ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

作戦開始

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~翌昼・街の噴水広場~


「…と言う事で、私の身体的理由と人員を確保出来なかった事によって此度の大氾濫に於いて先程説明した″強行策″に出る事となった訳だ。
反論は勿論あるだろうが、限られた時間の中で取れる最良の手段だと思っている。(ルルイエ)」

「「「「「「………(集まった市民達)」」」」」」


明くる日、ヴァリエンテ領の噴水広場には街で暮らす市民や様々な職に携わる職人約700人程が
集まっていた。

理由はこの街の領主であるヴァリエンテ・ルルイエから重大な発表があるとの事であった。

噴水広場に着くと、兵士・息子のカルル等と共に、杖を突いたルルイエ、妻のヴァリエンテ・ミミルナ、娘のヴァリエンテ・ミミカが神妙な面持ちで待っていた。

そこから少し離れた位置には、同じく神妙な面持ちで佇むレドリックとアミスティア、ノアの姿があり、これだけで和やかな話では無いと物語っていた。

少ししてルルイエが重い口を開き、ヴァリエンテ領の現状と、予想される大氾濫の規模、カルルからはルルイエの体の状態について説明が為された。

その際、ルルイエが予てより構想していた大氾濫発生地とヴァリエンテ領との間に建造予定の″前哨基地又は街″の話も同時に行い、志願兵の募集はそれも兼ねていた事が話された。

だが志願兵が全く集まらなかった為、″強行策″を執る事が話された。

その内容を聞いた街の者達は、″絶句″。
逆に言えばそうしなければならない程今回の大氾濫は厳しいモノであるという事であった。

話の途中で、街の者達からは『旧い仲である王都や周辺諸国からの救援』等が提案されたが、王都は【魔王】関連、周辺諸国は【勇者】軍から受けた被害の為それ所では無いと、街の者達も″分かりきっていた″ものの、提案せざるを得ない程ルルイエの話は″強行策″であったのだ。

一部の者達から『ルルイエ様を唆したな』と、批判の矛先がノア達に向けられる事があったが、ノア達は微動だにせずに佇んでいた。

その後こうなる事が分かっていたかの様にルルイエがノア達の正体を明かす。



クラン『極大射程』【神出弓士】レドリック
クラン『死屍累々』【殲滅剣士】アミスティア
クラン『きじん』【ソロ】で【鬼神】のノア



レドリックとアミスティアは実際に10年程前の氾濫の際には参加しており、正体を明かした後に気付く者が多く居り、何と言っても大きかったのは【鬼神】のノアであった。

ヴァリエンテ領でも【鬼神】の話は轟いており、街の者達は『フリアダビアの救世主』や『【勇者】軍500人潰し』等と口々に囁き、先程まで3人に当てられた批判の声は一気に鎮静化していった。

が、それでも批判を上げてくる者が居た。
『その為に俺達の血税を使うのか!』や『その者達が迷惑を掛けたらどう落とし前を付けるのだ!』と言う声には、″志願兵の代わりとなる者達(現状総額6億ガル)″の費用はノアが出し、″迷惑を掛けた者″についてはレドリックとアミスティア自らが″始末″してやると″淡々と″告げ、今度こそ批判の声は上がらなくなっていた。


「批判、反論各々持ち合わせて居るだろう、ここまでの話を聞いても尚意にそぐわず、納得のいかない者達も居るだろう。
だが彼等は劣勢必至が予想され、数々の者達が辞退して行く中で私の願いを叶える為に賛同して貰った者達だ。
彼等を愚弄する事は許さぬ、即刻街を出ていって貰って構わん。(ルルイエ)」

「「「「「「……っ!」」」」」」


語気強めに言い放つルルイエに、集まった者達は閉口し、項垂れる様に顔を伏せる。
だが次第に、各所からルルイエの話に頷き、飲み込んでいく者が増え、顔を上げて賛同の意を示す。

自分達が見ようとしていなかっただけで自国も周りと同様逼迫した状況である事に変わり無く、生温い事を言ってられないと感じたのだろう。

こうして一部騒動になり掛けた″強行策″の報告は、何とか街の者達全員の了承を得る事が出来たのであった。

この事により話は大きく動き出す事になる。
その起点となるのは、ジョー達によるものであった。





~6時間後・獣人国の冒険者ギルドにて~


カランコロンカラン♪(ギルドの扉が開く音。)

「いらっしゃ…
あら、ジョーさんではありませんか、一体どうなされましたか?(受付嬢)」


場面は変わってここは獣人国の冒険者ギルド。
日は既に落ちており、ギルド内に冒険者は疎らであった。

そんな冒険者ギルドにジョーが来訪。
開口一番に


「いやー、今日はムシムシするねぇ。
『イワシの塩漬けと酸味の強いエールで一杯やりたい』よ。
〔急ぎの用事で来た。対応願おう。〕(ジョー)」

「あ、『分かりますー!
私としては冒険者さんの自慢話肴に500ガルワイン片手に一杯やりたい所です。
でもそんな所ギルドに見られる訳にはいかないのですけど。』
〔了解しました。特定の冒険者さんへの極秘依頼、大金が絡む話、国家関係のどれでしょうか?〕(受付嬢)」

「『500ガルワインは手頃だが趣ノアる深い味わい故私も愛飲しているよ。
人気なのか手に入り難くて別の酒で代用しているがね。
そういえばアルフの酒場は今日はやってたかな?
6ダース程ある酒の依頼をしていたので良ければ寄ろうと思っている』のだよ。
〔大金が絡む話で、ノア君の代理でやって来た。彼の口座からアルフレッド・レイドに6億を流してやってくれ。〕(ジョー)」

「あら、『6ダースも…
それは大変で御座いますね、確認を取ってきましょう。』
〔6億ですね、畏まりました。〕(受付嬢)」

「『急ぎでね。』〔早馬を飛ばしてくれ。〕(ジョー)」


会話の中にそこはかとなく情報を混ぜてギルドの受付嬢と意味深な話をするジョー。

するとそこに


「やぁジョーさん、この間オススメしてくれた『濁り酒、中々良かったよ。何かお礼させて貰えないか?』
〔言葉を濁しての会話なんてどうしたんだい?何か手伝える事はあるか?〕(男性職員ラスク)」

「やぁラスク、嬉しい事を言ってくれるね、それじゃあ『最近エイヒレなる物が出回っているだろう?あれを入手したいのだが頼めるか?
夜風に当たりながら一杯やってみたいと思っていてね。』
〔海洋種に連絡を取り、″地上でも活動可能″な者が居ないか聞いてくれないか?〕(ジョー)」

「『善処するよ。』〔任せてくれ。〕(男性職員ラスク)」


たまたま近くに居た男性職員に話し掛けられたジョーは、受付嬢の時と同様意味深な会話を繰り広げていた。


「さて、彼女達の方は順調かな。(ジョー)」
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