ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

顔面に1発かます勢い

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~6時間後・バルディック・ロスト伯爵邸・私室~


バンッ!「失礼します!」(けたたましく扉が開く音。)

ブフッ!?(紅茶を吹き出すロスト伯。)

「な、何事ですか?突然…(ロスト)」

「も、申し訳ありません…カステロから緊急の報告が御座いまして…」

「カステロから…?もしや、ガネメギルドマスターから怒りの解任要求ですかな…?
現場からの意見を反映させてあげたいモノですが、最近色々とあった故、下手な手は打てないのですが…うーん…(ロスト)」


扉を叩き破らん勢いで入室してきた部下は、ロストに緊急の報告があってやって来た。

カステロと言う情報から、ガネメからのモノであると察したものの、最近ゴーマン男爵を投獄させたりと問題が立て続けに起これば、他の貴族からあらぬ誤解を受けてしまう事に繋がってしまう為、迂闊な行動が出来ないのだ。




「…あぁ済まない、緊急の報告だったな…
それで報告の内容を聞こう。
一体どうしたのだ…?(ロスト)」

「は、はい、ロスト伯が目に掛けております【鬼神】殿が、″厄介事を引き起こすから″というシルヴィオ領主代理の考えと独断により、現在カステロ内に立入禁止措置を講じている様で…」

「あンの馬鹿野郎遂にやりおったな!
急ぎ馬を出せ!ゾネスも呼んで直ぐにカステロへ向かうぞ!
即刻シルヴィオを領主代理の任を解いてやる!(ロスト)」

「え、えぇ!?
ですが、″今後は慎重に、機を見て別の者を領主代理とする″のでは…?」

「今回は話が別だ!
3分だ!3分で出発の準備を整えるのだ!良いな!(ロスト)」

「は、はい!」


と、ここで漸くノアの現状がバルディック・ロスト伯爵に伝わるのであった。





~カステロ正門付近~


トテトテ…

「おねーちゃん、早く早く。」

「待つ。シトラ、まだ走る。ダメ。(???)」

「だいじょーぶ、お医者様がくれた薬のお陰で元気だから。(シトラ)」


道の奥からカステロへと向かう姉妹らしき2人組の姿が。

1人は、金髪でまだあどけなさを残す快活そうな女の子で、その後ろを歩くのは腰まで伸びる黒髪を垂らし、女の子とは対称的に大人しい、と言うよりか特徴的な口調の成人女性であった。

女の子は快活そうにしているが、頬が少しこけ、同年代の子に比べて腕や足が細い。
まるで病に伏せていたが、最近になって回復した様な見た目であった。


ガッ。「あぅ!(シトラ)」

ガシッ。(転びそうになった妹(?)の襟を掴む。)

「やっぱり。
足腰、まだ、覚束無い。(???)」

「あ、はは…歩けるのが嬉しくってつい…(シトラ)」


カステロへと続く道は比較的整備されているとは言え小石等が転がっている為、シトラと言う女の子はそれに躓いてしまった様だ。

だがそれを予め予期していたかの様な身のこなしで接近した女性は、地面に付く前に襟首を掴んで引き起こしていた。

ただ余裕があるのなら、襟首を掴んで引き起こすのではなく、せめて抱き抱えてあげたら良いのに、と思ってしまった。





「おっと、誰か来たな、仕事だ仕事。(門兵2)」
「おぉ、本当だ。キノコの旦那、ご馳走になったわ。(門兵1)」

「いえいえ、またどうぞ。(クリストフ)」

「おっと、結構居座ってもうたな。(バド)」
「ぼちぼち儂らも街に戻るわ。宿取ってるでな。(ロイ)」
「何ぞあったらクリストフ経由で言っちょくれ、駆け付けたるわい。(ルド)」

「あぁ、うん…
僕も腹一杯になったからか、何か眠くなってきたから少し寝るとするよ。」

「ベッド(っぽいキノコ)出しましょうかノア殿?(クリストフ)」

「いや、流石にそれはいい。適当にその辺で寝るよ。」


姉妹らしき2人組道のが奥からやって来た事で、野外石焼きキノコパーティ会場と化していた正門脇の沿道の一同が動きを見せる。

門兵は門兵らしく門へと向かい、ドワーフ達は街へと戻る。
出禁を食らっていないクリストフだが、このままノアと一緒に外に居るらしい。

ノアは、本来この街でガッツリ休養を取るつもりであった為、ここ最近碌に寝ていなかった。
アンテイカーでもそこそこ限界間近だったが、腹が膨れたのも合間って睡魔が襲ってきた様であった。





「ニャーゴ、居る~?」

ガサガサ…にゃーご。

「日向ぼっこは満足したかい?」

にゃご。

「そうか。
ねぇ、ちょーっと僕も寝ようと思うから一緒に居て貰って良い?」

にゃーご。


ノアは寝に入る準備として、外で日向ぼっこしていたネコクラゲのニャーゴ(影魔法が使えるヴァンディットが街に居る為。)を呼んで抱き枕とする様であった。

と、そこに


トテトテ…

「あ、あの、そちらの冒険者さん…?
変わったネコ(?)をお供にしているのですね?(シトラ)」

「ん?あぁ、ニャーゴの事ですね。
えぇ、とても珍しいモンスターで、僕に懐いたのか飼う事にしたんですよ。」

「わぁああ…
半透明でぷるぷるで…何と可愛らしいのでしょう…
…あの…撫でてみても…?(シトラ)」

「えぇ良いですよ。
体が紫色でなければ撫でても大丈夫ですから。」


カステロの正門へと向かっていた姉妹の内、ノアとは2つか3つ程幼い女の子の方がニャーゴにつられてやって来た。

その後ろから


「お嬢、得体、知れない、モンスター。
不用心に触っては、駄…あ!?(???)」

「え?(シトラ)」
「え?」


髪色からして違うものの、女の子の姉らしき成人女性がやって来て注意を促す。

その女性は女の子を視界に捉えつつ目線をノアの方へと移すと、驚いた様に体を硬直させる。

だがノアは、この特徴的な口調に聞き馴染みがあった。


「あれ?この話し方何処かで…」

「話し方…?あ!
な、何の事でしょうかしら、わ、私と【鬼神】は初対面のハズなのよですよ…(???)」

「…ど、どうしたの″ミコ″…?
いつも以上に喋り方が変よ…?(シトラ)」

「″ミコ″…?
…もしかして、獣人国で会

「あ、あのあの!
私とお嬢は街に用があるので、ここらで然らば(?)!
ま、また何処かで会おうぞ。さぁお嬢っ!(???)」

グイッ。(シトラの手を引く???)

「あ、はい…」


慌てた様子の女性は、″お嬢″と呼ぶ女の子の襟首を持ち、膝を抱えて足早に門の方へと向かっていった。
地面に腰を下ろしていたノアは、ポカンとその後ろ姿を眺める事しか出来なかった。




「…あの特徴的な口調…
見た目は全然違うけど、獣人国で会った″傭兵の命(ミコト)さん″だよね…」

(『あんな喋り方他には居ないしな。
するってぇと、あの娘が″治療費″が必要だった相手、って事かな?』)

(だろうねぇ…)


腰まで伸びる黒髪の成人女性、それはゴーマン男爵によって集められた傭兵部隊の1人であった【暗器弓】の命(ミコト)であった。

獣人国で会った時は姿を隠していたものの、癖のある喋り方であった為、嫌でも覚えていた。

″お嬢″と女の子の事を呼んでいた事から色々察せられるが、ノアを見て慌てていた事からして事情があるのだろうとし、ノアはニャーゴを抱き抱えて眠りに付く事にした。
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