ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
722 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

自由にすれば良いと思うよ。(投)

しおりを挟む
~獣人国・南門~


「はい、次の方どうぞ。」

「はい、冒険者カード。
依頼達成で戻ってきた所よ。(アミスティア)」

「はいお疲れ様です。次の方どうぞ。」

『同じく依頼達成で戻ってきました。
同行者は吸血鬼のヴァンディット、眷属のブラッツ、機人のラインハード、ペットのニャーゴ、契約獣のグリードです。』

「大所帯ですね。
はい、どうぞお通り…って、あれ?
あなたは【鬼神】のノア…?」

『はい、そうですよ。どうしましたか?』


南門の門兵に冒険者カードを提示し、中に入ろうとしたのだが呼び止められるノア。
門兵は怪訝そうな表情で時折「あれ?あれ?」と呟いてノア自身と冒険者カードを交互に眺めていた。


「あ、いや、だってこう、【鬼神】のノアと言えばオーラや威圧感みたいなものが…あれれ?」

『そうですか…それは僕にとって好都合…「へ?」いえ、こっちの話です。』


門兵の反応に思わず口角が吊り上がる。
本当は笑みを浮かべたい気持ちをグッと堪えるノア。

気配やオーラは違えど、所持しているクリスタルブルーの冒険者カード、顔は当たり前だがしっかりノアなのだが、何故か【鑑定】まで行った上で漸く入国する事が出来たのであった。





『やった!気配で僕だと気付かれなかったぞ!これ地味だけど一番嬉しい!』

「おめでとうございますノア様。(良く分かっていないヴァンディット)」
「おめっと。(良く分かっていないラインハード)」

「ガッツポーズまでしちゃって、そんなに嬉しかったの?(アミスティア)」


門を抜け、入国するなりノアはガッツポーズをし出した。

アミスティアが理由を聞いてみると、力を制御する前までのノアは、普通に過ごしていても何かと獣人達に正体を見破られたりしていた。

どうやら中に居る鬼神のオーラが漏れ出ていた様で容易に気配等を察してしまうらしい。

酷い時になると、個室のトイレで用を足していた時に「あれ?もしかして2つ隣の個室に【鬼神】居ねぇ?」と言われた時は中に居る鬼神にどうにかしろ、と口論になり掛けた事すらあったと言う。


「そんなに身バレが嫌だったんならヴァンディットちゃんの影の中に居るか、土属性魔法持ってるんだから土遁してれば良かったんじゃない?(アミスティア)」

『ヤダよ、それじゃ潜伏生活みたいじゃん!
でもこれで漸く自由を謳歌出来るんだ、式典まで後3日だけどそれまではのんびりさせて貰うさ。』

「まぁ良いんじゃ無いかしら?(アミスティア)」
「「良いと思いますよ。」」


周りに居る他の冒険者同様普通に過ごしていれば身バレする心配が無くなったノアは、本当の意味での自由を謳歌する事になる


ピタッ。

『…自由に、って何すれば良いんだろう…』

(((職業病…)))


のかな…?





~海底10000メル地点・龍宮城から海底山脈2つ越えた場所にある巨大な亀裂~


珊瑚や海藻の冷光によって光に満ちた龍宮城とは打って変わり、光が一切無く漆黒と静寂の空間が広がる深い深い海の底。

その一部、亀裂の周辺だけは目映い光に満ちていた。


ゴォン…ゴガァッ…


亀裂の底の方から衝撃波と共に轟音が響く。
中を覗くと、亀裂の底には赤熱したマグマの流れが見え、岩盤の壁面の各所に杭の様なモノが幾本も突き出していた。

その杭と杭の間を高速で″何か″が移動し、″別の何か″に襲い掛かっている様だ。


ゥボァア″ア″ア″ア″ッ!ゴガンッ!


比較対象が居ない為、両者の大きさがよく分からないが、どちらも巨大な生物の様である。

咆哮を上げつつ自身が出現させた杭と杭の間を高速で移動し、″別の何か″に襲い掛かっている″何か″の正体は、体長200メルを越える『シーベッド・マウンテンゴリラ』と言う巨大なモンスターで、対面に居る″別の何か″は、体長50メル程の人型モンスターであった。


ゥボォオオオオッ!ドゥンッ!

