が荒くなったかと思うと、目を金色に輝かせてノアを睨み付ける。


「やっぱ最初っからこうやって<洗脳>させちまった方が楽だな。
おい、『ブレイカー』とか言う馬鹿みてぇな名前のお前!
さっさと魔蛸を数匹仕留めてこい!」


青年は先程までの態度を急変させ、雑にノアを扱い出す。

だが


(今何かされた?)

(『効いちゃいないが、精神干渉系のスキルを放たれたな。
前にヴァンディットが放った<魅了>よりもずっと弱い。』)

(ふーん。)








「おい!グズグズすんな、さっさとこっちに「今の行動は敵対行動と捉えて良いのかな?」

「「「「っ!?」」」」


『ブレイカー』が操られていない事に驚愕の表情をする4人。
特に青年の方は、目をひん剥いて僅かに硬直していた。


「…僅かに目を逸らされたか…?
そうでも無きゃ掛からねぇハズが無ぇ…」

「ア、アーク…何をやっているのです、謝りましょう…」

「うっせぇ!アックスレイ、ヴォルフスティ!そいつを拘束しろ!
今度こそちゃんと<洗脳>してやる!」

「「はっ!」」


虚ろな目をした褐色肌の女性と女性狼獣人の2人がアークとか言う青年の声に反応して行動を開始した。


(あの2人さ…)

(『あぁ、操られてんな。』)


と、中で鬼神と会話しつつもアイテムボックスから1メル程のロープ数本を取り出して手首に巻き付ける。

ピシッ!

その内の1本を手に持ちピンと張る。


「申し訳無いが、事情を知りたいので捕縛させて貰うよ。」

「はっ!1人で何が出来るってんだ!
2人ともやっちまえ!身の程を味わわせてやれ!」


ダンッ!シュリィンッ!

アークの声と共に武者鎧の褐色肌が、腰に差していた刀を抜きながら突っ込んできた。



シュボァアアッ!

「ん?火の手?」

武者鎧の女性が刀を抜くなり周囲の地面が炎に包まれる。


「うわぁっ、何だ!?」
「か、火事か!?」
「おい誰だ広域魔法を放ったのは!」


周囲の冒険者達も突然の火の手に慌てふためいている。


「おいおい…周りは見境無しかよ…」

ガシャガシャガシャ!

「アナタ!私を無視とは良い度胸じゃない、かぁっ!」

ブォンッ!


そう武者鎧の女性が言い放ちながらノアへと斬り掛かる。


ヒュォッ!

(いや、見てなくても音で分かるし…)


と心の中で思いつつも刀を避けるノアだが


シュボァアアッ!「!?」


剣筋の軌道通りに炎が吹き荒れ、ノアは炎に呑まれてしまった。


「ハハッ!良くやったぜアックスレイ!」


青年アークは武者鎧の女性に賛辞を贈る。

のだが


「ほぅ、あなたがアックスレイですか。
分かりました。」

「エ?」

ボファッ!ガシッ!「エげっ…がぁあっ!?」


炎の中から腕が飛び出し、武者鎧アックスレイの首を掴むノア。


「なっ!?何故炎に焼かれて生きてやがる!?」

ボボボ…

「いや、見掛け程大した火力はありませんよ。
自前の<熱耐性>で余裕で耐えられましたし。」


片手で武者鎧アックスレイを捕らえたまま炎から歩み出て来たノアは、軽く焼けた後ろ髪を叩いていた。


「申し訳ありませんが、あなたに暴れられると火の手が広まってしまいそうですので、暫し眠ってて下さい。」

「…エ?ナ『ヒュッ!』


ズドォンッ!

パラパラ…

「……っ!……!」


首を掴んだままだったノアは、勢い良く地面にアックスレイを叩き付けた。

受け身が取れない状態だった為、一瞬呼吸がままならなかった様だ。
だがアックスレイは意識を失う事無く耐えきった。

だが


「うーん、やはりこれだけじゃ気絶しないか。
んじゃ、消火ついでにこれで意識を刈り取るとしましょうか。」

「…エ?何『オ"ォオ"ア"ア"ア"ッ!!!』

ズズンッ!!!「ふぐっ!?」



眼下に横たわるアックスレイ目掛け、至近距離での<猿叫>を発動するノア。
直下に居たアックスレイは衝撃波をモロに受け、地面と共に押し潰された。

身に付けている武者鎧に軽いヒビが入る程の衝撃を受けたアックスレイは、遂に意識を手放したのであった。


「うおおっ!?」
「ウわっ!?」
「きゃあっ!?」

ボファアアアッ!ボボ、ボ…


衝撃波は止まる事を知らず、地面を伝播して火の海と化していた地面の火の手を根刮ぎ吹き飛ばしたのであった。


「な、何だ今のは…」

「さ、サァ…うぐっ…」


ノアの行った一連の行動をまだ把握しきれていないアークとヴォルフスティは未だ動けずにいた。

特に狼獣人であるヴォルフスティは、ノアの発動した<猿叫>で聴覚を少しやられ、アークが行った<洗脳>が解け掛かっていた。
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