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取り敢えず南へ編
野盗が生まれる過程
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~ノアが居る場所から三山程離れたとある山道~
ザッザッ…
「ハァ…ハァ…くそ…どこまで行っても山、山、山…村の1つも見付かりゃしない…
すばしっこいネズミ位しか遭遇しなかったから腹減った…」
鬱蒼と生い茂る森の中を、とある冒険者が1人で彷徨っていた。
足取りは重く、前日に食事を摂って以降何も口にしていない様子。
何故彼が山の中を彷徨っているかと言うと
「ハァ…ハァ…こんな事ならアイツらに土下座してでもパーティに残らせてくれと言えば良かった…
″今後は過剰に攻撃を加えて、モンスター素材をダメにしない″ってあの時の自分が言えていたらなぁ…(ハイン)」
彼(ハイン)は、数日前に試験街テスタでパーティを抜けさせられた新人冒険者である。
″抜けさせられた″と聞くと被害者と捉えられてしまうかも知れないが、彼は冒険者生活を始めてパーティを組んでから3ヶ月もの間、倒したモンスターに対して過剰な追撃を行って度々素材をダメにしていた。
パーティ仲間から咎められても止める事は無く、この度堪忍袋の緒が切れて抜けさせられたのであった。
彼は多少の残虐性と自分の力を誇示して自分を大きく見せたがる癖を持っていた。
それ故、抜けさせられた直後は「後で俺の力を失って後悔する事になるぞ!」等と吐き捨てる様に言って、感情に任せて抜けていったのだった。
彼は今その発言をした事を後悔していたのだった。
スン…スン…
「あれ…?何か煙いぞ…?
もしかして村が近いのでは…?(ハイン)」ザザッ!
そんな時、何処からか煙の匂いを感じ取ったハインは、村が近い事を悟って駆け出すのであった。
「な、何だよこれ…(ハイン)」
ドカァッ!バキバキ…!
「はっはっはっはー、食い物は洗いざらい持っていけ!
これらは全て我々の糧とするのだぁっ!」
「「「「おぅよ!」」」」
「「「「「う、ううう…」」」」」
ハインが煙の匂いを辿ってとある村までやってくると、″ある集団″が村を襲っている最中で、広場にはその村に住まう住人達が集められ、周りに居る者達は剣を向けて見張っていた。
ボロ布を纏っている者が居たので、てっきり野盗による襲撃と思われたが、装備の整った者も何人か居た為、ハインはこの状況が何なのか分からず困惑していた。
が
シャキン!
「お、おい!お前ら!
村を襲って何をしてやがる!
こんな事をして良いと思っているのか!(ハイン)」
「んー?」
「何だ?冒険者か?」
「1人だな。」
「仲間は居ないな。」
「装備を見てみろ、ありゃ新人だ。」
腰に差していた剣を抜き放ち、襲撃中の者達に叫び放つ。
するとハインに気付いた者達は手を止め、何故か余裕の表情でハインの方に近付いていく。
「く、来るな!
いいか?俺は野盗と何度もやり合ってて何度も牢獄送りにしているんだ!
村を襲うのを止めれば見逃してやるぞっ!(ハイン)」
「へへ、威勢が良いねぇ。」
「でもアイツ多分″アレ″だろう?」
「だろうな。」
「俺は続けるぞ?」
「あいよ。」
「止めろと言っているだろう!(ハイン)」
野盗の集団は余裕の表情を崩さず、何なら襲撃の続きを行う者も居た位である。
そんな彼らに、ハインは剣を振り被って威嚇をする。
が
パン。「へ?」ガランガラン!
「周りを良く見ろ″爪弾き者″。
やはり新人冒険者か、ノリと勢いだけでここまで来たって感じの様だな。」
音も無く背後から近付いてきた人物に剣を弾かれ、取り落としてしまった。
「あ、あぁ…(ハイン)」
「こいつは俺の方で″教育″してやる。
皆は仕事を続けろ。」
「「「「うーす。」」」」
剣を落としたハインは一気に顔を青ざめさせて、地面に膝を付く。
そんなハインに
「よぅ″爪弾き者″、お前は何か勘違いしている様だな。」
「…な、何…?(ハイン)」
「端から見たら野盗集団の襲撃に見えるだろうが、俺達は″【勇者】軍″の一部隊なのさ。」
「ゆ、″【勇者】軍″…!?(ハイン)」
ペラ…
「ほれ、これがその書状だ。
俺達にはそれなりに″権限″を持っていて、訪れた村々から″施し″を得る事が許されている。
だがそれに応じない村から″強制的に搾取″する事が許されているのさ。」
「そ、それがこの襲撃って事…なのか…?(ハイン)」
「襲撃じゃねぇよ、″施し″を得ようとしたら拒否されたから″強制的な搾取″を行っているだけだ。
あぁ…何と心苦しい事か…」
謎の人物は懐からイグレージャ・オシデンタル製の書状を取り出してハインに見せる。
そこには
″貴君らが″【勇者】軍″である限り、全ての村々からの″施し″を得る事を許可する。
拒否された場合″強制搾取″を行使する権限を与えよう。″
等と無茶苦茶な文言が認められていた。
だがハインはこの全ての文言には目を通さず、謎の人物が発した″【勇者】軍″と″権限″と言う言葉に反応していた。
「つまりこれは″【魔王】討伐を成そうとする我らを阻もうとする背信者に対する罰″なのだよ″爪弾き者″。」
「そ、そう…なのか…?
