ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
842 / 1,117
取り敢えず南へ編

再会・再会

しおりを挟む
~『ウォルタメ』入口~


「ここが『ウォルタメ』じゃな。(バド)」
「その様じゃ。畑特有の匂いがしちょるしな。(ルド)」
「さて、坊はこの村に居るとええんじゃが…(ロイ)」


ドワーフ3人組が『ウォルタメ』に到着した。
商人から聞いた″【勇者】軍″の件をノアに伝えるべく、早速この村にノアが逗留しているかどうか探る様だ。


「おぃーっす、誰ぞ居ら

「お、おい皆!″死にたがり″のザラットが例の少年と戦ってるんだが、防戦一方だから見に来いよ!」
「「「あのザラットさんが!?」」」
「あの少年タダ者じゃないぜ!」


入村直後、近くにいた村人達が他の村人を誘って村の奥の方へと向かっていった。
何かあって周りが見えていなかったのだろう、村人達はドワーフ3人組にも気付いていなかった。


のっそのっそ…

「あぁ、坊はここに居るわ。(バド)」
「じゃな。
また何かに巻き込まれとる様じゃな。(ルド)」
「平常運転じゃ。(ロイ)」


今までの傾向からしてノア達が逗留していると確信したドワーフ3人組は、のそのそと村の中へと入っていったのだった。





ズザザッ!『ヒュンッ!』
『ヒュヒュヒュン!』ズザッ!『ヒュンッ!』

(よ、よし…
目が速さに馴れてきた…これなら…

『ズドドドドッ!』

「がぁあああっ!(ザラット)」

「速度に馴れてきましたね?
ならもう少し速度を上げても大丈夫そうですね。」

ビュンッ!


″<無刀幻視>″を発動したノアから繰り出される連撃を回避し続け、段々と速度に馴れてきたザラットだったが、更に速度が乗った連撃を左手首から肘までの間に5回叩き込まれ、思わず膝を着き、叫び声を上げてしまった。

だが左腕は何事も無い様に無傷であるが、ザラットの額には脂汗が浮かび、実際に斬られたかの様に苦悶の表情をしていた。



<無刀幻視>… "ある程度"の戦闘力があれば、手に剣を持っていないのに剣があるかの様に見え、斬られていないのに斬られたかの様に相手を錯覚させるスキル。

熟練度によって差異があり最大まで鍛えれば相手の戦意を喪失させる事や、格下のモンスターを撃退させる事すら可能。

このスキルの有無・熟練度がその者の力量をそのまま指し示す指標にもなり得る。



ヒュン!『スカッ!』ヒュン!『スカッ!』

「見ての通りこの剣は″幻影″みたいなモノです。感触も無ければダメージも無い。
が…こちらの技術、気迫、殺気、その他諸々を組み合わせる事で、さも本当に斬られているかの様に錯覚させているに過ぎない…」


自身が出現させた刀身を振り、腕を2、3度通過させるノア。
当たり前だがノアの腕が斬れる事は無い。


「だからザラットさん、心行くまで″死の恐怖″を味わって下さい。」

ヒュンッ!

(っ、消え…違…上っ!(ザラット))

ザッ!『ヒュドッ!(頭上からの兜割り)』

(蹴『ドガッ!』「ぎっ!」


姿が掻き消える程の速度で移動したノアはザラットの頭上から強襲。
寸での所で避けるも、ノアのしゃがみ蹴りが襲い、ザラットの直感力が働く寸前に命中。


ゴロゴロゴロッ!

ズザザッ!(ザラットの背後に回り込む)
ヒュンッ!(出現させた剣を逆手持ちにする)

(この位置…首「うぉおお!」

バンッ!ヒュボボボッ!(地面を叩いて飛び上がりつつ回転斬り3連撃を放つ)

ヒュオ…ガギッ!(3連撃をスレスレで回避しつつザラットの首を掴む)

「ぅがう『ギュゥウ…』ぐげげ…」


凄まじい力で締め上げられ、ザラットの顔がドンドンと青ざめていく。
直感と言うかほぼ反射的に首からノアの手を引き剥がそうとするも、その手はびくともしない。


(死…し、死ぃ…「っぁ″あ″あ″っ!」

ドヒュッ!(ロングソードをノアの顔面に垂直に叩き込む)

