ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

え?

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キュロロロロロロッ!

ビュ『キンッ。』チャッ!

ブォ『スッ。』ドチャッ!

ビュ『ピッ。』ォッ!


魔蛸が独特の鳴き声を上げながら、大木の様な太さの触手を近付いてきた敵(アミスティア)へと叩き付けて来る。

が、アミスティアの体に触れる前に抜刀音を立てたと同時に斬られ、次々と地面に触手が叩き落とされていった。


「…え?あれ抜剣してるんですよね…?
村で訓練してくれた時より速くないですか…?(美幸)」

「そりゃミユミユの目に映らない速度で剣を振ってたんじゃ、訓練にならないから手を抜いてただけさ。
あれが実速って訳じゃないが、それなりに速いよ。(レドリック)」

「そ、そうですか…(美幸)」


美幸の中ではアミスティアの剣速に慣れてきた、と密かに思っていたのだが、最初っから手を抜かれていた事を知り、気落ちする美幸であった。


ギュロロォッ!


僅か一息の間に3本の触手を失った魔蛸は、怯む所か次の行動に移るのであった。


ギュロロロロロロロロッ!ズドンッ!

「と、飛んだぞ!?(リーダー)」
「なにする気「あなた達早く離れた方が良いわよ?(アミスティア)」


魔蛸は伸縮性のある触手を巧みに使い、アミスティアの直上へと跳躍する。


バシュシュシュシュシュシュッ!


すると魔蛸は触手をブワッと広げたかと思うと、吸盤から勢いよく水を噴き出し、雨の様に降らし始めた。


チュドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

「「「「「おわぁあああああっ!?(6人組パーティメンバー)」」」」」

「に、逃げろぉっ!?(リーダー)」


″雨の様に″と言ったが、そんな生温いモノでは無く、まるで弾丸の様であった。
降り注ぐ水の着弾地点は、深さ50セメルの縦穴が空き、その威力の程が感じられる。




チュインッ!

チュチュンッ!チュインッ!チュンッ!チュォンッ!チチュンッ!チュンッ!


上空から降り注ぐ夥しい量の水弾を、アミスティアは右手に持った長剣1本で流し・弾き・逸らしていた。

しかも恐ろしく速い剣速である為、見る者によっては結界を張っていると錯覚するだろう。


「あ、あの攻撃を凌いでる…(美幸)」

「水弾の数は脅威だが、アミを狙ったモノはごく僅か。
あれは制圧射撃の一種で、アミの動きを封じるのが目的だろうが、あの程度じゃウチら一家(ノア含む)は止められんよ。(レドリック)」

「何て一家だ…(美幸)」


自分ならどう攻略すれば良いか妙案が浮かばない様子の美幸は、改めてノア含めたこの一家の戦力に嘆息していた。


「…それよりも良いんですか?
アミスティアさんに援護射撃頼まれてるのに準備もせずに…(レドリック)」


少し離れた場所からミユミユ(美幸)と共にアミスティアの肩慣らしを眺めていたレドリックに援護を促す美幸だが


「生憎だが武器の持ち合わせが無いので準備のしようも無い。(レドリック)」

「え!?私の装備云々の前に自分の武器の事考えましょうよ!
どうするんですかモンスターがこっちにやって来たら!?(美幸)」

「大丈夫、大丈夫。
″ストック″はまだまだあるから『バ『バァンッ!』「うひゃあっ!?(美幸)」ね。(レドリック)」


レドリックが美幸をなだめていると、突如2人の頭上で爆発音の様なモノが2回聞こえ、思わず美幸は耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。





ギュロロロロロロロロォッ!

ギュゥウウウウッ!


一鳴きした魔蛸が触手を束ね、アミスティアに狙いを定めて何やら力を溜め始めた。


「あー大技の″大瀑布″ね。
別に問題無いけど、アレ撃たれると泥跳ねるから嫌なのよね…『バ『バァンッ!』
あら、丁度良い所に。流石レドね。(アミスティア)」ドゴンッ!


手にしていた長剣を肩に担ぎつつ嘆息していると、レドリックとミユミユ(美幸)の居る所から爆発音の様なモノが2回聞こえ、直後に跳躍した。


ヒュッ!トンッ!ボッ!