…と言うかさっきから俺の事を″爪弾き者″って言ってるが、そんな事言われる筋合いは無「お前、どっかのパーティから抜けさせられた類いのヤツだろ?
この時期に一人行動しているヤツなんか大抵そんな連中ばかりだ、特に新人冒険者なんかは特にな。」なっ…!?(ハイン)」
ハインは謎の人物が言った言葉に反論する事が出来なかった。
何せ言っている事が思いっ切り図星だったからだ。
「い、いや…あ、う…(ハイン)」
その反応を見た謎の人物は畳み掛ける事にした。
「まぁお前が何をやってパーティ抜けさせられたかはどうでも良い。
そこで相談なんだが、俺達″【勇者】軍″は野盗なんかの手を借りなきゃいけない位の人手不足でな。
″新進気鋭″の冒険者が俺達を手伝ってくれたら非常に助かるんだよねぇ。」
「え?…は?(ハイン)」
「【勇者】の悲願と言える″【魔王】討伐″を達成した暁には、君も″【勇者】軍″の一員として世に名を連ねる事になるのだよ。」
「え、お、おぉ…(ハイン)」
「ただそれまでの間、″多少″の犠牲は付き纏う事になるが、俺達の一部隊に与すれば君にも一定の″権限″が着いてくる。
今目の前で行われている蛮行すら″不問″とされるのだよ。
略奪、暴力、強姦、ありとあらゆる犯罪行為全てが、だ。」
ゴクリ…
この段階でハインの思考は塗り潰され掛かっていた。
勿論″【勇者】軍″と言うモノが判断を鈍らせていたのだが、そんな事を考える余裕は今のハインには無い。
その判断の甘さを突き、付け入ろうとしているのがこの人物なのである。
謎の人物は知っている。
彼が何処かのパーティから抜けさせられた″問題児″である事、新人冒険者は若年故判断が曖昧である事、ちょっとした誘惑を匂わせれば簡単に飛び付く事、早い段階から楽を覚えれば努力を怠る事を。
その後ハインは″ある行為″を行ってしまった事で、″【勇者】軍″に入らざるを得ない状況になってしまうのだが、それはまた別の話で。
ザッザッ…
「ハァ…ハァ…くそ…どこまで行っても山、山、山…村の1つも見付かりゃしない…
すばしっこいネズミ位しか遭遇しなかったから腹減った…」
鬱蒼と生い茂る森の中を、とある冒険者が1人で彷徨っていた。
足取りは重く、前日に食事を摂って以降何も口にしていない様子。
何故彼が山の中を彷徨っているかと言うと
「ハァ…ハァ…こんな事ならアイツらに土下座してでもパーティに残らせてくれと言えば良かった…
″今後は過剰に攻撃を加えて、モンスター素材をダメにしない″ってあの時の自分が言えていたらなぁ…(ハイン)」
彼(ハイン)は、数日前に試験街テスタでパーティを抜けさせられた新人冒険者である。
″抜けさせられた″と聞くと被害者と捉えられてしまうかも知れないが、彼は冒険者生活を始めてパーティを組んでから3ヶ月もの間、倒したモンスターに対して過剰な追撃を行って度々素材をダメにしていた。
パーティ仲間から咎められても止める事は無く、この度堪忍袋の緒が切れて抜けさせられたのであった。
彼は多少の残虐性と自分の力を誇示して自分を大きく見せたがる癖を持っていた。
それ故、抜けさせられた直後は「後で俺の力を失って後悔する事になるぞ!」等と吐き捨てる様に言って、感情に任せて抜けていったのだった。
彼は今その発言をした事を後悔していたのだった。
スン…スン…
「あれ…?何か煙いぞ…?
もしかして村が近いのでは…?(ハイン)」ザザッ!
そんな時、何処からか煙の匂いを感じ取ったハインは、村が近い事を悟って駆け出すのであった。
「な、何だよこれ…(ハイン)」
ドカァッ!バキバキ…!
「はっはっはっはー、食い物は洗いざらい持っていけ!
これらは全て我々の糧とするのだぁっ!」
「「「「おぅよ!」」」」
「「「「「う、ううう…」」」」」
ハインが煙の匂いを辿ってとある村までやってくると、″ある集団″が村を襲っている最中で、広場にはその村に住まう住人達が集められ、周りに居る者達は剣を向けて見張っていた。
ボロ布を纏っている者が居たので、てっきり野盗による襲撃と思われたが、装備の整った者も何人か居た為、ハインはこの状況が何なのか分からず困惑していた。
が
シャキン!
「お、おい!お前ら!
村を襲って何をしてやがる!
