ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

撤退も視野に

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鎖付きの鉄球…何故か3日程前から獣人国から南下した滅びの森周辺に置かれていた物。
丁度馬車を引いて運搬していた人に聴取してみた所、「″神託″があった」等と訳の分からない事を言ったという。 

取り敢えず直ぐに動かせる物でも無いので、国交式典が終わってから対処しようと放置していた。



ジャラジャラジャラ!『ゴォッ!』ビィンッ!

『『『グシャグシャグジャッ!』』』 

ギェエエエエエッ!?
ガァアッ!

ゲェァアッ!

『ふんっ!』

『『ゴシャッ!』』


自身の周囲にモンスターが集まってくれば鎖付きの鉄球をぶん回して蹴散らし、接近して来るモンスターがいれば鎖を手繰り寄せて短く持ち、ハンマーの様に扱って単体で叩き潰す。

ノアの膂力だからこそ出来る芸当である。


(『良いねぇ良いねぇ!
大体10メル位の鎖付き鉄球の両手持ちだから直径20メル程の範囲攻撃が可能だぜ!
やったな主殿!』)

『こういう時ふつーは新技が発現する流れじゃないの!?』

(『世の中そんな甘くは無ぇぜって!』)

『でしょうね!』

ゴチュッ!

『所で皆さん大丈夫ですかっ!』

「お、おぅ…(バド)」
「…何じゃ坊その鉄球は…(ルド)」
「これまたヘンテコな武器を操っておるのぅ…(ロイ)」

『その辺に落ちてたんで有り難く使わせて貰ってますぅ!』

「何で少しキレ気味なんじゃ?(ロイ)」


鎖付き鉄球を両手持ちしてドッタンバッタン大騒ぎのノアは近い所で苦戦していたドワーフ3人組、援護に来たラインハード、ヴァンディットの下に到達した。


「それよか坊よ、ここはエエ。
寧ろ後ろにあるキノコの山ん所を援護しに行ってくれんか?(バド)」

「怪我人がかなり出とって今にも瓦解しそうじゃとさ。(ルド)」

『分かりました!
ラインハードさんは3人の援護、ヴァンディットさんは後ろに着いて防壁の所まで一緒に行きましょう!』

「は、はい!(ヴァンディット)」

「らじゃ。(ラインハード)」ガションッ!


ドワーフ達は後方のバックラッシュルームを指差し、援護に向かう様にと指示した。

ノアに指示されたヴァンディットはドワーフ3人を心配そうに見詰めていたが、ロイが手をヒラヒラ振って


「安心せぃ。
坊の大立ち回りに圧倒されてオカシナ考えはもう頭に無い。(ロイ)」

「儂らも下がって防衛に励むとするわい。(バド)」

「死して食い散らかされるのは御免じゃからな。(ルド)」

『『ガガッ!』』『『ゴゴンッ!』』『ガガッ!』

「それなら善は急げ!
さっさと後退しましょう!(ラインハード)」





ガァアッ!バキッ!

ズシャッ!「ぅぐっ!(ハナ)」

ゥガァアッ!『ガギィンッ!』ギギギギ…


ギガンティック・ダックス憤怒に蹴飛ばされた騎士団団長のハナは、尻餅を付いた体勢で飛び掛かってきたエグリゴリラと鍔迫り合いとなった。

何とか噛み付かれる寸前に剣を口内に差し込んで防いだものの、力では圧倒的で、疲弊しているハナの体力ではいつまで持つか分かったものではない。


「ハナ!?
皆!助けに…(サクラ)」

「ぐ…ぅぐぐ…」
「はぁ…はぁ…」
「くっ…力が出ない…」


【盾】兵の直ぐ後ろで膝を着いて息を整える者、剣を支えにして何とか立っている者、脱力状態で地面に倒れ伏している者達等が散見される。

騎士団以外でも防壁の中で休む者、手当てされている者等がおり、既に前線崩壊の状態であった。


ギギギギ…

「ふぐぐぐ…もう『ゴゥッ!』もたな…『犬姫ぇ!』

「「「「「「「へ?」」」」」」」

『伏せぇい!』ゴォッ!

