ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

トラウマ

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~女性陣と合流・食事処『爺婆の台所』~


「んもぅ、私達を置いて黙って宿を出るなんてヒドイですよ…(ヴァンディット)」

「皆ぐっすり寝てるのに声掛けられないでしょ…
でも書き置き位残しておけば良かったと反省してるよ…」

「それでもって相変わらず展開が早いよねー、ノア君って。
何で寝て起きたら『ノア君対教会関係者』って構図が出来上がってるの?(ラインハード)」

「いや別に敵対関係になった訳じゃないからね?
霊を″視える″様にする為に各々の実力と覚悟を見る必要があるだけですからね?」

「あの、ノアさん、霊を視る″覚悟″ってなんなんですか?(ミリア)」


女性陣と合流したノアは、食事処『爺婆の台所』(先程のお爺さんの店)へとやって来て朝御飯を食べつつ朝起きてから今までの事を説明していた。

ラインハードやヴァンディット、商人見習いのミリアは『聖霊銀(ミスリル)』の存在自体は知っていた様だが入手経路までは知らなかった様子。

それを聞いた一同は、教会関係者を″視える″様にする事については納得してくれた。
ただ、″覚悟″についてはイマイチピンと来ていない様であった。


「そうだねぇ…ミリアちゃんは幽霊ってどんなのを想像するかな?」

「幽霊ですか?
…『キョロキョロ…』あ、あの、昨日のギルドマスターみたいな人…ですかね…(ミリア)」



~アンテイカーの冒険者ギルドマスター~
・白い服
・顔が隠れる位の長い髪
・不気味



「うん、そういうのを想像するよね。
当たってはいるけど、まだ半分って所だね。」

「半分?(ミリア)」

「あくまで僕の経験則だけど、″亡くなる直前の状況″が″比較的良かった人″の見た目だね。
老衰・″即死″とかがこの場合だ。」

「そ、″即死″…?(ミリア)」

「…もしかして、″覚悟″がいる霊って″亡くなる直前の状況″が″良くない人″って事?(ミダレ)」

「うん。
僕含めた″視える人″って、人それぞれに″死に掛けた当時の状況″と酷似した霊を視る事になる。
謂わば″トラウマ″なのさ。
僕で言えば″病気″で何度も死に掛けたから、亡くなる直前に″病死・餓死・衰弱死″した霊を視るのは今でも苦手なんだ。」

「…もしかして、以前王都でヴァモス君とベレーザちゃんに初めて会った時に体調が急変していたのって、それが原因でだったのですか…?(ヴァンディット)」



~王都編・タイトル『ヒュマノ聖王国の者』より抜粋~


「はぁ…はぁ…はぁ…うっ、げぇぼぉっ…」ビチャチャ…

「お、おい!大丈夫か!?」

ズルッ

「ノア君!?」
「ノア様!?」


クロラとヴァンディットの2人は、ノアの異変に慌てて避難していた影の中から飛び出す。



「うん、あの時は相手を操る固有スキルを使用したから。
なんて言ってお茶を濁していたけど、酷い状態の2人と当時の僕とが重なって見えてああなっちゃったんだ。」


視える者は人それぞれで、死に近付いた形も人それぞれである。
それ故トラウマと酷似した霊も数多く居る為、″視える様になる″というのは相応の覚悟が必要となる訳である。


「ウォルタメに居たザラットさんにはそういったトラウマを植え付ける訳にもいかなかったので、比較的簡単な方法で″視える″様にしました。
教会の方々にも同様の方法で授けようとは思っています。
が、安易に授けては彼等の為にならないでしょうから、ある程度は実力と覚悟を持って貰いますがね。」

「「「「「……。」」」」」


ノアとしては今回も<無刀幻視>を用いた方法で″視える″様にするつもりらしいが、ザラット程優しくは行わないつもりだ。

″簡単″に習得されては教会での礼拝等の正式な手段での習得を疎かにし、安易な方法で今後も執り行われては堪ったものではない。

なのでザラットにやった方法よりもキツめにするつもりだと言う。


「全く、開店直後に大所帯で訪れたと思ったら場をしんみりとさせおって。
ほれ、『爺婆の気まぐれ定食』じゃ。
その手の話はそこまでにして、冷める前に食っちまいな。(お爺さん)」

「あ、あはは、そうですね。
それじゃ皆さんこの話はここまでにして朝御飯食べちゃいましょう。いただきます。」

「「「「「いただきまーす。」」」」」





~数十分後・冒険者ギルド~


カランコロンカラン♪

「失礼しまー…あ、もう集まってる。」

「いやはや済まない。
私含めて勇み足だったな。(シンプソン)」

「仲間内に話したら非番だった者も集まってきてな。
ギルド内に居た他の冒険者に″やっぱり【勇者】軍が迫っているのか?″と心配させてしまったよ。(ヒューガ)」

「そうよー、だから依頼受けたら即行で出ていって頂戴…
皆気が気でなくて業務が滞っちゃってるんだから…(ギルマス)」

「あ、はい、ごめんなさい。」


前日シンプソンが″アンテイカーは僻地″と言っていた割に、冒険者ギルド内にはそれなりの数の冒険者が居た。

上級冒険者と思しきパーティが3組、中級冒険者と思しきパーティが6組、新人冒険者と思しきパーティが10組である。

冒険者ギルドは3階建の建物なのだが、1階の殆どを戦闘準備を終えた教会関係者が占領し、物々しい雰囲気を醸し出している為、2階・3階に居る冒険者達は何事かと眺めていた。


「えーっと、霊を″視える″様にする術を皆さんに叩き込みますが、再度伝えておきます。
霊が″視える″様になれば、相手の″状態″によっては精神的に病む事もありますので、安易に受けるのは勧めません。
また相手によっては気分を害して不要な争いを生む事だってあります。
その辺を良く考えてから参加して下さい。」

「「「「「「「「……。」」」」」」」」


ノアからの打診に無言で応える一同。
『それ位分かっている』と暗に表している様に思われた。

そんな中


スタッ!

「何だ何だ?霊が見える様に君が手解きしてくれるのか?
良いねぇ、この季節女の子と行く肝試しに打って付けじゃーん?」

「……。」


2階からとある新人冒険者が降りてきたかと思えば、ノアからの術を受けるつもりの様だ。


「霊が見えりゃ、″そういった場所″では俺はネタバレしてるも同然だし?
女の子を誘導して密『『『ズズンッ!』』』ひぃっ!?」

『良いよ、参加してみろ。
その代わり、″首が最低10回は斬り落とされる覚悟″をしておけよ?』


やましい願望の為に参加しようとした新人冒険者に向けて強烈な殺気が当てられる。
効果範囲に教会関係者数人と上級冒険者数組が入っており、その者達は一様に身動き1つ取れない程に身を強張らせたという。


「ご…ごめんなさい…」
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