ギィインッ!(そのロングソードを歯で受け止める音)

「っ!?」

ゾリッ!(出現させた剣をザラットの首に叩き込む音)


決死の覚悟でノアに剣を突き立てたが、それすらも迎撃され、反対にザラットは首を撥ね飛ばされてしまった。(※実際は斬れてません)


ギリリリ…

「……っ……っ…」


首を締め上げられた事による酸欠と、<無刀幻視>によって首を撥ねられたザラットは、一気に″死の恐怖″に襲われた。
今までこの村周辺やって来て勝負を挑み、得た事の無かった急激な″死の恐怖″が。

視界が明滅し、全身が脱力、鉛の様に重くなっていく。

すると


″……た…″

(…あ、この感覚は…)

″あ…た…また……な事…″
″…と…ん…ぁ……″

(あぁ…この声は…俺…がもう一度聞きたかっ…た声…だ…)


ザラットは、″視えないモノが見える″初期段階、″走馬灯″が見え出していた。
そこにはザラットの記憶の中に存在する″ある2人の人物が笑みを浮かべて″ザラットと対面していた。

直後


ドガァンッ!(首を締め上げたまま地面に叩き付けられた音)


衝撃が逃げない様に首を押さえたまま背中から地面に叩き付けるノア。
砂埃が舞う程の衝撃がザラットを襲い、彼はそのまま意識を手放したのであった。





「ちょ、ザラット!大丈夫かい!?ザラット!ザラット!?(アレイ)」
「ザラットさん!?」
「ザラット!」
「ザラットさん!?」

「ノア様!やり過ぎでは!?(ヴァンデイット)」
「回復措置を取りましょうぞ。(クリストフ)」

「安心して、気を失っているだけだ。
自然に目を覚ますのを待とう。」


地面に叩き付けられ、ぐったりとしたザラットの下に、宿場のおばちゃんアレイと村人達が。
ノアにはヴァンデイットとクリストフが駆け寄ってきた。


「それに…どうやら″目的″は達成出来たみたいですしね。」


気を失っているザラットを見てみると、目からは涙を流し、口元には笑みが浮かんでいた。





「っ…(ザラット)」ガバッ!
「「ザラットさん!」」
「ザラットォ!」
「目を覚ましたかいザラット。(アレイ)」

「大体1分位気絶してましたね。
どうです?″走馬灯″はちゃんと見えましたか?」

「……。(ザラット)」スッ…


意識を取り戻したザラットに安堵の表情を見せる村人達とアレイ。
ノアに問われたザラットは無言で立ち上がり


「…っ…ありがとうノア殿…
久し振りに″家族″の元気な姿と声が聞けた…(ザラット)」

「やはり″家族″を″見たかった″のですね。
″死の恐怖″を覚える、という事は″死の世界に近付く″事です。
″自身を死の世界に近付ける″事で、″死の世界の人達″が″見える″様になります。
あなたの″家族″が周りに居れば見える様になりますが、今まで″視えなかったモノ″も纏めて″見えて″しまいます。
だからあまりオススメしたくなかったんです。」

「だが、君は実行してくれたではないか…(ザラット)」

「戦闘中少しでも″死にたくない″と言えばそこで手を止めるつもりでした。
でもあなたは″生″に向かわずに攻撃を仕掛け″死″に向かおうとしました。
それ程までの熱量があったので、僕は応えたまでです。」

「…そうか…俺の要望に応えてくれて感謝する…(ザラット)」


未だ目尻に涙を浮かべてはいるが、自然な笑みを浮かべるザラットは、ノアの言葉を受けてどこか腑に落ちた表情をしていた。

その後ザラットはノアと固い握手を交わし、何度も礼をしていた。





「そう言えば名前しか聞いていなかったが、君は一体何者なのだ?
歳で言えば新人冒険者にしか見えないが…(ザラット)」

「ははは…ちょっと前までは確かに新人冒険者でしたよ。
つい最近中級に上がりましたが…
では改めて…僕は冒険者のノア。世間的には【きじ「「「おーぅい!坊!また何かやっとるのぅ!」」」

「…あ、追い付かれてたか。」


ノアがザラットに対して改めての自己紹介をしようとした所、村の方からドワーフ3人組の大声が聞こえてきたのだった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...