ベェァア『ゴガンッ!』ァバァア″ッ!


掴まっていた杭から勢い良く身を乗り出した『シーベッド・マウンテンゴリラ』は人型の″別の何か″に襲い掛かるも、顔面に重い一撃を受け、咆哮を上げながら吹き飛ばされてしまった。

迎撃した″別の何か″は吹き飛ばした『シーベッド・マウンテンゴリラ』に見向きもせずに呟いた。


「ふむぅ、<人化>とは難儀なものよ!
通常時の1/100も出力が出せんとはっ!
…が、弱きモノとして見ていた者共と対等に殺り合う事が出来る故、永らく出せなかった本気で挑めるというのが中々に趣が合って良いモノだわい。」


<人化>に伴う自身の攻撃力低下に歯噛みしながらも、久しく出せなかった本気でのやり取りに心を震わせていた。


オゴァア″ア″ア″ア″ア″ッ!

「くっくっく…
大なる者に挑む小…我が息子と殺り合った人族の少年ノアも斯様な心持ちだったであろうな。」


自身の4倍の体長を誇り、顔面の左半分がぐしゃりと潰れ、怒髪天の相貌で吠え散らかす『シーベッド・マウンテンゴリラ』を前にした″別の何か″=エルダー・クラーケンは、自身の息子を前にしたノアの気持ちを夢想していた。

ちなみにノアは当時心震わせる事無く、複雑骨折や内臓破裂等により体を震わせていたのだが、″別の何か″は知る由も無い。


ガッ!ガシッ!ギュゥヴヴヴッ!

「ハッハッハッ!次で仕留めるとでも言わん程に力を籠めておるな?
我の『エルプシオン・ヴォルカニカ』を食らって顔面の崩壊で止まっておるという事は、それ以上の攻撃を与えにゃ殺せん様だ!
全開には程遠いが、食らうが良いぞ!」

ヴォン、ヴォンヴォンヴォンッ!

ドゥンッ!オヴァア″ア″ア″ア″ア″ア″ッ!


『シーベッド・マウンテンゴリラ』が巨大な両の手を合わせて力を籠める。
大方自重をフルに乗せた渾身の叩き付けを食らわせると思われるが、体長200メルを越す超巨体が繰り出せばその威力は計り知れない。

そんな『シーベッド・マウンテンゴリラ』に対するエルダー・クラーケン<人化>形態は、力を凝縮させる様な音を響かせながら、拳を強く握りだした。

直後、『シーベッド・マウンテンゴリラ』は咆哮を上げながら対面に居るエルダー・クラーケン<人化>形態に向かって大きく跳躍していった。

そこに


「『エルプシオン・カタストロフィカ』!」


と、エルダー・クラーケンが何やら技名の様なモノを叫びながら『シーベッド・マウンテンゴリラ』に向かって拳を振るう。

何の変哲も無いグーパンチである。

この場合、『エルプシオン・カタストロフィカ』とは技名等では無く、攻撃の『出力』を意味している。

先程『シーベッド・マウンテンゴリラ』に食らわせ、顔面の左半分が崩壊に止まった『エルプシオン・ヴォルカニカ』は、<人化>形態では無く本来のエルダー・クラーケンが地上で繰り出せば『火山噴火』に相当する威力を持つ。

これはエルダー・クラーケンが出せる最大出力の『上から3番目』に該当する。

そして今しがた繰り出した『エルプシオン・カタストロフィカ』は『上から2番目』、『破局噴火』に該当する。

幾ら<人化>形態となり、『出力』が1/100にまで落ちたとはいえ


『ゴォ『ガヂョッ『ドパパパパパァンッ!!!』』


振り下ろされた巨拳の塊にエルダー・クラーケンの拳が突き立ささると、『シーベッド・マウンテンゴリラ』の巨拳は粉砕。
衝撃波が拳を中心として伝播し、直径100メルの範囲の空間が一瞬歪む。


『バ『ドバァッ!』』


膨張、収縮、破壊が瞬間的に行われ、『シーベッド・マウンテンゴリラ』の首から腰の辺りまでが原型を止めぬままに砕け散った。

その結果周辺500メルの範囲内は、一時的に血の海に染まるのであった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...