ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

束の間の休息

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~工房区画~


メェ~、メェ~。ショリショリ…

「そうです、そこに刃を這わせて…おー、上手ですよ。(毛刈り職人1)」
「スゴい…羊達が全く暴れないで大人しく刈られるなんて…いつもなら嫌がって逃げ出しちゃうのに…(毛刈り職人2)」

「ほんとぉ、居心地良さそうにしてるっちゃね…(ミダレ)」

メメ、メェメェ~!(ミリア担当羊の鳴き声。)

「むー…
私何度か挑戦してるのですけど、ずーっと暴れちゃって上手くいかないんですよ…(ミリア)」

「まぁ元々僕は動物に懐かれやすいってのもあるけど、刈る時に手付きに迷いが出ちゃったりすると、羊がそれを察知して落ち着かなくなっちゃうのは良くあるよ。」

「迷い…そうか…!(ミリア)」

ピタッ。(ミリアの手がピタリと止まる。)

「切っちゃったらゴメンね羊さん!(ミリア)」

メメ!?『ダッ!』メェ~!メェ~!

「あ、あれ!?迷わない様にしたのに逃げちゃいましたよノアさん!?(ミリア)」

「そりゃ逃げるよミリアちゃん。」


工房区画の一画でノアとミダレ、ミリアの3人が羊達の毛刈り体験に参加していた。

ミダレとミリアは毛刈り職人の人に取り押さえて貰った羊の毛を刈るのに対し、ノアは自らトコトコと歩いて目の前で寝そべる羊の毛を刈るのだった。

ミダレとミリアは何度か体験しているらしく、手付きも様にはなっているのだが、3手に1回は羊が身を捩ったり仰け反ったりする為、どうしても刈る際に躊躇してしまい、更に羊が暴れるというループに繋がってしまっていた。

ミリアはノアのアドバイスを受けて迷いを取り払い羊と向かい合うも、嫌な予感を感じた羊は脱兎の如く逃げていってしまった。





ショリ…ショリ…メェ~。

「その調子その調子。
あともう少しで全部刈り取れるよ。」

「むふー。暴れないとこんなに刈りやすいのですね。(ミリア)」


現在ミリアは、胡座をかいて座るノアの膝上に座り、大人しく横たわる羊の毛を刈っている。
ある意味最終手段を用いて羊の毛刈り体験を達成するのだった。


「出来たー!(ミリア)」テテーン!

メェ~。


刈り取った羊の毛を両手一杯に広げて喜ぶミリア。
その横では毛を刈り取られて二回り位小さくなった羊が気持ち良さそうに鳴いていた。





「さ、次はミダレさんだ。」

「え?(ミダレ)」

  
ちなみにここ最近、ミダレとの関係性に変化が出来た。


「あ、あっちは大丈夫っちゃよ。
一応2回位成功させたっちゃから。(2回とも職人さんに仕上げて貰ったミダレ)」


トラウマ解消の一件以降、ミダレの使い魔であるイスクリードと夢への介入について話をする一幕があった。


「良いから良いから。」


その流れで《夢に入ってみる?》と誘われ、二つ返事で了承したのだが、イスクリードの独断でミダレの夢の中に入る事になった。(ノアは入ってから気付いた。)
 

「で、でもぉ…(ミダレ)」


夢というのは、当人の思想や強い思い等が色濃く反映されるものなので、ミダレの夢の中には頻繁にノアが出て来る。出て来るのだが


ガシッ。(ミダレの腕を掴む。)

「来いって。」グイッ。

「はひ…(ミダレ)」


″少し口調が荒く、強引な性格のノア″がやたらと出てくるのである。

当初ノアはそんな自身の姿が夢の中に出て来ている事を、自身同様にトラウマになっているのではと思っていたが、夢の中のミダレの反応は真逆なモノであった。

具体的に言えば夢の中のノアが口調荒めに、強引に接すれば、妙に顔を赤らめつつ従順になり、多幸感満載の笑みを浮かべて喜んでいた。

ノア自身夢の中のノアが行った様な言動を取った覚えが無い訳では無く、寧ろ素の時に自然と出て来てしまうので是正しようとしていたのだが、イスクリード曰く《直さなくて良い、寧ろ今後は前面に出してあげて、″御褒美″だから。》との事らしい。

ノアとしては素の行動を直す手間が省けた為嬉しさ半分、こんなのが″御褒美″になるのだろうかと疑い半分な気持ちであった。





ショリ…ショリ…メェ~。

「そうそう、ここで手首を返すんだ。」

「こ、こうだよね…?(ミダレ)」

「うん、そうだよ。
少し教えただけで見違える様に上手くなったね。」

「え、えへへ、そ『ガシッ!』

「油断しちゃダメだよ?
刃物持ってるんだから最後まで集中しないと。」

「あ、ご、ごめんっちゃ…(ミダレ)」

「これはみっちり仕込む必要があるねぇ…(耳元ネットリ)」

「っ…お、お願い…します…(ミダレ)」ゾクリ…


(あー…青春だなー…(毛刈り職人1))
(私もあんな青春送りたかったなぁ…(毛刈り職人2))

(《契約者様、あれを素でやってるんだよなぁ…》)


何はともあれ良好な関係を築きつつ羊の毛刈り体験は続くのであった。




「…それでミコトさん?
一体いつまでそこにいるつもりですか?」

「「「「え?」」」」

「あ、終わった…?(ミコト)」

「「「「ぎゃーっ!?」」」」


ふとノアが独り言を呟いたかと思うと、一行の背後にしれっとシトラの護衛であるミコトの姿があった。

ノア以外の一行は、ミコトが居ると思っていなかったのか、一様に悲鳴を上げていた。


「い、いいい、いつからそこに…?(ミダレ)」

「『そうです、そこに刃を這わせて』から。(ミコト)」

「ど、ど頭(3行目)からじゃないですか!
声掛けて下さいよぉっ!(ミリア)」バクバク…

「ごめん、プレイ中、だったから…(ミコト)」

「プレイ言うな。」





「はい、これ。(ミコト)」

「…手紙?
何処から…?そして内容は…?」

「何処かの貴族から、ギルド経由。
中見てない。(ミコト)」

「そりゃそうか…どれどれ…」


ミコトがしれっと立っていたのには理由があり、冒険者ギルドからノア宛の手紙が来たとの事らしい。

ノアはミコトから手紙を受け取ると、封を切って内容を確認するのだった。





「え?秋のハズじゃ…時季が…ふむふむ…
兵の数は…はあはあ…信頼の置ける…うーん…」

「ど、どうだったのですかノアさん…?(ミリア)」
「貴族さん?からの手紙だったみたいっちゃけど…?(ミダレ)」

「あぁ、うん…
西の辺境にヴァリエンテ領って所があるでしょ?そこの領主さんから直々に要請があったんだ。」

「あ、ヴァリエンテ・ルルイエ伯爵ですね。(ミリア)」
「要請?…って何の…?(ミダレ)」

「まぁ一旦皆と合流して話をするとしよう。
色々と準備が必要になるかもしれないからね。」


手紙を読み終えたノアは、内容は一先ず伏せた上で皆の所に戻る事に。

高級宿に戻ったノア達は、【勇者】の故郷イグレージャ・オシデンタルが消滅した事を知るのであった。    
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