『『『『『『『バッ!』』』』』』』

『『『『『『『ゴシャゴシャッ!』』』』』』』


突如団名を叫ばれて反応した犬姫騎士団達は、その後の命令にも体が反応してしまい、全員地面に伏せると、頭上を高速で鉄球が通過していった。

その範囲に居たモンスターは一掃されていった。
ちなみにハナに襲い掛かっていたエグリゴリラは、鉄球に付いていた鎖が首に引っ掛かって手繰り寄せられていった。


ジャラジャラジャラッ!

ズダァンッ!

ゥゴォオ『スラッ…』『ドズゥッ!』オッ!?


手繰り寄せられたエグリゴリラの首に一振りの刀が深々と突き刺さる。


ゴォ…『ゾリッ!』ォ…


エグリゴリラが最後に見た光景は、幼さを残す1人の少年が容赦無く、刀を真横に引き抜く光景であった。


ピッ!ヒュバッ!シャコンッ!

『ふぅ、何とか間に合ったみたいですね。』

「ノ、ノア君…ありがとう助かったわ…(ハナ)」


納刀したノアは一先ずハナの下へ向かい、周囲を見回す。

そこに


ザッザッ…

「おお…ノア殿、今のは君だったか。(我矛修羅(ガムシュラ))」

「はは…相変わらず恐ろしい戦闘力だ…
この場においては有難い事だが…(ルルイエ)」

「噂通りの戦闘力…流石【鬼神】ですな…(ワン)」

「…やぁノア君、フリアダビア以来…
戦場でまた出会う事になるとはな…(エルグランド)」

『あ、皆さんこの間はどうも…
…って、あれ?エルグランドさん、何故ここに…
フリアダビアに居るハズじゃ…?』


騎士団に加えて募った有志の代表らがノアの下に集まってきた。


「その話は後にしよう…
早速だがノア君、皆ここに集まり防衛に努めて来た訳だが、見ての通りこれ以上この場を死守していられるのも時間の問題となってきた…(エルグランド)」

「…心苦しい事ではあるが、協力しつつ街まで後退しようと考えて『良いですよ。』…え?(我矛修羅)」


重い表情で現状を報告してきたのだが、思いの外軽い返事が返って来た事に驚く一行。


『正直に言って戦況も悪いし援軍があるとすら思ってませんでしたしね。
何せ今日は本来国交式典だったんですから。
寧ろ良くここまで頑張ってくれたと思っている位です。
なので後退する事に意見する事はありませんよ。』

「「「「「「「「……。」」」」」」」」


と、ノアは防衛戦に参加してくれた者達を讃えてはいたものの、その場に居る全員の表情はやはり暗かった。


『ですがその前に、1つ皆さんに″施して″みようと思うのですが如何でしょう。
それを試してみてからでも遅くは無いと思います。』

「「「「「「「「″施す″…?」」」」」」」」


ノアの言う″施し″が引っ掛かり、全員の頭上に疑問符が浮かぶ。
だがノアは気にする事無く、直ぐに行動を開始した。


『グリード!1度戻ってきてくれ!
それとこの戦闘に参加されている方々!
出来る限り近くに集まってきて下さい!
防壁の中に居る方々はそのままで結構です!』


契約獣のグリードを呼び戻し、離れた場所に居るドワーフ達やエスメラルダ等を一度呼び戻す。

続けて


『クリストフ!何やら栽培している様だけど、回復系か!?』

「えぇそうで御座います!
もう直ぐで成長しきりますので…よし、完熟致しましたぞ!(クリストフ)」

『『『ズボッ!』』』


今の今までバックラッシュルームの防壁内で地面に膝を付き、何やら栽培中であったクリストフだが、目当てのキノコが成長しきったのか、地面から3本のキノコを引っこ抜いて頭上に掲げていた。


『取り敢えずそれを使用して皆を回復させてくれ!』

「了解しましたぞノア殿!
『万年埃茸』+『弱燃茸』+『キュアキュアマッシュルームの胞子』による広域回復技!
食らいなさい!(クリストフ)」

『『『ボフンッ!』』』

「「「「「「「「おわっ!?」」」」」」」」

(良いなぁ…クリストフですら範囲技持ってるのか…)

(『主よ…まだ引き摺ってたのか…』)


右手に『万年埃茸』と『弱燃茸』を手にし、左手に『キュアキュアマッシュルームの胞子』を山盛り乗っけた手を地面に叩き付けると、辺り一面白煙に包まれた。

その範囲は広く、20メル程離れ、こちらに向かってきている途中のドワーフ達やグリードにも届いていた。
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