こんな事をして良いと思っているのか!(ハイン)」
「んー?」
「何だ?冒険者か?」
「1人だな。」
「仲間は居ないな。」
「装備を見てみろ、ありゃ新人だ。」
腰に差していた剣を抜き放ち、襲撃中の者達に叫び放つ。
するとハインに気付いた者達は手を止め、何故か余裕の表情でハインの方に近付いていく。
「く、来るな!
いいか?俺は野盗と何度もやり合ってて何度も牢獄送りにしているんだ!
村を襲うのを止めれば見逃してやるぞっ!(ハイン)」
「へへ、威勢が良いねぇ。」
「でもアイツ多分″アレ″だろう?」
「だろうな。」
「俺は続けるぞ?」
「あいよ。」
「止めろと言っているだろう!(ハイン)」
野盗の集団は余裕の表情を崩さず、何なら襲撃の続きを行う者も居た位である。
そんな彼らに、ハインは剣を振り被って威嚇をする。
が
パン。「へ?」ガランガラン!
「周りを良く見ろ″爪弾き者″。
やはり新人冒険者か、ノリと勢いだけでここまで来たって感じの様だな。」
音も無く背後から近付いてきた人物に剣を弾かれ、取り落としてしまった。
「あ、あぁ…(ハイン)」
「こいつは俺の方で″教育″してやる。
皆は仕事を続けろ。」
「「「「うーす。」」」」
剣を落としたハインは一気に顔を青ざめさせて、地面に膝を付く。
そんなハインに
「よぅ″爪弾き者″、お前は何か勘違いしている様だな。」
「…な、何…?(ハイン)」
「端から見たら野盗集団の襲撃に見えるだろうが、俺達は″【勇者】軍″の一部隊なのさ。」
「ゆ、″【勇者】軍″…!?(ハイン)」
ペラ…
「ほれ、これがその書状だ。
俺達にはそれなりに″権限″を持っていて、訪れた村々から″施し″を得る事が許されている。
だがそれに応じない村から″強制的に搾取″する事が許されているのさ。」
「そ、それがこの襲撃って事…なのか…?(ハイン)」
「襲撃じゃねぇよ、″施し″を得ようとしたら拒否されたから″強制的な搾取″を行っているだけだ。
あぁ…何と心苦しい事か…」
謎の人物は懐からイグレージャ・オシデンタル製の書状を取り出してハインに見せる。
そこには
″貴君らが″【勇者】軍″である限り、全ての村々からの″施し″を得る事を許可する。
拒否された場合″強制搾取″を行使する権限を与えよう。″
等と無茶苦茶な文言が認められていた。
だがハインはこの全ての文言には目を通さず、謎の人物が発した″【勇者】軍″と″権限″と言う言葉に反応していた。
「つまりこれは″【魔王】討伐を成そうとする我らを阻もうとする背信者に対する罰″なのだよ″爪弾き者″。」
「そ、そう…なのか…?
…と言うかさっきから俺の事を″爪弾き者″って言ってるが、そんな事言われる筋合いは無「お前、どっかのパーティから抜けさせられた類いのヤツだろ?
この時期に一人行動しているヤツなんか大抵そんな連中ばかりだ、特に新人冒険者なんかは特にな。」なっ…!?(ハイン)」
ハインは謎の人物が言った言葉に反論する事が出来なかった。
何せ言っている事が思いっ切り図星だったからだ。
「い、いや…あ、う…(ハイン)」
その反応を見た謎の人物は畳み掛ける事にした。
「まぁお前が何をやってパーティ抜けさせられたかはどうでも良い。
そこで相談なんだが、俺達″【勇者】軍″は野盗なんかの手を借りなきゃいけない位の人手不足でな。
″新進気鋭″の冒険者が俺達を手伝ってくれたら非常に助かるんだよねぇ。」
「え?…は?(ハイン)」
「【勇者】の悲願と言える″【魔王】討伐″を達成した暁には、君も″【勇者】軍″の一員として世に名を連ねる事になるのだよ。」
「え、お、おぉ…(ハイン)」
「ただそれまでの間、″多少″の犠牲は付き纏う事になるが、俺達の一部隊に与すれば君にも一定の″権限″が着いてくる。
今目の前で行われている蛮行すら″不問″とされるのだよ。
略奪、暴力、強姦、ありとあらゆる犯罪行為全てが、だ。」
ゴクリ…
この段階でハインの思考は塗り潰され掛かっていた。
勿論″【勇者】軍″と言うモノが判断を鈍らせていたのだが、そんな事を考える余裕は今のハインには無い。
その判断の甘さを突き、付け入ろうとしているのがこの人物なのである。
謎の人物は知っている。
彼が何処かのパーティから抜けさせられた″問題児″である事、新人冒険者は若年故判断が曖昧である事、ちょっとした誘惑を匂わせれば簡単に飛び付く事、早い段階から楽を覚えれば努力を怠る事を。
その後ハインは″ある行為″を行ってしまった事で、″【勇者】軍″に入らざるを得ない状況になってしまうのだが、それはまた別の話で。
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