ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

きっかけ

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~再び獣人国・王城~


ガチャッ。

「失礼します。『犬姫』騎士団長のハナです。
ローグ王、先程『ジョー・アルマゼナ』の方々が来られて奥様、子女様方の御召し物が到着致しました。(ハナ)」

「む!左様か!(ローグ)」

「まぁ、待ちわびていましたのよ!
フォルク、フォルラン、シシュ早速試着してみましょ。(キュオラ)」


ピシッとした鎧姿の『犬姫』騎士団長のハナが獣人国国王であるローグ・ラグナーの私室に入ると、ローグは書類等に目を通し、妻であるキュオラ・ラグナーはフォルク含めた子供達と共にバルコニーに出て日向ぼっこをしている所であった。

ちなみに王族一家は以下の通りである。



獅子獣人の男性(獅子寄り)ローグ・ラグナー
狐獣人の女性(狐寄り)キュオラ・ラグナー
狐獣人の少女(狐寄り)フォルク
狐獣人の少女(人間寄り)フォルラン
ノアと同じ位の歳の獅子獣人(人間寄り)の女の子シシュ



「こちらがその御召し物になります。(ハナ)」

「「わー、きれー。(フォルク、フォルラン)」」

「色合いが美しいですね。
これがお母様の故郷にあった″着物″と言う物ですか?(シシュ)」

「流石に素材や柄は違いますが、色合い等は故郷の物と似ていますね。(キュオラ)」

「キュオラが所望しておった紫を基調とした和装、とリヴァイア殿に頼んでみたが…
うむうむ、キュオラと出会った時の事を思い出すな。(ローグ)」


国王ローグ・ラグナーの妻キュオラ・ラグナーは元々東の島国出身で、海洋種のリヴァイアが来ていた和装と似た物を着用していた。

この間の国交式典開催宣言の際に姿を見せたリヴァイアの和装を見てキュオラ・ラグナーが強く所望したらしい。

『犬姫』騎士団長のハナや、その周囲で待機しているメイド達も興味深そうに持ち込まれた着物を見ていた。


「今後も着る機会があるでしょうから、着付けの仕方を覚えておいた方が宜しいでしょう。
メイド長並びに他の方々も参られよ。(キュオラ)」

「「「「はっ。」」」」

「という訳で貴方、ちょっと席をお外しになられて頂けますか?(キュオラ)」

「あ、あぁ。
他の者達(男)も席を外すぞ。(ローグ)」


そう言ってローグ・ラグナーはそそくさと部屋を出ていった。





ガチャ。

「あ、ローグ様、キュオラ様がもう宜しいと。(ハナ)」

「う、うむ。(ローグ)」


私室の外でそわそわとした様子で待機していたローグ・ラグナーにハナが声を掛けた。


キィ…

「…おお…(ローグ)」

「…あ、はは…久し振りに着ると身が引き締まる感じがしますね…
…ど、どうかしら貴方…?(キュオラ)」


中に入ると白い花柄の紫の着物に身を包み、金色の長い髪を束ねて簪で纏めたキュオラが気恥ずかしそうに立っていた。

その後ろでは赤い金魚柄、満天の星空、火花柄の浴衣に身を包んで各々はしゃいでいる娘達が居た。

美しい立ち姿に周囲のメイド達やハナが見とれている中、ローグ・ラグナーは初めてキュオラと出会った東の島国での事を思い出して固まっていた。


「も、もぅ貴方、何とか言って下さい…!(キュオラ)」





~滅びの森~


「あ、あの時(王都での事)はありがとうねノア君、あのままだったらコモンの変異体に取り込まれてたかも知れなかったのに礼も言わずに…(カサグリア)」

『いえいえ、気にしてませんよ。
それにカサグリアさん、あの後直ぐに″ヒュマノに【変装】して潜入″してたんですから忙しかったでしょうし。』

「ちょ、その事はシーッ!シーッ!(カサグリア)」

『大丈夫ですよ、両親は既に獣人救出作戦の事は話してますから。』


実はカサグリア、王都でのコモン・スロアの一件の後、王都諜報部からの要請を受けてヒュマノ聖王国に奴隷に扮して潜入していた。

そこから情報(警備の薄さ、奴隷の居場所、人数、地形等)を外部に伝え、商隊の入国時間や作戦開始時間、侵入ルート等を決めていたのだ。


『それに…』

「あんた、一昨日から【変装】して獣人国に潜入してたろ?(レドリック)」

「悪さしてなかったから声掛けなかったけど、手の先まで意識して【変装】なさい。
男の格好で手付きが女だったから少し怪しかったわよ?(アミスティア)」

「げっ!?バレてた!?(カサグリア)」


ノアから言わなくとも、何れボロが出ていたかも知れない。


『…それよりも…』





「はい、こちらが余剰魔力の溜まった指輪になります。
取り敢えず余分に五指分渡しておきますね。(ヴァンディット)」

「あぁ、ありがとう。ヴァモス君には私から渡しておこう。(ドゥ)」


ドゥ本来の目的であった、式典での余興に臨むヴァモスの為、余剰魔力が溜まった指輪をヴァンディットから預かった。


「それよりも出て来て早々に″ヴァンディット嬢、指輪を所望したい″なんて言うんですもの、少し驚いてしまいましたわ。(ヴァンディット)」

「う、む…すまない、主語が抜けてしまったな…
…っと、そうだ、ヴァモス君からの頼みとは言え、指輪が無いと違和感があろう?(ドゥ)」そわそわ…

「…ふふ、ドゥさんどうしたんですか?
妙なこじつけを匂わす発言ですが、何か渡したい物でもあるのですか?(ヴァンディット)」


なぜかそわそわしているドゥを見たヴァンディットは、意地悪そうに笑みを浮かべていた。

するとドゥはアイテムボックスから指輪を1つ取り出し


「む…回りくどすぎたな…
″薬品耐性(中)が付与された指輪″だ。
この間会った時、錬金薬作製で扱った薬品が手に付いて少し変色していただろう?
見兼ねて作ってみたんだ。(ドゥ)」

「手作りなんですね?(ヴァンディット)」

「あぁ、私も【技士】の端くれ。
ただ専門適正では無いから、効果は″(中)″止まりだがな。(ドゥ)」

「うふふ、それでも嬉しいものですよ。
ありがとう御座いますわドゥさん。(ヴァンディット)」

「う、うむ…(ドゥ)」





「…え?ノア君の従者さんとドゥってデキてたの…?(カサグリア)」

『あれ?知らなかったんですか?』

「いや、商会でもそんな話しなかったし…
そもそもあの2人、何がきっかけでそんな仲に…(カサグリア)」

(…まぁきっかけは″アレ″だろうから、カサグリアさんは知る由も無いだろうけどね。)


王都での一件後直ぐにヒュマノに向かったカサグリアは、ドゥとヴァンディットの馴れ初めを知る事は無いだろう。

と言うか、ヴァンディットがドゥの正体に気付いてしまった事がきっかけで、2人の仲が深まる事となったのであった。
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