ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

動き出す真実

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~旧イグレージャ・オシデンタル・簡易救護所~


「…ぅ…こ、ここは…
っ″ぅっ!?痛てて…!(シンハ)」

「シンハ…お早う…起きたのね…。
貴方は安静にしてた方が良いわよ、私を庇って肋骨折れてるのだから…(ヴェーダ)」

「…ヴェーダ…
そうか、君も無事だったか…
それよりここは…?確か俺達は市街地の地下に潜入して…それで…(シンハ)」

「起きた様だな、双方重症だが無事で何よりだ。(ベルドラッド)」

「!(シンハ)」


上半身に包帯をぐるぐる巻きにされ、腕には添え木を施されていた男性シンハが目を覚ます。

同じくこの地に来ていた女性ヴェーダは、シンハに比べて軽傷ではあったが、疲れた表情で隣のベッドに腰掛けていた。

シンハの表情を確認したヴェーダは安堵の溜め息を吐きつつ安静にする様に促す。

そんな2人を待っていたかの様に、簡易救護所の入口にベルドラッドと言う王都から派遣された筋骨隆々な男性が立っていた。


「安心してシンハ、彼等は王都から派遣されてきた隊員のリーダーよ。 
先日イグレージャ・オシデンタルが消滅したから生存者の捜索と、【魔王】の監視に来たらしいわ。(ヴェーダ)」

「…え?消滅…?【魔王】の監視…?
一体何を言っているんだ…?(シンハ)」

「まぁ君達は地下に居たから知らないのは無理も無いだろう。
歩けるのなら一度外に出て現況を確かめてみると良い。(ベルドラッド)」


イグレージャ・オシデンタルの消滅、【魔王】の監視。
起き抜けのボーッとした頭では、シンハの思考は付いてこれず、ベルドラッドに促されるままヴェーダと共に簡易救護所の外に出て現況を確認してみる事にした。





『『『ヒュゥウウウウ…』』』(砂埃舞う風。)
カチカチカチカチ…


「…え?ここは何処だ…?
俺達は近くの村にでも退避させられたのか…?(シンハ)」

「そう思いたい気持ちも分かるが、ここはイグレージャ・オシデンタル。″旧″が頭に付くがな。(ベルドラッド)」

「私も最初は混乱したわ。
道や建物が壊れたのとは訳が違う、″全て″壊れたのだから。
地形は愚か、国としての機能も何もかもね…(ヴェーダ)」


目の前に広がるは荒涼とした大地、風の音と僅かに聞こえるクラップの様な音。

この街を象徴していたと言って良い、豪奢な造りの【勇者】アークの父ゲッシュバルドの大屋敷と【聖女】ミミシラの生家でもある大聖堂は何処にあったかすらも分からない程地形までもが変わっていた。





カチカチカチカチ…

「…説明された今でも頭が理解しようとしな…
ん…?耳がおかしくなったのかな…
さっきから変な音が聞こえて…
…え?壁…山…え?…これは何だ…?(シンハ)」


暫し旧イグレージャ・オシデンタルの瓦礫の山を呆然と眺めていたシンハが耳に入る謎の音に違和感を感じた。

すると視界の端に映る″違和感の正体″に気付き、上空を見上げるのだった。


『『『カチカチカチカチ…』』』(瓦礫の山に立つ200メル級の巨大な巣と、その周りに纏わり付く兵隊蟻。)


「……っ…(シンハ)」

「…変な気を起こすなよ?
俺達は″【魔王】に介入しない事″を条件にこれ程近距離での監視を許され、生存者の捜索を続けている。
例え気を狂わせて歯向かおうものなら、自分達の国が″ここ″と同様…いや、それ以上の被害を被る事になる。(ベルドラッド)」

「…イグレージャ・オシデンタルは【魔王】相手に【勇者】軍を立ち上げ、宣戦布告。
【勇者】軍全てを屠り、この旧イグレージャ・オシデンタルは報復を受けて敗戦国となり【魔王】の占領下にある…
現況はそんな所よ…(ヴェーダ)」


山の様に聳え立つ巨大な巣と、明らかに自分の知らないモンスターが無数に存在している状況に、シンハ所かベルドラッド等も呆然と巣を見上げていた。


「…ここから話を切り替えて、と言う方が無理あるだろうが、君達には聞きたい事がある。
救護所に場所を移して話をして良いだろうか?(ベルドラッド)」

チラッ…(ヴェーダ)

…コク。(シンハ)


ある意味本題と言うべきか、2人についての聴取に入るベルドラッド。
ヴェーダはシンハに目配せし、正直に話すかどうかを窺っていた。

シンハは少し間を置いた後頷く。
彼等は2人共【諜報】である為、情報を依頼主以外に話す事は死活問題と言える。

が、そうも言ってられない状況である為シンハの判断で了承したのだと思われた。





~再び簡易救護所~


「ノア君からイグレージャ・オシデンタルの裏を探る様に頼まれた?(ベルドラッド)」

「あぁ。アンタなら、先日【勇者】軍第5~10部隊が南部の村に侵攻してきて、その後壊滅したのを知っているだろう?(シンハ)」

「あぁ、情報では正体不明の者達が獅子奮迅の活躍で次々に撃破していったとか…
…ちょっと待て、まさか…(ベルドラッド)」

「そのまさかよ。
【勇者】軍第5~10部隊を撃破したのは変装した【鬼神】とお仲間さん達。
詳しい事は省略するけど、その際第9・10部隊の【猛獣使い(ビーストマスター)】と【竜操騎士】に関して違和感を覚えたらしいの。(ヴェーダ)」

「違和感?(ベルドラッド)」

「彼等だけ他の【勇者】軍と違って村々に略奪行為を行ってなかったの。(ヴェーダ)」

「それに罪を犯したとイグレージャ・オシデンタル側から通告されてたのだが、″重要施設の破壊″とだけ言われ、詳しい事は分からず終い。
【鬼神】は何かしら情報を知ってたみたいで、真相を確かめる為に探りを入れに来た訳だ。(シンハ)」

「…そしたら、【魔王】の報復に遭遇したと言う訳か…
それで、″何″を見たんだ?(ベルドラッド)」

「″何″かは正直分からない。
施設の中は各部屋が厳重に″封印措置″を施され、侵入するだけで一苦労だった。
街中に激震が走る瞬間、厳重に封印されていた部屋の奥に″何かの気配″を感じたが、自分の記憶はそこで途切れている。(シンハ)」

「…私も。
″何か″の姿を見た気がするのだけど、記憶が曖昧で…
確かめようにも、何もかも吹き飛んでしまったし、調べようも無いわ…(ヴェーダ)」

「ふむ、そうか…(ベルドラッド)」


2人の話を聞いたベルドラッドは顎に手を当てて少し思案。

その横で話を終えたヴェーダはと言うと


(…そう、記憶が曖昧で″何か″の姿はよく覚えていない…
あんな…″人の気配を持った全く別物の存在の姿″は幻に違い無い…あれは…″異質″過ぎる…(ヴェーダ))





~旧イグレージャ・オシデンタル地下400メル~ 


フーッ…フーッ…『『グヂュグヂュッ!』』

ッハァ…テキ…エサ…クヒヒ…
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