ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

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ドカカッ!ドカカッ!

「あ、ハナ!あそこ!(サクラ)」

「あぁ、この村の住人達だな!
む?奥で冒険者達が戦闘を繰り広げている様だな!(ハナ)」

「現着後2名は住人達の下へ向かえ!
それ以外は前線へと向かい冒険者達を援護せよ!(ハウンド)」

「「「「「おぉっ!(騎士一行)」」」」」






パシュッ!パシュッ!パシュッ!

ギャッ!ガッ!アアッ!

「目潰しありがと、クロラっち~。
畳み掛けるよジェイル!(ハナ)」

「おぅ!『ガンッ!ガンッ!』掛かってこい虫共!ポーラ、纏まってきたら氷柱の雨を降らせてやれ!(ジェイル)」

「りょ。それじゃあロゼ、クロラ、一緒に範囲技で仕留めましょ。<ツラララ>!(ポーラ)」

「りょーかい、<閃陣>!(ロゼ)」

「うん分かった!<矢水垂>!(クロラ)」


『『『ドドドドドドドドドドッ!』』』


クロラが迫り来るモンスターの目に次々と矢を射って動きを止め、ジェイルが<挑発>を掛けて敵視を集め、3人の範囲技により10体程のモンスターを仕留めるのであった。


タタタ…

「クロラさんお見事。(ハナ)」

「あ、ハナさん!来てくれたんですね!(クロラ)」

「勿論、要請があったからね。
…それで、ここにノア君が居るハズだけど…(ハナ)」


と、クロラ達の下にやって来たハナは、要請者であるノアの姿を探す。


「なぁんが!坊が目当てかっ!
坊なら森ん奥に向かったど!(バド)」

「め、目当て何て言わないで下さい!
先ずは要請者にお会いしようとしただけです!(ハナ)」

「そ、それよりも、あれは何なのですか…?
さっきでっかい蝶を見掛けましたが…(騎士1)」

「分ーからん。
じゃがさっきこっちに来ようとしてたから坊が迎撃に向かったど。(ロイ)」

「ちょ、悠長に喋ってないで″アレ″見てよ…
″アレ″が例の蝶じゃない…?(エスメラルダ)」


と、皆の話を遮ってエスメラルダが上空を指差す。
すると上空には、顔から何かの塊をぶら下げた蝶が上昇していた。


「ほー、アレが件の蝶か。(ロイ)」
「確かにあんなもん見た事無いな。(バド)」
「うーむ…デカいからか遠近感がバグるのぅ…(ルド)」

「あ、あの蝶、今度は回り出しましたよ…(ハナ)」


皆の視線の先では巨大な蝶が顔から謎の塊をぶら下げたまま旋回し出す光景が映った。
するとドワーフのバドが大声を上げる。


「お前んらぁ、一箇所に集まれぃっ!
ありゃあ生体投石機じゃ!死にたくなければ全員で防御を固めるぞぉっ!」

「え?(ハナ、ハウンド)」

「奴の生み出す遠心力じゃと、えーっと…取り敢えず残滓だけでも村が木っ端微塵になっどぉっ!(ルド)」

「陣を張るなら受け止める形にせず″流す″様にせぃ!(ロイ)」


ドワーフ3人は【技士】なだけあって、ボルボレートが繰り出す攻撃のおおよその破壊力を算出して周囲に指示を飛ばす。

3人の指示を受け、周囲に散らばっていたハクア達やクロラ達、住人達が騎士団の下へと集まる。


「ついでじゃ!出でよ【岩窟の土精(ゴーレム)】!ワシらの前に立ち、ワシらを守っちょくれぃ!(バド)」

ドゴゴゴゴゴゴゴッ!


バドが地面に魔石を押し当てて名を唱えると、一団の前に縦横10メルはあろう巨大で頑強なゴーレムが出現した。


「皆!やるわよ!
【乙女の聖域(サンクチュアリ)】!」

コォオオオオオオオッ…


『犬姫』の騎士達は、一団を取り囲む様に配置し、眼前に剣を構えて魔力を籠める。
すると半球状の光輝く結界が発生して皆を包み込んだ。

直後、上空のボルボレートが謎の塊を切り離した。


ボッ!