アミスティアは、後方から飛来した光の塊を足場にして再び跳躍。
直後にアミスティアの頭上ギリギリを光の塊が通過し、魔蛸の方へ向かう。


ギュロ『ズッ!』ロロッ…


魔蛸の眉間を光の塊が貫くと、途端に魔蛸の巨体が揺らぐ。


「あら、レドがトドメ差しちゃったわね。
まぁ肩慣らしだし良いかしら『ヂキヂンッ!』ね。(アミスティア)」


魔蛸の眼前まで迫ると、長剣を鞘に戻し、両腰の剣を今まで以上の速度で抜いて超高速の2連撃を魔蛸の眉間に叩き込む。


ミチィ…


すると眉間を境にして魔蛸の巨体は両断され、地面へと落下していった。





ザッザッザッ…

「もう、レド。
援護射撃は1発で良いって言ったじゃない。(アミスティア)」

「あぁ、援護射撃は1発。
もう1発は俺の肩慣らし分だよ。(レドリック)」

「あぁ、そう言う事ね。(アミスティア)」


という訳で2人の肩慣らしは5分に満たない時間で終了した。
ちなみに先程の6人組パーティに魔蛸を引き渡そうとしたが、流石に受け取れないとしてアミスティアのモノとなった。





~街・大通りから1本脇に入った通り~

「ク、クロラさん、体の痕大丈夫ですか…?
ごめんなさい、強く抱き締めちゃって…」

「うぅん、痕になってるけど痛いとかじゃないから気にしないで。
寧ろ優しく抱き締められてたから凄い心地良かった…よ…(照れクロラ)」

「そ、そう…(照れノア)」


自分で抱かれ心地の良さを言って顔を真っ赤にするクロラと、その感想を聞いて顔を真っ赤にするノア。

2人は宿を出た後、気を遣って外に出ていた鬼神達を呼び戻す為、街に繰り出していた。

先程あんな事があったからか、中々話し出す切っ掛けが無く、漸く絞り出して話し掛けた結果お互いに再び無言になってしまった。




「あ、ポーラ。(クロラ)」

「あ、本当だ。」


通りを歩く2人の視線の先にポーラの姿を確認。
対してポーラは2人が来るのを察知していたのか、待ち構えていた。


「や、やぁポーラ。」

「や、やぁ少年。それにクロラ。
やけに時間が掛かってたけど″色々″あったみたいね。(ポーラ)」

「「え!?(ノアとクロラ)」」ギクッ!?


ポーラからの言葉に明らかに狼狽する2人。

※ポーラは2人が″一線を越えた″と思っています。


「そ、そうだね、色々あって遅れちゃった…
ごめんね、ポーラちゃん、話し込んじゃって…(クロラ)」

「つ、ついつい僕が食い下がっちゃって時間が掛かっちゃ「良いのよ少年、隠さなくても。(ポーラ)」

「…ポーラ?」

「元々少年と付き合う前から私の方から焚き付ける様に言ってきたんだもの、今更動揺したりしないわ。(ポーラ)」

「ポーラ?」

「実はさっき宿に行ったの…
そしたら2人が同じ部屋、同じベッドで同衾してるのを知ったの。(ポーラ)」

「んんっ!?ポーラ!?」

「1番はクロラに、って話だったからその次は私に…ね?(ポーラ)」

「ちょっ、ポーラ!?あ、あれは…」
「ん?ポ、ポーラちゃん…?(クロラ)」

「しょ、少年!次は私の事を抱いてくれないだろうか!?(ポーラ)」


「え?(クロラ)」

『え?』
「え?(ラインハード)」
「え?(ヴァンディット)」

「え?(アミスティア)」
「え?(レドリック)」
「え?(美幸)」

「ちょ…ええっ!ええええええっ!!?」


偶然なのか必然なのか定かでは無いが、気を遣って表に出ていた鬼神、ラインハード、ヴァンディットと、肩慣らしを終えて戻ってきたノアの両親と美幸ことミユミユと鉢合わせてしまった。

ポーラの発言に、と言うよりも、獣人国に何故か居る両親の方に驚いて固まってしまった。


「「ノ、ノア君、この方達は…?(小声のクロラとポーラ)」」


このノアの反応に、思わず素になったポーラと、クロラが2人について聞いてきた。


「ぼ、僕の両親です…」

「ノアちゃーん、ちょっとそこで話しようか?(アミスティア)」
「ノア、ちょっとそこで話しようか?(レドリック)」
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