ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
574 / 1,117
獣人国編~中級冒険者試験~

適正にも色々あります。

しおりを挟む
ガギィンッ!

ズォオオオッ!

「ひっ!?『シュゥウ…』(リーパー)」


合計20回目ともなる攻撃を弾いたノアは、大分強めの<殺気放出>を発動。
あまりの殺気に、思わずリーパーが悲鳴を漏らすと共に、消していた姿が露見する。


ズズズ…

チンッ!ヒュババッ!

「ひっ『ゾリッ!』!?」ヘタ…


<殺気放出>を発動したまま荒鬼神ノ化身を鞘に収め、直ぐ様腕を振る。

その手には、スキル<無刀幻視>で形作られた半透明の刀が握られていた。

実際は何も持っていないのだが、戦闘経験豊富なノアが<無刀幻視>を発動して一連の動きを行うと、あたかも本当に刀を手にしているかの様に感じただろう。

リーパーは<無刀幻視>で首を両断(実際はしていない)されると、大量の脂汗を噴き出してその場に座り込んでしまった。


シャキィン!

「まだやりますか?」

「…も、もう…(リーパー)」


座り込んだリーパーに対し、ノアは<無刀幻視>では無く荒鬼神ノ化身を抜き、問い掛ける。

″次は本当に首を斬り飛ばすぞ!″という意思表示であるが、その行動にリーパーは声を震わせて降参した。


「そちらは目覚めたみたいですが、『チャキ…』どうですか?」

「…はは、片腕を潰され、奥の手を難無く突破されたんだ、もう敵い様が無い…
それに今更な話だが、【暗殺】行為を防がれた時点で仕事としては失敗だ。
素直に負けを認めるよ。(ジャック)」


と、さっきまで殺る気満々だったジャックは、腕を潰され、数発良いのを入れられた為か、既に戦意喪失していた。





「…で、最後は『暗殺対象』のミゼラさんを屠れば良いのですか?」

「あ、いや、もう【暗殺】の実地試験は終了しましたので、刀はお収め下さい。
と言うかあなたに勝てる気がしませんて。(ミゼラ)」


という訳でこれにて【暗殺】の実地試験は終了となり、ジャックの手当てはヴァンディットにお願いする事に。

残りの適正については翌日の実施となった。





「ふぇえええ~…漸く初日が終わった~…
中級冒険者試験って大変なんだな~…」

「いや、普通はここまで大変じゃないわよ…(ハクア)」

「私達、筆記試験~実地試験とパーティ行動込みで半日位で終わったよ…?(ユカリ)」

「普段の少年の行いだわね。(ポーラ)」


時刻は夜の8時。
【暗殺】実地試験を終えたノアの下にハクアやクロラ達が集まり、昼間の喫茶店に再び訪れていた。

筆記試験はまだしも、その後の実戦試験にてゴワスとゴザルとの戦闘。
そして職員約50人相手に蹂躙を行ったものの、体力的にはまだ余裕のあるノアではあったが、こんな事になると思っていなかった故、妙に気疲れしていた。


「残りは明日って言ってたけど、この街って宿とかあったりするのかな…」

「その辺は大丈夫。
何てったってこの街は『中級冒険者・【適正】試験街テスタ』よ?
色んな適正持ちが研修や試験に勤しむ為にこの街に訪れてるの。(ハクア)」

「この道をまーっすぐ行くと、【経営】持ちの人なんかの研修目的で建てられてる宿群があるからそこに泊まる事が出来るのよ。(ユカリ)」


と、ユカリが指し示したのは、試験会場とは逆方向の通りの奥、街を覆う防壁沿いに幾つも宿が建ち並んでいた。


「なる程、それなら安心ですね。
僕はこれから街を散策しつつ適当に食事済ませて何処かの宿にでも泊まる事にします。」

「それじゃ私達は食料等の買い物を済ませて宿へ向かうわ。(ポーラ)」

「買える時に買っとかないとね。(クロラ)」

(ん?食料を?何処かへ遠出でもするのかな…?)


ともあれ、街に来てから試験と戦闘づくめだったノアは、宿を探しつつ街を散策する事にした。


クンクン…(ん?何だろこの匂い…)


取り敢えずノアは街の奥から漂ってくる何とも言えない香りに誘われ、そちらの方へ歩いていった。





ぶらぶら…

(何と無く甘い香りが漂ってたからお菓子屋でもあるかと思ってこっちに来たけど…
それらしいお店は無いな…)

(『しかもこの匂い、菓子に使う砂糖や蜜とは違うぜ?
何というか、香油みたいな感じだな。』)

(うーん…一先ず元来た通りに戻るかな…)


甘い香りに誘われて街のとある1区画にやってきたノア。
だがその周辺の人通りは疎らで薄暗いし、漂う香りもどこか甘ったるい。

もしかしたらもう閉店したのでは?と思い、踵を返そうとすると、女性から声を掛けられた。


「お兄ーさん、さっきの試験見てたっちゃよ。
すごーく強いとね。(女性)」

「ん?あ、こんばんはぁっ!?」サッ!


後ろから声を掛けられたので振り向きつつ挨拶をしたのだが、女性の姿を見て凄まじい速さで目を逸らした。

何故ならその女性の格好が、下着姿の上に隠すつもりの全く無い薄いレース生地のローブを纏っているだけだったのだ。

ノアは一先ず目を逸らしたまま女性に質問を投げ掛ける。


「あ、あのどうしたんですかその格好…
困ってるのなら、し、職員さん呼んで、来ま「んにゃぁ、安心しぃな。あっち(私)はこれでも適正の試験中っちゃね。
ちょっと待っててね~。(女性)」

シュゥウウ…ポワン。

「ほーら、これで良いっちゃが?(女性)」

「…さ、さっきよりはマシですが、それでもお腹とか太ももとか…(語彙力)」


あられもない格好の女性に気が動転したノアだが、女性は落ち着いた様子でノアに対応する。

少しすると謎の音と共に女性の周りにモヤが掛かると、胸や腰等の危うい箇所をターバン生地で隠した姿に変化した。

それでも引き締まったお腹やスラッとした綺麗な太もも等が露になっている為、ノアにとってはまだまだ刺激が強い。


「え?適正の試験中?
失礼ですがあなたの適正って?」

「あぁ、ごめんごめん。
あっち実は″サキュバス″でぇ、名前はミダレ。
適正は【娼婦】なのよん。よろしくね。」

「し、【娼婦】…」



サキュバス…別名女淫魔。
人間で言う食事に該当するモノを精気によって補う種族。
一応普通の食事も出来るが、効率は精気によるものが良いらしい。
体から常に甘い香りを発し、男を誘惑する。

精気を貰う方法は幾つかあるが、就寝中に夢を操作し、相手が高まった所で頂く。
もしくは直接。(重要)



「そ。【娼婦】。
でもあっち達サキュバスは定期的に精気を摂取せんと、生きていけんちゃね。
せやから人族の考える娼婦と一緒にしたらアカンよ?(ミダレ)」

「は、はぁ…」

(『ふむ、″~ちゃ″とか″~よ″とかの言葉遣い…
案外良いものだな。』)


中に居る鬼神も満更では無い様子である。


「試験中だったのならすみません。僕はここで「なぁお兄ーさん?(ミダレ)」


と、ここでサキュバスのミダレがとんでもない事を言い出した。


「ウチと遊んでいかへん?(ミダレ)」

「ぶふっ!」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...