「放ったぞ!(ロイ)」
「着弾地点は遠いが、油断するなよぅ!(バド)」
「当たれば磨り潰されるからのぅ!(ルド)」


『『『『ギンッ!』ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!』』』


ドゴゴゴゴ「…え…?」ゴゴゴッ…


着弾と同時に硬質の音が一瞬聞こえた後、地響きと轟音と共に、両断された木々の塊が森の中を破壊しながら村へと進む。

だが、木々の塊は村を避ける様に左右に逸れていく。
直後辺りには砂埃が舞っていた。


パラパラ…

「…え?助かったの…(ポーラ)」
「そーみたい…(ロゼ)」
「…途中で岩にでもぶつかったか…?(ジェイル)」

「いや、過ぎてった塊を見たが、その程度じゃ逸れんよ。(バド)」

「恐らく着弾地点で塊を破壊しよったんじゃろな…(ロイ)」

「い、いやいや、そんなの無茶苦茶ですよ…
誰がそんな…あ…(ハナ)」


ロイの予想を否定するハナだったが、この場に居ない人物の事を思い出し妙に納得していた。


「…ノア君…(クロラ)」


そんな中、クロラは心配そうに森の奥を見詰めていた。







ズンッ!ズズンッ!パラパラ…


ボルボレートが放った木々の塊が着弾した場所には砂埃が立ち込め、土石や木々の破片が辺りに降り注いでいた。

着弾地点の周辺は木々が薙ぎ倒されて広大な更地となっていた。

だがある地点だけVの字に破壊の跡が刻み付けられている場所があった。

そこには両手含めた4本の手に、剣を持った少年が上下左右に剣を振り抜いたポーズのまま固まっていた。


キシッ…ギシッ…

ミシミシッ…「…くっ…上手くいったかな…」

(『…あぁ、見事に村を逸れてった様だぜ。
それよりも主は大丈夫か?』)

「あぁ…弾丸の様に飛んできた木の破片が肩と太腿に突き刺さってるけど、ちゃんと痛みがあるから大丈夫だし(?)、全身の骨が軋んで、腕と足の筋肉が悲鳴上げてるだけだよ。」

(『主よ、それは重症って言うんだぜ。』)


ボルボレートが放った質量攻撃を斬り飛ばしたノアだが、<受け流し>を行った訳では無いので、かなりのダメージを受けていた。

一応赤黒いオーラで多少は防げているものの、肩と太腿にはナイフ程の大きさの木の破片が刺さり、細かな破片が顔に当たった事で顔の右半分は血に濡れていた。

後は内部的な問題で、今の一撃で両腕の骨にヒビが入り、体を支える足の筋肉の一部は断裂し掛かっていた。


「…ここではあれだけど、『ミシッ…』戻ったらヴァンディットさんに『ミシミシ…』治療して貰わないとな…」

(『…もう無理すんなって。
あと一回剣を振ろうモノなら両腕の骨が割れるだろ?後は俺の方で殺っといてやるって。』)

「ちょ、『ミシミシ…』ちょーっと今回ばかりはお願いしても良いかな『ミシッ…』…?
本音を言えば指一本動かすだけで激痛が走るんだ…『メリッ…』」

(『了解した。『ズルッ…』
その代わり荒鬼神ノ化身をちょっと借りてくぜ?幾ら俺でもあの高さまでは飛べんからな。』

「うん、分かった…『メリッ…』痛てててっ!」


ノアの代わりに戦闘を行う事になった鬼神は、
強制的に【一神同体】を発動。
荒鬼神ノ化身4本をを手にした状態で分離した。


『グリード、主を村に送ってってくれ。』

ズルッ…

《了解しました。
主様、少し我慢してて下さいね。》

「うっ、痛てて…き、気を付けてね…」

ダンッ!


鬼神の呼び掛けで出てきた人間形態のグリードは、ノアを抱き上げると村へ向けて駆けていった。

その場には荒鬼神ノ化身を手にした鬼神と、宙を漂うボルボレートしか居なくなった。

 
『さて、この間は雑草除去で今回は害虫駆除か。俺にガーデニングの趣味は無いんだが、人命が掛かってるんでな。悪く思うなよ?』
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